2009年10月16日(金)「しんぶん赤旗」
米政権
アフガン増派? 見直し?
5度目協議 戦争目的まで論議
アフガニスタン戦争の泥沼化の下、オバマ米政権は米軍の増派の検討と戦略の見直しを続けていますが、論議は戦争目的そのものにまで及んでいます。
【ワシントン=小林俊哉】オバマ米大統領は14日、5度目となるアフガニスタン戦争をめぐる戦略協議をホワイトハウスで行いました。ギブズ米大統領報道官によると、同大統領はアフガンの治安、政治状況の最新の報告を受け、参加者の意見を聴取しました。
3時間に及んだ会合には、バイデン副大統領やゲーツ国防長官ら安全保障にかかわる政権中枢が参加。外遊中のクリントン国務長官も電話で参加しました。
戦略協議の焦点に浮上しているのは、アフガンへの再増派の是非です。アフガン駐留米軍のマクリスタル司令官は、2001年の米同時多発テロを主導した国際テロ組織アルカイダとつながりがあるとされる反政府武装勢力タリバンを押さえ込むために、最大4万人にのぼる追加派兵が必要だとオバマ大統領に求めているといわれます。
一方、米メディアは相次いで、追加派兵に否定的なバイデン副大統領らが、タリバンは国際テロ組織ではなく、米国にとって直接の脅威ではないとして、アフガンでの軍事作戦をアルカイダ掃討に限定すべきだとする議論を展開していると報じています。
オバマ政権が公式に掲げている戦争目的は「アルカイダとその過激主義的同盟者の一掃」です。
クリントン長官は、外遊先のロンドンで英BBCラジオのインタビューに応え、「われわれは今、だれが実際にアルカイダと同盟しているのか、注意深く分析している。タリバンと自ら名乗る者すべてが、必ずしも英国や米国の脅威ではない」(11日)と述べています。
同長官は、米国のアフガン政策は、同国を米国と価値観を共有するような社会に変容させることではないとも強調しています(6日)。
政権に近い識者の議論も、二分されています。有力米シンクタンク・外交問題評議会のリチャード・ハース会長は、アルカイダはパキスタンを拠点としているとして、アフガンへの増派に疑問を呈し、パキスタン政府のアルカイダ掃討努力を外交的に後押しする必要性を強調。一方、同じ外交評議会の上級研究員であるスティーブン・ビドゥル氏は、タリバンの勢力が伸張すればアフガンがアルカイダの隠れ家となるとして、追加派兵の必要性を論じています。
オバマ大統領は数週間のうちに、アフガン戦略について新しい決定を行う予定ですが、アフガン戦略の見直し議論は、何のための米軍駐留かを改めて問うものとなっています。