2009年10月19日(月)「しんぶん赤旗」
主張
葛飾ビラ弾圧事件
最高裁は口頭弁論を開け
東京・葛飾でのビラ配布弾圧事件の上告審で、最高裁は19日と指定した判決言い渡し期日を弁護団の要求を受けて取り消す措置をとりました。
弁護団が6通にのぼる上告趣意補充書を提出したその日に判決日を決定したのは乱暴きわまるやり方で、期日を取り消したのは当然のことです。最高裁はこのさいさらに一歩すすめ、憲法の番人として言論・表現の自由と民主主義を擁護する重大な職責に立って、事件の審理をつくすことがきびしく求められています。
配布は民主社会で当然
事件は、僧侶の荒川庸生さんが2004年12月、日本共産党の「葛飾区議団だより」、区民アンケートなどをマンションのドアポストに配布して「住居侵入罪」で逮捕され、23日間も拘禁されたものです。
このビラ配布活動は、どこから見ても、民主主義社会では当然に認められる行為です。マンションの廊下や階段などの共用部分は住居ではなく、新聞、郵便や営業用のチラシの配達などで自由に立ち入ることができる場所です。
東京地裁は06年8月、立ち入り目的は正当であり、社会通念からみても犯罪とはいえないと、無罪を言い渡しました。ところが、東京高裁は07年12月、表現の自由を無視し、有罪としました。
誰にでも気軽にできるビラ配布活動は、国民や政党にとってもっとも基本的な表現手段であり、民主政治の基礎となるものです。多くの人が生活するマンションでも、多様な意見や生活情報を届ける手段として、ビラの配布は尊重されなければなりません。
ビラ配布が許されず、国民の表現活動を抑圧する状態が司法によっても正されなければ、憲法が保障する言論・表現の自由、民主主義は重大な危機におちいります。
国連自由権規約委員会は昨年10月、日本で政治活動家と国家公務員が、私人の郵便受けに政府に批判的なビラを配布して逮捕、起訴されたことに懸念を表明しました。「自由権規約で保護されている政治活動を警察、検察官、裁判所が過度に制約しないよう、表現の自由と参政権に対するいかなる非合理な法律上の制約をも廃止すべき」だと政府に勧告しています。日本がいかに世界から立ち遅れているかは明白です。
広範な市民などが参加する「ビラ配布の自由を守る会」と国民救援会は、最高裁に「言論表現の自由、民主主義を守れ」「事件を大法廷に回し、口頭弁論を開け」と、署名要請行動を強めています。最高裁は審理を尽くし、無罪を求める市民の手紙や署名、学者・文化人・宗教者の署名にあらわれた国民の声を聞くべきです。
12・4集会の成功を
葛飾事件とともに、ビラ配布の自由や政治活動の自由が争われている国公法・堀越事件は、東京高裁での逆転無罪をめざす裁判が年内にも結審となる大きなヤマ場を迎えています。世田谷国公法事件も控訴審の動向が注目されます。
「言論表現の自由を求める集会」が12月4日、東京・日比谷公会堂で同実行委員会の主催で開かれることになりました。集会は3裁判に勝利し、言論・表現の自由、民主主義を守る世論と運動を発展させるうえで重要な意義をもちます。日本共産党もこの集会を成功させるため、力をつくしていきます。