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2009年10月20日(火)「しんぶん赤旗」

主張

後期高齢者医療

老人差別の制度直ちに廃止を


 厚生労働省は来年度予算の概算要求で、75歳以上を対象にした後期高齢者医療制度について、「保険料の上昇を抑制する措置等」を金額は明示しない「事項要求」として盛り込んだだけで、廃止を掲げませんでした。来年度はさしあたり軽減措置を続け、廃止までに数年かける方針だといわれます。

 制度を廃止しなければ差別がなくならないだけでなく、2年ごとに改定される保険料など、問題点も拡大します。差別をなくそうと考えるなら、直ちに廃止するしかありません。

世界に例のない差別制度

 後期高齢者医療制度は、75歳以上の高齢者を、国民健康保険や企業などで働いている人の健康保険から切り離し、別建ての保険に移す制度です。保険料は年金から天引きされる人が多く、医療の給付には制限があります。

 年齢だけで別建てにして差別を強いる医療制度は世界に例がなく、昨年4月の導入以来、高齢者差別は許せないと、国民の憤激を買ってきました。先の総選挙では日本共産党だけでなく、民主党なども廃止を掲げました。

 国民の批判に押されて、自公政権も、保険料や医療費負担の軽減措置をとってきました。しかし、制度が続く限り、差別はなくなりません。国民の批判を受け止めるなら、きっぱり廃止するのが当然です。政府は直ちに廃止を決断すべきです。

 制度が続けば、来年4月以降も75歳の誕生日を迎えたとたん、それまでの保険からは切り離されて差別的な医療制度に移され、保険料の払い方も医療費の給付も変わります。誕生日のあとも誕生日の前と同じように生活しているのに、自分だけが違う保険に移されることに、納得できる人はまずいないでしょう。

 とりわけ深刻なのは医療の給付が制限されることです。たとえば、新たに設けた「後期高齢者診療料」は外来の場合月6千円以上出さない仕組みです。これでは安心して病院にもかかれなくなります。

 しかも保険料は2年ごとに高齢者の人口や医療費を踏まえて見直すことになっており、来年4月には多くの地方で負担が増えると見込まれています。多少負担を軽減するだけで、制度自体は続けるなどというのは、絶対に許されることではありません。

 厚生労働省は、直ちに廃止すれば混乱するとか、後期高齢者医療制度導入前の制度に戻せば一部の負担が増えるなどといいます。しかしわずか2年前まで実施され、国民に問題のなかった制度に戻すのに、特別の困難はありません。一部の負担が増えるというならそこへ援助すればいいだけです。なにより年齢による差別は許さないという原点をつらぬくことです。

医療費の無料化を急げ

 だいたい、日本のように医療費に2割も3割もの自己負担があるという国は世界でもまれです。ヨーロッパでは、外来も入院も、医療費は無料が当たり前です。

 高齢者は、長い期間家族や社会のために苦労を重ねてきた人たちです。未来を担う子どもたちとともに、高齢者の医療費はまず無料にすることが、社会として当然ではないでしょうか。

 後期高齢者医療制度の存続を許さずきっぱり廃止し、医療費無料化に向かうことこそ重要です。



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