2009年10月17日(土)「しんぶん赤旗」
英2大政党 違いどこに
アフガン増派、公務員昇給凍結で一致
両党、相次ぎ大会
英政権党の労働党大会と野党第1党の保守党大会が10月上旬に相次いで開催されました。両党とも、来年6月までに実施される総選挙を意識した政策を打ち出しました。しかし両党の政策の違いを明確にすることはできませんでした。(ロンドン=小玉純一)
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世論調査の政党支持率は最近2年間、保守党が労働党を常に上回り、最近では十数ポイント引き離しています。保守党が勝利すれば1998年以来の政権奪取となります。
巻き返しをはかる労働党は、ブラウン首相の大会基調演説で、2歳児無料保育やがん検診の拡充など医療・福祉の充実策を並べました。
これに対し保守党は「英国の経済・社会・政治が壊れたのは大きすぎる政府が原因だ」(キャメロン党首)と指摘。経済危機対策で膨らんだ財政赤字解消のための「痛みを伴う」支出削減に国民の理解を求め、年金受給年齢引き上げの早期実施などを提起しました。
日曜紙オブザーバーは、「労働党の大きな政府か」「保守党の小さな政府か」「一見したところ、権力をめぐる古典的な左右のたたかいだ」と論評しました。同論評は同時に、「よく見れば事態は複雑だ」と、「小さな政府」を主張する保守党が、全額国庫負担の国民保健サービス(NHS)などを支持している矛盾を指摘しました。
保守党は今回、労働党政権が10年前に導入した最低賃金制に支持を表明。また、労働党政権が来年4月から実施する富裕層の税率引き上げ(1万5千ポンド以上の所得者は45%から50%へ)を政権奪取後も維持する方針も明らかにしました。
他方、労働党政権が大会後に発表、労働組合の反発を招いた公務員75万人の昇給凍結・抑制方針に対し、保守党はこれを上回る400万人の昇給凍結を打ち出しました。
労働党の支持率低迷の大きな要因は、この間の貧富の格差拡大だといわれます。労働党政権は労働福祉施策を進めた一方で、低所得者の軽減税率の廃止や相続税の引き下げによる富裕層優遇策も実施。保守党のキャメロン党首の「誰が貧しい人をより貧しくし、誰が失業を増やし、誰が格差を拡大したのか」との大会演説に大きな歓声があがったのには、労働党の政策への国民の反発があります。しかし両大会で格差是正の具体的政策は競われたようには見えませんでした。
外交問題では、14日にアフガニスタン増派を打ち出した労働党政権に対し、保守党も大会で増派を求めており、政策に大きな争点はありません。