2009年10月26日(月)「しんぶん赤旗」
農水技術会議 廃止の危機
「研究の軽視・後退招く」
農林水産業や食品産業などの試験・研究にかかわる特別機関として設置され、53年の歴史をもつ「農林水産技術会議」(学識経験者ら7人で構成)が廃止されようとしています。前政権の農水改編計画に沿ったもの。これに対し、農林水産省の関連研究機関の関係者から「行政追随になり、長期的な視野での試験・研究に支障が出る」として、新政権に再検討を求める声が上がっています。
“司令塔”担う
農林水産技術会議は、農水省設置法に定められた特別機関の一つ。資金力に乏しい一般農家ではできない試験・研究を国が進め、普及することが目的です。国の試験・研究の基本的な計画の企画・立案にあたるとともに、つくば研究学園都市(茨城県つくば市)にある農業・食品産業技術総合研究機構、農業生物資源研究所、農業環境技術研究所、国際農林水産業研究センターの4研究機関のほか都道府県の試験・研究活動への助成など、公的な農林水産研究活動の司令塔ともいうべき役割を担ってきました。
ところが、農水省は10月にまとめた来年度の組織・定員要求で、前政権の計画どおり、「農林水産技術会議は廃止。大臣官房に技術・環境政策部(仮称)を戦略的な司令塔として設置」の方針を盛り込みました。
廃止には農水省設置法の改正が必要です。
強行されれば、大臣官房と同列にあった同会議が官房内の一部局に“格下げ”となり、これまで果たしてきた役割が大幅に後退する可能性があります。
不安の声次々
日本共産党国会議員団が22日、つくば研究学園都市にある四つの研究機関の関係者と懇談したなかでも、不安の声が相次ぎました。
農業環境技術研究所の佐藤洋平理事長は「長いスパン(見通し)での研究ができなくなるのではと危ぐしている。行政ニーズ(要請)で予算が配分され、研究ニーズが後回しになることが心配だ」と発言しました。
国際農林水産業研究センターの飯山賢二理事長は「研究の軽視、後退をまねくのではないかと心配している。海外支援や技術提供が失われていくのではないか。廃止は大きな問題を抱えている」と批判しました。
農業・食品産業技術総合研究機構の堀江武理事長は「農林水産技術会議は、アカデミー(学際的)のような組織で、研究の基本方向を提示し、重要な機能を担っている。長期的スパンに基づく研究や研究者の自らの発意による研究を保障することが、なによりも大切だ」と述べました。
農業生物資源研究所の石毛光雄理事長は「生命科学でも、世界的競争が激しい。研究を活発にするために予算の確保が何よりも必要であり、農林水産技術会議で予算を確保してもらっていた。そういった力を確保してほしい」と、同省官房と同格の機関としての存続の必要性を強く訴えました。
懇談した党国会議員団農水部会長の紙智子参院議員は「廃止は重大な問題をはらんでおり、今後ともこの問題にとりくんでいきたい」と話しています。
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