2009年10月17日(土)「しんぶん赤旗」
主張
概算要求
財界・軍事優先からの脱却を
来年度予算の各省庁の概算要求(財務省に提出する予算要求)が16日、出そろいました。
鳩山内閣は自公政権が7月に決めた概算要求の基本方針を廃止し、予算編成を概算要求からやり直すことにしました。通常なら概算要求の提出期限は8月末です。予算編成は1カ月半遅れの“突貫工事”となっています。
予算の全体像は年末に
概算要求の総額は過去最大規模で、藤井裕久財務相は年末までに予算の絞り込みを進めると表明しています。大幅な歳入不足も予測され、税制を含む鳩山内閣の初めての予算編成の全体像は、財務省原案を発表する年末まで、はっきりしない可能性があります。
概算要求の段階では、今年度の当初予算と比べて、厚生労働省や文部科学省などの関連予算の増額と、公共事業関連の予算の減額が目立っています。
厚労省は「子ども手当」の創設や年金記録問題への対応、失業給付の国庫負担引き上げなどで大幅な増額を求めました。文科省は高校授業料の実質無償化の予算、農水省は米作の「戸別所得補償」の経費を計上しています。他方で、公共事業関係費は国交省が14%減、農水省が15%減としています。ここからは、「コンクリートから人へ、資源配分を変えていく」(仙谷由人行政刷新相)という姿勢をうかがうことができます。
これらの予算要求のなかにも、国民の大きな不安があることは見過ごせません。とりわけ「子ども手当」の財源について、民主党が扶養控除、配偶者控除を廃止すると政権公約に明記していることです。藤井財務相は、早ければ来年度から扶養控除を先行して廃止する可能性があると、13日の記者会見で明らかにしています。
子育て支援の経済給付を充実させることは必要ですが、扶養控除や配偶者控除の廃止は「子ども手当」の対象外の世帯に一方的な増税となります。財源を庶民増税に求めるやり方では国民の理解は得られません。子育ての困難を解決するには「手当」を増やすだけではなく、長時間労働の是正や認可保育園の大幅拡充など総合的な対策が求められます。
年齢で差別する後期高齢者医療制度について、厚労省の概算要求では軽減策を検討するとしています。この制度を続ければ続けるほど、保険料がますます上がるなど高齢者の被害が広がります。速やかに撤廃し、一時的に負担が増える人には国が手当てするとともに、高齢者と子どもの医療費の無料化に進んでいくことが重要です。
国交省は高速道路の無料化の部分実施で6千億円を要求しています。財政事情が悪化している下で、国民の反対が強く、環境悪化を招くと同時に巨額を要する施策は断念すべきです。
「二つの聖域」にメスを
防衛省の概算要求では、軍事費はほぼ今年度の当初予算並みとなっています。民主党は大企業優遇の研究開発減税の恒久化や証券優遇税制の維持を掲げています。
藤井財務相は「過去50年のたまったあかを整理したい」とのべています。暮らしを優先する立場で財源問題を打開するためにも、自公政権の最大の「あか」である軍事費と大企業・大資産家優遇という「二つの聖域」に、思い切ったメスを入れることが不可欠です。