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2009年10月18日(日)「しんぶん赤旗」

主張

泡瀬干潟埋め立て

差し止め判決に従い中止せよ


 沖縄市の沖に広がる泡瀬干潟の埋め立て事業への公金の支出について、福岡高裁那覇支部(河邉義典裁判長)が、一審の那覇地裁に続いて、「違法」と断じ、差し止めを命じる判決を出しました。

 見通しのないムダな公共事業をやめよという国民の声と運動の成果です。判決がでたのに、なお埋め立て事業を続けるようなことは許されません。国と県、市は埋め立て事業を中止し、泡瀬干潟の原状回復にとりくむべきです。

「経済的合理性がない」

 太平洋側に面した沖縄市の沖には290ヘクタールもの広大な泡瀬干潟が広がっています。海藻草類、海底生物やトカゲハゼ類などの生息・生育の場であり、干潮時にはシギ・チドリ類、サギ類などが飛来し、良好な採餌、休息する貴重な場所ともなっています。

 2000年に承認された泡瀬干潟の埋め立て計画は、干潟のうち約187ヘクタールを埋め立てて人工島をつくり、大型ホテルや観光商業施設などが立ち並ぶ一大リゾート地帯をつくるというものです。周囲を護岸で囲み、土砂投入を始めた69ヘクタールを含む第1区域約96ヘクタールの埋め立て工事を12年度までに完了させる計画です。

 埋め立て事業は、北東に隣接する中城湾港新港地区を整備する際に生じる浚渫(しゅんせつ)土砂を捨てる狙いから生まれました。人工島ができても企業進出の見通しのない、ムダな公共事業であることは当初から指摘されていました。

 高裁判決は、9年間で経済的事情が大きく変化しているのに工事が「漫然」と続けられていると批判したうえで、人工島をつくったあとの土地利用計画について「経済的合理性があると認めることはできない」と断じています。

 沖縄市は土地利用計画の検証報告書を提出し、土地利用計画はいまでも「妥当」だとのべています。しかし判決は、計画の中核である観光商業施設用地、海洋研究施設用地、栽培漁業施設用地に「具体的な進出計画等が明らかになっておらず」、先々になっても土地利用計画には妥当性があるとは「いい難い」と指摘します。

 重要なのは判決が、「裏づけとなる法律上の根拠が得られる見込みが立っていないのに推進しようとしている」とのべ、公金支出が地方自治法と地方財政法に「違反する違法なもの」と断定したことです。地方自治法2条14項は「最少の経費で最大の効果をあげる」ことを求め、地方財政法4条1項は、その限度をこえて「支出してはならない」と義務付けています。見通しのない埋め立てのための公的支出がこうした法律に反していることは明らかです。

国の責任で干潟再生を

 人間が生きていくためには自然環境との共生が不可欠です。観光を目玉とする沖縄にとっても、泡瀬干潟を埋め立て、貴重な自然環境を破壊することは、将来の発展の条件をみずからほりくずすことにしかなりません。泡瀬干潟の埋め立て事業をやめ、元通りに再生することが不可欠です。

 2004年に制定された自然再生推進法は「自然と共生する社会の実現」を目的にしています。過去に損なわれた自然環境を取り戻すため国などに自然環境の再生、創出を促しています。この法律にもとづいて、国の責任で泡瀬干潟を再生すべきです。


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