2009年10月21日(水)「しんぶん赤旗」
貧困ビジネス宿泊所撤退へ
建設計画に住民から批判
東京・板橋
東京都板橋区で、住居のない人の生活保護費から高額の入所費用を徴収する「無料低額宿泊所」の建設を計画していた特定非営利活動法人(NPO法人)やすらぎの里(中野区)が、住民の「貧困ビジネス」を批判する声などによって、建設計画からの撤退を表明していることが、20日までに分かりました。
やすらぎの里の宿泊所計画では、7平方メートルの部屋の入所費用が、月に家賃5万3700円(生活保護の住宅扶助上限額)、食費4万5000円もかかり、単身者世帯生活保護費約13万円の大半が徴収されます。(本紙10月11日付既報)
同法人が北区で運営する宿泊所を現地調査した住民からは、「ベニヤ板で仕切った3畳の部屋でこの費用は暴利だ」「人が人として住める施設ではない」と声が上がっていました。
16日夜に行われた住民説明会には、70人の住民が参加し、区からも福祉部管理課長と福祉事務所長が出席。「保護費をむしりとる貧困ビジネスは来るな」などの意見が相次ぎ、やすらぎの里側も「(住民協定を結べなければ開設できないという)区の要綱を守る」と答えていました。
板橋区福祉部管理課の担当者によると、19日、やすらぎの里側から電話で撤退の意向が示されたといいます。地域の住民で結成した「宿泊所」建築反対連絡会の会員が、20日、やすらぎの里に問い合わせたところ、「撤退する。21日にも、区役所へ書類で報告する。24日の次回説明会には出席しない」という回答でした。
この会員は、「貧困ビジネスを批判する世論が高まり、住民運動が急速に広がったことが業者を撤退に追い込んだと思います。悪質業者では入所者の人権は守られない。困っている人には、国と自治体が自立できるようサポートすべきです」と話しています。
同連絡会世話人代表は「日本に、ヨーロッパのような安定して働けるよう支援するシステムがないことが、一番の問題ではないでしょうか。法の不備を突いて、福祉をもうけの対象とするような事態がまかり通ることのないよう、公的支援で、社会的弱者を守ってほしい」と訴えました。
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