2009年10月15日(木)「しんぶん赤旗」
第9回中央委員会総会
志位委員長の幹部会報告
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志位和夫委員長が13日、第9回中央委員会総会でおこなった幹部会報告は次の通りです。
みなさん、おはようございます。CS通信、インターネット中継をご覧の全国のみなさんにも、心からのあいさつをおくります。私は、幹部会を代表して、第9回中央委員会総会への報告をおこないます。
報告の冒頭に、さきの衆議院選挙で、日本共産党を支持してくださった有権者のみなさん、大奮闘してくださった党支持者、後援会員、党員のみなさんに、心からの感謝を申し上げます。ありがとうございました。
総選挙の結果をどうとらえ、わが党が「建設的野党」としてどういう役割を果たすかについての基本点は、すでに9月9日におこなった党創立87周年の「記念講演」で明らかにしています。
幹部会報告では、「記念講演」を前提にしつつ、内外情勢のいくつかの問題と日本共産党の立場、総選挙の総括と教訓、参議院選挙の勝利にむけた基本方針について、報告します。また、第25回党大会の招集日と議題について提案するとともに、大会にむけた党活動の方針を提起します。
1、内外情勢のいくつかの問題と、日本共産党の立場
報告の第一の主題として、内外情勢のいくつかの問題と、日本共産党の立場についてのべます。
「過渡的な性格をもった政権」と「建設的野党」の役割
8月30日に投開票された総選挙では、自公政権退場の審判が下り、民主党中心の政権がつくられました。
「記念講演」では、民主党政権について、「過渡的な性格をもった政権」と特徴づけました。すなわち、民主党の政策・路線には、「財界中心」、「軍事同盟中心」という自民党政治の「二つの政治悪」から抜け出す立場はいまのところ見られませんし、国民の利益に反する問題点も少なくありませんが、部分的には国民の要求を反映した政策も打ち出されています。「過渡的」と特徴づけたのは、そういう意味であります。
日本共産党は、主権者・国民の力が作り出した日本政治のこの新しい局面のもとで、「建設的野党」として二つの仕事にとりくみます。第一は、現実政治を前に動かし、国民の要求を実現するという仕事であります。すなわち、民主党政権のもとで、積極的に政策提言をおこない、「良いことには協力する、悪いことにはきっぱり反対する、問題点をただす」という役割を果たします。第二に、「財界中心」、「軍事同盟中心」という日本の政治のゆがみを大本からただし、「国民が主人公」の新しい日本をめざす仕事にとりくみます。
政権からの退場をせまられた自民党と公明党は、それぞれ新しい執行部体制をつくりましたが、率直にいって、両党とも、これまで自らが犯してきた暮らしと平和を壊す間違った政治への反省の姿勢はまったくみられません。これまでの行動への抜本的な反省がなければ、いくら「健全野党」、「是々非々」などと標ぼうしてみても、前向きの対応はできないでしょう。
総選挙後の新しい政党状況のなかで、どんな問題でも国民の利益にたって「建設的野党」としての役割を果たせる政党は、日本共産党をおいてほかにありません。日本の政治の前向きの変化のプロセスをさらにすすめるうえで、わが党が果たすべき役割と責任は重大です。新しい情勢のもとで、わが党の真価もまた試されているということを肝に銘じて奮闘しようではありませんか。
民主党政権は発足したばかりで、それぞれの大臣などがさまざまな発言をおこなっていますが、この政権の行方がどうなるかは、現時点では不透明な問題が多いというのが、現状であります。わが党は、今後の国会論戦などをつうじて、事実にもとづいて見定め、対応していきます。
幹部会報告では、現時点で党の立場を明らかにしておくべき、内外情勢のいくつかの問題について、提起します。
暮らしの切実な要求にこたえ、国民生活の危機を打開するたたかいを
第一は、暮らしの切実な要求にこたえ、国民生活の危機を打開するたたかいを、あらゆる分野で大きく発展させることであります。
国民要求、総選挙政策を出発点に、あらゆる分野で
総選挙後も、国民生活の危機はますます深刻になっています。失業率、有効求人倍率は、史上最悪水準を記録しています。この1年間に、民間企業の年間給与は平均7万6千円も減り、対前年比で1・7%減と、史上最大の減少幅となっています。中小企業の経営危機と倒産も深刻な状態がつづいています。農業をめぐっても、農産物価格の下落にくわえて、各地での気象被害による作物の不作が、農業経営の危機に追い打ちをかけています。
どんな問題でも、私たちのたたかいの出発点は、国民の切実な要求と、わが党が総選挙で国民に公約した政策であります。その実行のために、広範な国民と手を携えて、たたかいをおこし、発展させることをよびかけるものです。新政権に「良いことには協力」するという場合であっても、その実現をたしかなものとし、また、その不十分な点、問題点をただし、より良いものとして実行させるためには、国民のたたかいが不可欠であります。
(1)雇用問題では、失業者が増える一方で、失業給付が切れ、このままでは今年末に昨年の「派遣村」を上回る深刻な事態が起こりかねない状態であります。失業給付の臨時延長を求めるとともに、雇用保険の対象とならず生活に困窮しているすべての失業者にたいする生活支援を緊急に求めてたたかいます。
また、大手自動車メーカーなどで、短期の「使い捨て」を前提とした非正規雇用の再開の動きが広がっていますが、再び「非正規切り」を横行させてはなりません。労働者派遣法を早期に抜本改正するとともに、期間工など直接雇用についても有期雇用への法的規制を強化することが必要であります。「雇用は正社員が当たり前の社会」にむけた一大闘争をおこそうではありませんか。
(2)社会保障では、削減から拡充への政策転換を求めるたたかいを、あらゆる分野で発展させましょう。世界に類のない差別法である後期高齢者医療制度は、放置すれば保険料が上がりつづけるなど、その害悪はいっそう深刻になります。「新制度ができるまでは廃止しない」という問題の先送りでなく、すみやかに撤廃し、老人保健制度に戻すことを求めてたたかいます。あわせて医療費窓口負担ゼロをめざし、その第一歩として、高齢者と子どもの医療費を国の制度として無料にする運動を大いに広げようではありませんか。
民主党政権は、生活保護の母子加算の復活を表明しましたが、あわせて老齢加算を復活し、国民の生存権を守る制度の再構築をめざします。障害者自立支援法の応益負担の廃止も急務であります。さらに、要介護認定制度改悪による「介護取り上げ」、高すぎる保険料・利用料など、欠陥だらけの介護保険制度を根底から見直し、安心できる制度への改革をめざします。
(3)中小零細企業の危機への対応としては、借金返済に困窮している企業への支援の検討も必要ですが、それにとどまらず仕事の確保も含めた総合的な緊急対策が急務であります。わが党が、総選挙政策で提起したように、(1)雇用の7割を支えている中小企業向けの雇用調整助成金を抜本拡充すること、(2)三大メガバンクなどによる貸し渋りをやめさせ、信用保証制度の抜本的な拡充・改善で資金繰りを支えること、(3)大企業による違法な「下請け切り」をやめさせ、仕事と収入を確保すること、(4)中小企業が倒産・廃業しないために緊急の休業補償・直接支援をおこなうこと――これらの「四つの緊急課題」にとりくむことを強く求めるものです。わが党は選挙戦のなかでも、「町工場は日本の宝」、いまこれを守る政治の責任を果たしてこそ日本経済の未来はある、と訴えてきましたが、この見地でのたたかいを大いにすすめたいと思います。
(4)日本農業の再生は、地域経済の活性化のうえでも、食料自給率を引き上げるうえでも、国民的課題であります。民主党の政策の重大な弱点は、「戸別所得補償」をいいますが、これが日米FTA(自由貿易協定)の推進など、輸入自由化推進をすすめる手段と位置づけられていることであります。これでは日本農業を再生し、自給率引き上げをはかることはできません。
わが党が主張しているように、(1)価格保障と所得補償を組み合わせて、再生産が可能な農業収入を保障することと、(2)関税など国境措置を維持・強化し、農産物輸入の歯止めない自由化にストップをかけることの双方をしっかりすすめてこそ、再生の道は開かれます。そのための国民的合意づくりにとりくみます。緊急措置として、ミニマムアクセス米の「義務的」輸入の中止、政府による備蓄米の買い入れによって、米価を下支えすることを求めます。
(5)子育て支援についてのべます。子育て支援への経済的給付――「手当」の拡大は当然ですが、その財源を扶養控除、配偶者控除の廃止など、庶民増税に求めることには、わが党は反対であります。国民の一部を犠牲にして一部に回すというやり方では、国民の理解は得られないということを、率直に指摘しなくてはなりません。また、「手当」の増額だけでなく、長時間労働の是正、認可保育園の大幅拡充で待機児童をゼロにするなど、「仕事と子育てが両立できる社会」をめざす総合的対策が必要であります。
あわせて、高校の学費を公立・私立ともに無償化をめざし、給付制奨学金を創設する運動にとりくみ、すみやかな実現を勝ち取ろうではありませんか。
(6)地球温暖化対策の着実な推進を求めるたたかいについてのべます。鳩山首相が、9月の気候変動首脳会議で、温室効果ガスについて、「1990年比で2020年までに25%削減をめざす」と表明したことを、わが党は歓迎するものです。問題は、今後、これをどうやって実行するかにあります。実行のためには、最大の温室効果ガス排出源である産業界に対し、公的削減協定の締結など、実効ある措置をとらせることができるかどうかが、最大の焦点となってきます。日本経団連などは「国際競争力が損なわれる」などを盾に、これに激しく抵抗していますが、EU内で操業している日本の大手自動車メーカーなどは、ヨーロッパでは公的削減協定を締結しているわけで、ヨーロッパでできて日本でできないという道理はありません。民主党政権が、ここに踏み込めるかどうかが、問われています。
(7)消費税増税反対、減税を求めるたたかいについてのべます。2011年度までに消費税増税法案を通すと宣言した自公政権が退場したことは、増税を阻止する条件を開くものとなりました。しかし、増税反対のたたかいを緩めるわけにはいきません。日本経団連は、10月2日に発表した「平成22年度税制改正に関する提言」で、消費税率を2015年度までに10%、2025年度までに17〜18%に引き上げ、一方、法人実効税率を40%から30%に引き下げることを要求しています。民主党も、向こう4年間は増税の実施はしないというものの、将来的に年金財源としての消費税の引き上げが必要だと主張しています。
軍事費と大企業・大資産家優遇という「二つの聖域」にメスを入れれば、消費税に頼らなくても社会保障を支える財源はつくれることを広く明らかにしていくことと一体に、消費税増税反対、食料品非課税を求める世論と運動を大いに広げようではありませんか。
二つの点に留意して、たたかいの発展を
新しい情勢のもとで、国民要求にもとづくたたかいをすすめるうえで、つぎの二つの点に留意してとりくむことを訴えたいと思います。
(1)一つは、自民党のこれまでの支持基盤が大規模に崩壊するもとで、従来の枠を大きく超えた国民各層との対話と共同の可能性が大きく広がっており、それをくみつくした活動の攻勢的な発展が求められているということです。
たとえば、これまで自民党の支持基盤とされてきた農協で、大きな変動が起こりつつあります。JA全中(全国農業協同組合中央会)は、10月8日、第25回全国大会を開催し、今後の農政運動の方針として、「政府・与党をはじめ、全ての政党に対して生産現場の農家組合員の声を主張し、国政に反映するという国民運動」をおこなうことを明記した特別決議を採択しました。「全ての政党」にたいして、いわば「全方位」で、農家の声を主張する方向への転換であります。全国大会には、大会史上初めて日本共産党の代表が招待され、私が参加しましたが、あいさつには盛大な拍手を寄せていただきました。私の後にあいさつに立った国民新党の代表が「自民党には拍手がなく、共産党には大きな拍手がおき、時代は変わった」ということをのべる一幕もありました。これまでも全国各地で農協関係者との対話と共同がすすんできましたが、中央段階でこうした関係の発展がつくられたことは重要であります。
また、日本医師会は、5月に発表した「医療崩壊から脱出するための緊急提言」で、高すぎる医療費の窓口負担が受診抑制を招いているとして、その軽減を打ち出しました。現役世代を3割負担から2割負担に、70歳から74歳の高齢者は2割負担への引き上げを中止し1割負担に、高齢者で現役並み所得者の3割負担もやめ1割負担にというものであります。わが党の提案とは個々には一致していない部分もありますが、民主党、自民党など、他党がこの問題には踏み込めていないもとで、医療費の窓口負担の軽減という方向を主張するのは、日本共産党と日本医師会という構図になっています。ここでも共同の新たな条件があります。
さらに、総選挙にむけてとりくまれた各地の演説会に、保守系の自治体首長、議員などが参加し、期待のあいさつを寄せてくれたところも少なくありません。総選挙後の地方議会では、住民の利益にたった意見書や決議が次々と採択されるなど、状況の大きな変化も生まれています。
このように情勢の大激動が起こっている。従来の保守層もふくめて、あらゆる分野でこれまでにない共同の可能性が生まれています。視野を大きく広げて、国民の中に飛び込み、胸襟を開いて話し合い、一致する要求での共同のたたかいを大きく広げようではありませんか。
(2)いま一つは、国民要求実現には、財界・大企業の抵抗と圧力を打ち破る世論と運動が不可欠であるということであります。
総選挙で下された「自公政権ノー」という国民の審判は、この政権を牛耳っていた財界・大企業へのきびしい批判ともなりました。このもとで、日本経団連などのなかには、政治への影響力をどのようにして維持するかについて、方向喪失、動揺、混迷も生まれています。同時に、これまでの自らの身勝手な行動に自省・反省をくわえ、大企業としての社会的責任を果たそうという方向転換が見られるわけでもありません。
とくに労働者派遣法の改正、温室効果ガスの大幅削減などでは、相変わらず「国際競争力」論などを盾にとっての身勝手な反対論を繰り返しています。また、法人税減税と一体の消費税増税の旗振りを開始しています。
こうした財界・大企業の抵抗と圧力を打ち破ってこそ、国民要求実現の道は開かれます。また、民主党政権が、国民の利益にかなう方向の政治を実行するためには、「財界中心」の政治からの脱却が必要であり、新政権の姿勢が試される最大の試金石の一つがここにあります。
わが党は、国民の世論と運動と連帯し、事実と道理にたった論陣を張ることによって、財界・大企業の身勝手な抵抗と圧力を打ち破り、国民要求実現の道を開くために力をつくします。ここに「建設的野党」としての日本共産党ならではの重大な使命があることを強調したいと思うのであります。
民主党の政権運営の基本姿勢にかかわる問題点について
第二に、民主党の政権運営の基本姿勢にかかわって、いくつかの問題点について指摘しておきます。
一部にみられる「マニフェスト絶対主義」ともいうべき態度について
その一つは、鳩山政権の一部閣僚の発言のなかに、“総選挙で民主党のマニフェストは信任を受けたのだから、書いてあることは一言一句、有無を言わさずにやる”という、「マニフェスト絶対主義」とでもいうべき態度がみられることであります。
(1)ある大臣は、初登庁の日に、民主党の「マニフェスト」の冊子を手にかざしながら、「マニフェスト」について、「政権交代した今、国民と新しい政府との契約書、国民からの命令書と考えてもよいと思う。携行して熟読し、どうすれば実行できるか知恵を出すように」と幹部職員に訓示しました。選挙で掲げた公約の実現のために誠実に力をつくすことは、一般論として当然のことですが、民主党の「マニフェスト」を、丸ごと「国民からの命令書」と断言する態度には、民主主義にてらして、大きな問題を感じざるを得ません。
なぜなら、今回の総選挙で、国民は「自公政権ノー」の審判は下しましたが、民主党の政策と路線に信任をあたえたわけではないからであります。とくに「マニフェスト」の個々の政策の実行にまで丸ごと白紙委任をあたえたわけではありません。そのことは各種の世論調査の結果でも明らかであります。またそのことは、選挙直後の会見で鳩山代表自身が「今回の選挙結果を、単純に民主党の勝利ととらえていない」と認めていることであります。
選挙で多数の議席を獲得したとしても、一つ一つの政策を実行するさいには、国民の世論に耳を傾け、理解と合意を得る努力をつくすこと、国会での十分な審議をつくすことが大前提となることは、どんな政権でも、どんな問題でも、欠くことのできない民主主義のプロセスであることを強調しなければなりません。
(2)たとえそれが、国民の利益にかなった良い方向の課題であっても、こうした民主主義のプロセスは不可欠であります。国土交通大臣は、就任直後の会見で、「マニフェスト」に書いてあることを理由に、群馬県の八ツ場(やんば)ダムの工事中止を宣言しました。しかし、その表明が、中止の根拠や今後の対策について十分な具体的説明ぬきにおこなわれたため、住民からは怒りの声もあがっています。
半世紀以上もの間、国の施策にほんろうされてきた水没地区住民の苦難は想像にあまりあります。長い反対運動の末、苦渋のダム受け入れを決断し、一刻も早い地域再建を願ってきた住民のなかから、国の政策変更によって暮らしが左右されることに怒りの声があがることは当然であります。旧政権による誤ったダム建設押し付けが原因であっても、新政権が政策転換をするさいには、政府として真摯(しんし)な姿勢で謝罪し、不安や要望に謙虚に耳を傾け、ダム中止の根拠を丁寧に説明し、とくに生活再建、地域振興策を住民とともにつくりあげ、理解と合意を得る民主的プロセスが必要であります。それぬきに「マニフェスト」に書いてあるから問答無用という姿勢をとるならば、住民の理解は得られないし、ダム推進勢力に口実を提供することになります。
八ツ場ダムについては、わが党は、早くから一貫して、無駄と環境破壊の計画として、住民団体、市民団体と共同し、国会でも地方議会でも中止を求めつづけてきました。そのさい、中止にあたっては、地域住民が受けた困難を償うなどの観点から、国と関係自治体などが地域住民を交えた地域振興のための協議会をつくり、住民の生活再建や地域振興をはかることを義務づける法律を制定することを要求してきました。地元住民や関係者の疑問や不安に一つ一つ答え、ダム中止への理解と合意が得られるよう丁寧に手をつくすことを、わが党は新政権に求めるものであります。また、党としてもそうした見地でのとりくみをおこないます。
(3)政権運営で民主主義のプロセスを重視することは、国民にとって問題点や危険性をはらむ課題、国民が不安を感じている課題では、なおのこと重要であります。
民主党が「マニフェスト」で掲げた、庶民増税と抱き合わせの「子ども手当」、高速道路無料化などについては、多くの国民からひきつづき不安と批判の声が寄せられています。農業とコメを破壊する日米FTA(自由貿易協定)や、国民多数の声を国会に届かなくさせる衆院比例定数削減にたいしては、国民のなかから強い反対の声がわきおこっています。
これらの課題については、民主党政権が、数の力で押し通すことは絶対にやめ、国民の不安や批判に謙虚に耳を傾け、政策の抜本的見直しをはかることを強く求めるものであります。
民主党が主導してすすめている「国会改革」について
いま一つは、民主党の小沢幹事長が主導してすすめようとしている「国会改革」についてであります。報道によれば、その具体的な内容として、(1)官僚による国会答弁の禁止、(2)委員会定数の削減、(3)委員会定例日の廃止、などがあげられています。これらはどれも、国会の機能の弱体化、形骸(けいがい)化につながる重大な問題点をもつものであります。
官僚による国会答弁を禁止したらどうなるでしょうか。憲法で規定された「国権の最高機関」としての国会の権能には、「唯一の立法機関」であるとともに、「国政調査権」「行政監督権」――国民の代表者である国会議員と国会が、行政機構、官僚機構を直接に調査・監督する権能があります。これまでも、高級官僚が不正や腐敗、問題を引き起こしたさいには、国会に招致して事実関係と責任の究明をはかることがされてきました。日常的にも国会が、官僚を呼び、官僚機構の問題点を直接ただすことがおこなわれてきました。ところが、官僚の国会答弁を禁止してしまいますと、そうした仕事ができなくなり、国会が、憲法で保障された「国政調査権」「行政監督権」を発揮するうえで大きな障害をつくることになります。官僚機構への調査・監視機能は、同じ行政機構である政府部内でしか働かなくなり、国会はそのらち外におかれてしまうことになりかねません。わが党は、「脱官僚」を大義名分にしながら、行政にたいする国会の調査と監視を決定的に弱めるこのような方向には反対であります。
また、委員会の定数削減は、少数会派の委員会審議への参加や発言機会の縮小につながる、議会制民主主義に対する危険な逆行です。委員会の定例日の廃止も、国民の意見をふまえて民主的で十分な国会審議を保障する見地からみて大きな問題があります。
国民の声に謙虚に耳を傾け、民主的な政権・国会運営を求める
民主党政権の一部にあらわれている「マニフェスト絶対主義」ともいうべき傾向、国会の民主的権能を弱め、民主的運営に逆行する「国会改革」の動きには、民主主義の軽視という点で、表裏一体の危うさがあることを率直に指摘しなければなりません。
わが党は、民主党政権にたいして、数の力にけっしておごることなく、国民の声に謙虚に耳を傾け、民主的な政権運営、国会運営をおこなうことを強く求めるものであります。
「核兵器のない世界」をめざすたたかいについて
第三は、「核兵器のない世界」をめざすたたかいについてであります。
米国・オバマ大統領が、今年4月、プラハで核兵器廃絶をめざす演説をおこなうなど、国際政治で前向きの大きな変化が生まれるもとで、わが党は、国内外で核兵器廃絶の世論と運動を広げるために、知恵と力をつくしてきました。この間の情勢の注目すべき進展について、報告します。
国連安保理首脳級特別会合―― 「核兵器のない世界」にむけての一歩前進
9月24日、国連安全保障理事会は、オバマ米大統領が議長となり、核軍縮・不拡散をテーマにした初の首脳級特別会合を開催しました。この会合で核保有5カ国を含む全会一致で採択された決議は、その前文で、「核兵器のない世界のための条件を築くことを決意」すると明記するとともに、核不拡散条約(NPT)第6条にしたがって、核軍備の削減と撤廃にむけた誠実な交渉をおこなうことをよびかけるものとなりました。
同時に、決議は、その前文で、「自国核兵器の完全廃絶を達成するという全核保有国の明確な約束」を合意した、2000年のNPT再検討会議について、その「成果を想起する」ことが明記されました。2000年のNPT再検討会議でのこの合意が、2005年の再検討会議では議題にもされなかったという経過があっただけに、今回の安保理決議でその「成果を想起する」と明記されたことは、注目すべきであります。
全体として、国連安保理という場で、米国大統領が議長を務め、全会一致でこうした決議が採択されたことは、核兵器廃絶を願う世界の世論と運動の重要な成果であり、「核兵器のない世界」への前進の一歩として、わが党は歓迎するものであります。
アジア政党国際会議――日本共産党代表団の果たした役割
9月24日から26日にかけて、カザフスタンの首都アスタナで、第5回アジア政党国際会議が開催されました。この会議は、アジアで活動する合法政党が与野党の区別なく参加し、世界とアジアの平和と進歩のために交流・連帯するというもので、今回の国際会議には41カ国・地域、74政党が参加しました。日本からの参加は日本共産党だけでありました。
わが党は、今回の会議が、核兵器問題が国際政治の大問題になっているなかで開催されていることを考慮し、核兵器廃絶の声をアスタナから発信するために力をつくすという立場でこの会議にのぞみました。代表団の発言も「『核兵器のない世界』をめざして」というテーマにしぼったものをおこないました。
会議の最終日に採択された「アスタナ宣言」は、「あらゆる地域で核兵器のない世界を目標とすべきだ」と世界によびかけるものとなっていますが、この内容は、日本共産党代表団の発言と修正提案が実を結んだものであります。
経過について報告しますと、当初配布された原案は、「核拡散の防止」についての言及はありましたが、核兵器廃絶については触れられていませんでした。そこで代表団は、(1)「『核兵器のない世界』をめざすこと」を宣言すること、(2)「核兵器廃絶を主題とした国際交渉」を世界によびかけること、(3)核保有国に対して、来年のNPT再検討会議で、核兵器廃絶を達成する「明確な約束」を再確認し、その接近と実現の第一歩を踏み出すよう求めることを、「アスタナ宣言」に盛り込む修正案を文書で提案し、発言でもこの3点での提案をおこないました。
そういう経過のなかで、最終日に配布された「アスタナ宣言」の修正案は、核兵器廃絶問題に言及したものになりましたが、「核兵器のない世界を究極の目標とすべき」という文面になっていました。そこで代表団は、閉会総会で発言を求め、核兵器廃絶を「究極の目標」とすることは、核兵器廃絶を先送りし、棚上げするもので、世界と日本の反核運動が長期にわたって批判してきたものであることを指摘し、「単純だが重大な」修正を提起するとして、「究極の」を削除するという再度の修正提案をおこないました。わが党の修正提案は受け入れられ、「アスタナ宣言」は「核兵器のない世界を目標とすべきだ」と明確に訴える内容となりました。
第5回アジア政党国際会議でのわが党代表団の奮闘は、会議の成功にとっても、世界の反核平和の世論と運動にとっても、一つの貢献となったことを報告しておきたいと思います。
核軍縮の部分的措置と一体に、核兵器廃絶の国際交渉を
こうして、この間の国連安保理、アジア政党国際会議などの動きは、日本共産党が戦後一貫して追求してきた地球的規模での核兵器廃絶という目標が、今日の世界の動きと大きく共鳴しあっていることを示しています。「核兵器のない世界」の追求は、いまや核保有国も含めた世界の圧倒的世論となっています。
いま問われているのは、どうすれば人類はこの目標に到達できるかという問題であります。わが党は、核軍縮の個々の部分的措置を前進させることと一体に、核兵器廃絶そのものを正面からの主題とした国際交渉を開始することが重要であることを訴えつづけています。原水爆禁止世界大会がよびかけた国際署名が要求している中心点も、まさにこの点にあります。
来年5月に国連でおこなわれるNPT再検討会議にむけて、世界と日本でこの声をどれだけ広げることができるかが、きわめて重要です。わが党は、「核兵器廃絶の国際交渉を開始せよ」という声が、世界と日本で圧倒的世論となるように、ひきつづきあらゆる知恵と力をつくす決意であります。
日米核密約問題での進展――名実ともに 「非核の日本」を
日米核密約問題でも、この間、重要な進展がありました。核持ち込みなどをめぐる日米核密約の問題は、わが党が米国の公文書などをもとにかねてから追及してきたものですが、歴代自民、自公政権は、その存在すら否定しつづけてきました。
しかし、今回の総選挙ではこの問題が争点となり、テレビの党首討論で、わが党の提起に対して、民主党の鳩山代表は、核密約を調査し公表することを約束しました。そうした経過をふまえて、9月10日におこなわれた日本共産党と民主党との党首会談で、わが党は、党独自の調査で得た核密約に関する資料を手渡し、その後、党が入手した資料の全体を、民主党に提供し、この問題では真相の究明に全面協力すると伝えました。
その後、岡田外相は、9月16日、就任後の最初の仕事として、日米密約に関する「調査命令」を外務事務次官に出し、真相究明の動きが始まっています。わが党は、新政権に対して、国民を半世紀以上にわたって欺いてきた密約外交の全貌(ぜんぼう)を明らかにすることを求めるとともに、可能な協力はひきつづきおこなうつもりであります。
核密約は、国会の承認、政府の公的な批准を経ていない、自民党政府とアメリカ政府の間で秘密裏に結ばれたいわば“私的な”取り決めです。核密約が取り除かれれば、現行安保条約のもとでは、軍艦や航空機の出入りや一時立ち寄りをふくめ、核兵器のいかなる「持ち込み」も、日本政府との事前協議なしにはできない仕組みになっています。この仕組みを厳格に適用し、いかなる「核持ち込み」も許さないことこそ、日本の政府と国会が、「非核三原則」をもって、日本国民と世界とに約束してきたことであったはずです。
核密約問題の真相が表面化するなかで、米国による「核の傘」の提供の保障だということで、日本への核兵器の持ち込みを正当化しようとする動きも一部に出てきています。この議論は、「核の傘」の名のもとに、日本を核戦争の基地にしようとする議論、すなわち、被爆国・日本を核戦争の加害者にしようとする議論にほかなりません。
日本共産党は、核密約問題の真相を究明するとともに、密約を廃棄し、「核の傘」から離脱し、名実ともに「非核の日本」にすすむことを、強く求めてたたかいます。この道をすすんでこそ、被爆国・日本が、国際政治の舞台で、地球的規模での核兵器廃絶の先頭に立つことができることを強調したいと思います。
日米軍事同盟にかかわるいくつかの直面する課題について
第四に、日米軍事同盟にかかわるいくつかの直面する課題について、報告します。
平和を守るたたかいは、待ったなしに重要な課題
鳩山政権は、この間の日米首脳会談、日米外相会談などの一連の会談で、「日米同盟の強化」で合意しました。同時に、「米軍再編」問題、インド洋での給油問題、対アフガニスタン政策などの具体的な問題には踏み込まず、今後の両国政府の協議の課題となっています。これらの諸問題については、首相自身の発言にも、関係閣僚の間の発言にも、揺れや、ばらつきが大きく、新政権の対応は定まっていません。それだけに、いま平和を守るたたかいをおこすことが、待ったなしに重要な課題となっていることを強調したいと思います。
(1)「米軍再編」の名による基地強化を許さないたたかいでは、沖縄県・普天間基地をどうするかが大きな焦点になっています。総選挙中の党首討論で、鳩山代表は、普天間基地について、「県外移設、国外移設がのぞましい」と繰り返し明言しました。しかし、選挙後の鳩山首相の発言は、二転三転して定まらない状況です。防衛大臣は、県外移設は「極めて難しい」と繰り返しています。
この問題での沖縄県民の意思は明瞭(めいりょう)であります。基地の県内「たらい回し」を決めた1996年のSACO(沖縄に関する特別行動委員会)合意から13年たちますが、新基地建設のための杭(くい)一本打たせてこなかった、ここに県民の総意が示されています。基地の県内「たらい回し」の日米合意は破たんしたという事実を認め、この日米合意を根本から見直し、無条件に普天間基地を撤去させる立場にたつことを、新政権に強く求めるものであります。
(2)自衛隊の海外派兵問題では、民主党政権は、インド洋での自衛隊による給油について、「単純延長はしない」と繰り返しています。同時に、政権内からは、「複雑な形で延長することもありうる」、「国会承認を入れる法改正をおこなって継続していくことはありうる」、「絶対にノーとは言っていない」などの発言もつづいています。
しかし、アフガニスタンでの米軍の戦争を支援することは、もともと「憲法違反」というのが民主党の立場だったはずです。現実に、アフガニスタンで起こっている事態も、米軍の増派による掃討作戦の激化が、民間人の犠牲を増やし、テロと暴力を呼び起こすという悪循環であり、軍事的対応の道から、政治的和平への道に転換することこそ、求められています。わが党は、インド洋であれ、ソマリア沖であれ、憲法違反の自衛隊の海外派兵はすみやかに中止し、撤退することを強く求めてたたかうものです。
(3)憲法9条をめぐる状況は、総選挙で、改憲の旗振りをしてきた議員が大量落選するもとで、明文改憲にはブレーキもかかっています。しかし、新政権内からは、「緊密で対等な日米関係とは、せんじつめると集団的自衛権にゆきつく」などと、実質的に集団的自衛権の行使を主張する動きもおこっています。ここでも手を緩めず、憲法9条を守り、生かすたたかいをさらに発展させ、ゆるぎない国民的多数派をつくるために奮闘しようではありませんか。
日米安保条約解消の国民的合意へ、新鮮なとりくみを
民主党政権の対米政策が抱えるこうした一連の矛盾と問題点の根源には、「日米(軍事)同盟を基軸」とし、それを強化するという立場があります。この日本政治の根本問題では、民主党政権は大きな制約と限界のなかにあります。
こうした状況のもとで、党綱領が示す日米軍事同盟の解消の道を、新鮮に語ることが大切です。日米安保条約を解消するためには、もとより国民多数の合意が必要です。その合意を得ようとすれば、憲法9条にもとづく平和外交によって世界、とりわけ東アジア地域の平和的環境をつくる努力を強めつつ、それと同時並行で、日米軍事同盟にもとづく異常な対米従属の実態、その危険性を広く国民共通の認識にしていく努力が必要となるでしょう。
みなさん。米軍基地、海外派兵、憲法問題など、一つ一つの平和の課題でのたたかいを発展させながら、日本と世界の軍事的緊張の危険な震源地となっている日米軍事同盟の解消をめざす国民的多数派をつくるためのとりくみを、新しい情勢のもとで大いにすすめようではありませんか。
2、総選挙の総括と教訓について
報告の第二の主題は、総選挙の総括と教訓についてであります。
総選挙の政治的総括、全党が確信にすべきことについて
「記念講演」で明らかにした政治的総括の基本点
総選挙の結果の政治的総括については、9月9日の「記念講演」で明らかにしています。その基本点はつぎの通りです。
――選挙結果の全体は、「財界中心」、「軍事同盟中心」という「二つの政治悪」を特徴とする自民党政治そのものの崩壊過程の始まりという歴史的意義をもつものであること。
――国民が下したのは「自公政権ノー」の審判であり、「民主党イエス」の審判とはいえず、国民が新しい政治を探求する時代が本格的に到来したこと。
――日本共産党が、激しく厳しい条件のもとで、現有9議席を確保し、投票率が上がるもとで得票率は後退したが、得票数を増やしたことは、善戦・健闘といえる成果であること。
――歴史の大局で到達点をとらえると、支配勢力によって、繰り返しおこなわれた日本共産党締め出しの攻撃にたいして、前進の局面や後退の局面を経ながらも、それに屈することなく陣地を確保していることは、特別の意義があること。
これらの基本点については、全国の党組織と党員、後援会員のみなさんから、全体として共感と歓迎の声が寄せられています。
三つの角度から総選挙の結果を全党の確信にしよう
ここでは、これらの「記念講演」での解明を前提として、とくにつぎの三つの角度から、総選挙の結果を全党の確信にすることを訴えるものです。
第一は、政治論戦という角度です。私たちが展開した政治論戦は、広範な国民の気持ちにかない、攻勢的で的確なものでした。わが党は、7月16日に発表した幹部会声明を土台に、自公政権退場の先頭にたつという断固たる立場をつらぬくとともに、21世紀の日本の進路として「二つの旗印」――「ルールある経済社会」、「憲法9条を生かした平和外交」を大いに語り、さらに民主党政権ができたさいには、「建設的野党」として奮闘することを明らかにして、選挙戦をたたかいぬきました。国民と怒りや願いを共有しながら、日本の前途をともに探求し、党の役割を語るという政治姿勢をつらぬきました。これが善戦・健闘を支える最大の力となったことを、強調したいと思います。
第二は、2007年9月の5中総以降の支部を基礎としたとりくみという角度です。この間、私たちは、雇用、社会保障、農業、平和の問題など、あらゆる分野で国民の苦難軽減という立党の精神にたち、要求実現のたたかいの先頭にたって奮闘しました。「綱領を語り、日本の前途を語り合う大運動」にとりくみ、草の根の「集い」は73%の支部がとりくみ、のべ90万人が参加するかつてない規模のとりくみとなりました。党史上初めて綱領と党を丸ごと語る活動に日常的にとりくみ、かつてない規模の運動に発展させたことは、画期的意義をもつものです。全国1995自治体・行政区の98・9%で演説会・「集い」がとりくまれたことも重要です。これらの努力と結びつけて、党勢拡大でも、党員と「しんぶん赤旗」読者で、端緒的ですが上げ潮をつくりだして、選挙戦にのぞみました。これらすべての努力が大きな力を発揮しました。
第三は、今回の選挙が、どういう客観的情勢のもとでたたかわれたかという角度です。私たちは、総選挙のたたかいのなかで、この選挙での党前進の可能性とともに、前例のない激しさと厳しさをもった選挙であること、奮闘がおよばなければ後退する危険をはらんだたたかいであることを、繰り返し率直に訴えてきました。
8月11日の「総選挙勝利全国いっせい決起集会」では、(1)「自公政権ノー」の流れが、「二大政党」の「政権選択」という大キャンペーンのもとで、民主党への支持の大きな流れとなり、わが党の支持層にも及んできている、つまりわが党前進の大きな圧力となって働いていること、(2)自民・公明が国民の激しい怒りに直面して、必死のまき返しのたたかいをおこない、小選挙区での自民・民主の激しいつばぜり合いが比例選挙にも及び、ここでも激烈なたたかいが展開されていることを指摘し、これらを直視して奮闘することを提起しました。
選挙後の全国からの報告でも、この両面で、この総選挙がかつてなく激しく、厳しい選挙戦だったことがリアルにのべられています。そうした激烈な選挙で得票を伸ばし、現有議席を確保したことは、善戦・健闘とよぶにふさわしいものであり、全党と後援会のみなさんの奮闘のたまものであります。ここにも深い確信をもとうではありませんか。
参院選で前進・躍進を勝ち取る立場から、教訓をくみだす
「記念講演」では、「もっと伸ばしたかった」、「議席を伸ばせなくて悔しい」という全党と後援会のみなさんの思いについて、「私たちも同じ思いであります。私たちが得た結果が、掲げた目標に及ばなかったことは事実であり、私たちはもとよりこの結果に安住するものではありません。総選挙の総括と教訓は、……第9回中央委員会総会で明らかにしたい」とのべました。
つぎの国政選挙――9カ月後に迫った参議院選挙で前進・躍進を勝ち取るという立場から、総選挙の総括と教訓をくみだしたいと思います。
全有権者規模での宣伝・組織活動はどうだったか
まず全有権者を対象とした宣伝、対話・支持拡大のとりくみがどうだったかについてです。選挙戦をふりかえりますと、これまでにない積極的な奮闘とともに、不十分さや今後の課題も浮き彫りになってきます。その両面から教訓をひきだしたいと思います。
宣伝活動―― 「草の根の宣伝力」に依拠した教訓と、今後の課題
まず宣伝活動についてです。
今回の選挙で、自民・民主両党は、政党助成金などをふんだんに使った新聞・テレビなどでの「物量作戦」を展開しました。テレビCMだけでも両党あわせて数千本のCMが流されたと思われます。またメディアによって「政権選択」の大キャンペーンがおこなわれ、連日のメディアの報道は、「二大政党」に偏重したものとなりました。くわえて民主党が、議員・候補者を中心に街頭宣伝、「マニフェスト」宣伝を強化し、自力での系統的な宣伝活動を強めていることも重視すべきであります。
こうした動きに対して、わが党は「草の根での宣伝力」に依拠し、新しい創意を発揮したとりくみを全国各地で積極的に展開し、今後につながる重要な教訓を生みだしました。宣伝カー、ハンドマイクなどを使った街頭宣伝は、把握されているだけでも全国で170万7600回、30世帯に1カ所の規模でとりくまれました。このなかでプラスターなどをつかったハンドマイク、メガホン宣伝が、「支部が主役」のとりくみとして大きく広がりました。街のつじつじで、草の根の力でこうした宣伝活動に本格的にとりくんだのは、わが党だけでありました。
また全国11の比例ブロックごとに、駅頭やターミナルでの「いっせい宣伝活動」がとりくまれました。雇用を守るたたかいと一体に、職場門前宣伝が系統的にとりくまれ、わが党の宣伝物が非常によく受け取られ、職場内で回覧されるなどの新しい状況も生まれました。全都道府県で青年・学生キャンペーンカーが街頭宣伝をおこない、のべ1400人の青年弁士が訴えをおこなったことも、わが党の選挙戦に若々しい新風を吹き込みました。
同時に、他党との関係では、立ち遅れをきたした問題点も少なくありません。とくにポスターの張り出しで遅れをとったという報告が、各県から寄せられています。ポスターについては、中央から都道府県に送付した枚数自体が、中央の財政的制約もあって少なかったという問題があります。特別に緊急のポスター募金を訴えるなどして努力をはかりましたが、とくに、自民、民主が、小選挙区候補者のポスターを大量に張り出したもとで、ここで及びませんでした。
「草の根の宣伝力」に依拠して、民主や自民の大規模な「物量作戦」に、どうやって対抗し、それに負けない日常的な活動を築くかは、今後の重要な課題であります。
対話・支持拡大――これまで以上の奮闘はあったが、到達点は不十分に
つぎに対話・支持拡大についてであります。
全国の党組織は、「今度こそ対話・支持拡大が際限なく遅れる惰性を打破しよう」、「公示日までに得票目標の2倍以上の支持拡大を」という方針のもと、この間の国政選挙と比べれば、組織活動でこれまで以上の格段の努力と奮闘をおこないました。対話、支持拡大の運動量は、その積み重ねの最終到達でみますと、この間の4回の衆議院選挙で最高となりました。全党のみなさんが、後援会の方々と協力しておこなった一つ一つの対話、一本一本の電話が、善戦・健闘を支える力になったことを強調したいと思います。
同時に、掲げた目標にてらせば、私たちの活動の到達点が不十分だったことも事実であります。第一に、「公示日までに得票目標の2倍以上の支持拡大を」という目標に対しての到達は、公示日時点では、全党的には60%にとどまりました。第二に、公示後の選挙戦本番での対話・支持拡大は、「しんぶん赤旗」号外の全戸配布、初めての本格的活用となった総選挙政策パンフの大量配布にとりくみながらの懸命の奮闘がおこなわれましたが、全党的には飛躍をつくるにいたりませんでした。公示後の対話と支持拡大の伸びは、この間の4回の衆議院選挙で最も少ないものでした。
多くの地方機関から、「遅くとも公示日までに『2倍の支持拡大』をやりぬき、さらに本番の飛躍を作り出せていれば、もっと前向きの結果になったことを実感する」という報告が寄せられていますが、ここに選挙活動の一つの弱点があったことを、直視しなければなりません。
今回の総選挙で、立ちあがった同志のみなさんの奮闘はほんとうに素晴らしいものでした。宣伝でも、対話・支持拡大でも、これまでにない積極的なとりくみが展開されました。しかし、全党的には、やるべきことをやりきっての結果ではありません。「二大政党づくり」の動きを本格的に打ち破って、わが党が前進・躍進するためには、私たちの宣伝・組織活動を、さらに大きく引き上げることがどうしても必要であることを、選挙戦の活動の到達は示しています。
選挙をたたかう党の実力はどうだったか
それでは、どうして私たちの活動が、宣伝戦でも組織戦でも、掲げた目標に及ばなかったのか。「記念講演」では、その根本の原因について、「この総選挙が、私たちが実力をつける途上での選挙だった」、「私たちの自力はまだ足りません」とのべ、「次の国政選挙での勝利を展望した場合に、ここにこそ私たちが総選挙から引き出すべき最大の教訓があると考える」とのべました。多くの都道府県委員長、地区委員長からも、質量ともに党の実力を高めることの必要性を痛切に感じたとの報告が寄せられています。この実力という問題を、二つの角度から自己検討してみたいと思います。
持てる力を出し切ったか――日常平素からの「支部が主役」の党づくりの重要性
第一の角度は、持てる力を出し切って選挙をたたかったかという問題です。
多くの県、地区委員会からの報告では、総選挙に立ちあがった党員は、のべで5〜6割であり、日々の活動参加は選挙本番で2割前後、最終日で3割程度とされています。ここに弱点があったことは、全国からの報告で共通してのべられています。
この問題は、2007年の参院選から教訓を引き出した5中総決定で、つっこんで自己検討をくわえた問題でした。5中総では、地方選挙と比べて「国政選挙に力が入らない」というあしき傾向を打開し、国政選挙に強い党――とくに比例代表選挙を「自らの選挙」としてたたかう党をどうつくるかという課題を提起しました。この点についていえば、今回の総選挙は、比例代表選挙を「自らの選挙」としてたたかう気風が、全体としては大いに強まった選挙といえます。全国の多くの同志たちが、この歴史的政治戦を、党員としての初心、生き方をかけてたたかい、多くの感動的な奮闘のドラマが生まれました。
私たちは、今回の選挙でわが党が持てる力を出し切れなかった原因は、さらに根本の日常平素の党づくりの問題に求めるべきだと考えます。全国から寄せられた報告で共通しているのは、日常平素から「支部が主役」で毎週の支部会議を開き、「政策と計画」にもとづいて自覚的な活動にとりくんでいる支部が多数になっている党組織では、いざ選挙戦に入って多くの同志たちが立ちあがり、総合的な力、瞬発力を発揮しているということであります。
100%の支部、8割近い党員が選挙戦に参加し、比例の得票、得票率とも前進を勝ち取った北海道のある地区委員会では、支部会議の開催のための努力を系統的に強め、9割以上の支部が会議を開催し、6割の支部は週1回の会議を開催しています。とくに職場支部にたいして、「職場講座」の方針にもとづいて、実情や悩みに丁寧に耳を傾け、困難に心を寄せながら、ともに打開する活動をすすめるなかで、半数近くの職場支部が週1回の会議を開催しています。地区委員会は、「日常、『支部が主役』の基本にそった努力をつらぬいてこそ、いざ選挙になったさいに全支部、全党員の力が発揮されていく」との報告を寄せています。
日常平素から、「支部が主役」で自覚的に活動する支部をどうやって全党の大勢にするか。この党建設の大道に、今あらためて光をあてることが大切だと考えます。そして、ここに今回の選挙戦からひきだすべき重要な教訓の一つがあることを強調したいと思うのであります。
党の自力そのものはどうだったか――自力をつける途上でのたたかいだった
第二の角度は、党の自力そのものはどうだったのかという問題です。
一言でいうと、自力をつける途上でのたたかいだったというのが、今回の総選挙でした。この問題についても、5中総決定では、参議院選挙の痛苦の教訓として、「どんな難しい条件のもとでも、選挙で前進・勝利するには、わが党は自力があまりに不足」していること、ここに「わが党の活動の最大の弱点」があることを直視し、その打開のためにあらゆる知恵と力をつくすことをよびかけました。
この決定にもとづく全党の努力はきわめて貴重であります。5中総以来、全党は、1年9カ月の長期にわたって、党勢拡大のための粘り強い努力を積み重ねてきました。その結果、党員拡大では21カ月連続で党員を増やし、新鮮な力を党に迎え入れながら選挙をたたかいました。また、読者拡大でも、全党の努力によって、5中総を起点としてみますと、通算して日刊紙読者は1千人余の減ですが、日曜版読者は9千人余を増やし、合計では約8千人の読者を増やして、上げ潮の流れをつくりだしつつありました。これらの全党のたゆまぬ奮闘が、善戦・健闘を支える大きな力となったことは疑いありません。
同時に、前回総選挙時比でみますと、党員数は、前進して選挙をたたかいましたが、読者数は、日刊紙で90・3%、日曜版は90・5%という到達で選挙にのぞむ結果となりました。前回選挙を上回る党勢を築いて選挙をたたかうところにはいたりませんでした。5中総でここに「わが党の活動の最大の弱点がある」とのべた現状を、私たちはなお打開するにいたっていません。どんな激しく厳しい条件のもとでも、ゆるがず前進できる強大な党をつくる――ここにこそ、総選挙からくみだすべき最大の教訓があることをお互いに銘記して、つぎのたたかいにのぞもうではありませんか。
得票率を伸ばした上位3自治体(一般市・特別区)の教訓に学ぶ
二つの角度から「選挙をたたかう党の実力」の問題について報告しましたが、今回の総選挙で、得票率を大きく伸ばした全国での先進的党組織の経験は、「実力を高め、持てる力を発揮し、やるべきことをやりきれば大きく前進できる」ことを証明しています。一般市・特別区でみて、得票率を伸ばした全国での上位3自治体からは、つぎのような報告が寄せられています。
第1位は、広島県尾道市で、前回比136%の得票率を獲得しています。ここでは5中総を討議し、「党を大きくする以外に得票目標の実現なし」と決意を固め、党員拡大では3分の2の支部が成果をあげ、市党の現勢の14%にあたる党員を増やし、読者拡大では21カ月連続前進で、前回総選挙時比で日刊紙読者を109%、日曜版読者を108%に増やしています。また、「支部が主役」の選挙戦に徹し、読者、後援会員に依拠して担い手を広げ、多くの後援会員から支持カードが寄せられる草の根の選挙が豊かに展開されました。
第2位は、兵庫県芦屋市で、前回比で126%の得票率を獲得しています。ここでも党勢拡大で、前回総選挙時比で、党員が105%、日刊紙は94%、日曜版は101%の陣地を築いてたたかっています。すべての支部が、「政策と計画」と得票目標を自覚的にもち、すべての支部が毎週または隔週で支部会議を開催し、すべての支部がハンドマイク宣伝にとりくみ、多くの党員が「私は、○丁目に住んでいる○○です」と自分の名前を名のってつじつじで訴え、文字どおり「支部が主役」の選挙戦をたたかったことが、得票増に結びつきました。
第3位は、東京都渋谷区で、前回比123%の得票率を獲得しています。ここでは、党員拡大で大きな変化をつくっています。16カ月連続で2けたの新しい党員を増やし、5中総後で185人の新規党員を迎え、うち20代、30代が50人と、党員を前回総選挙時比で107%にまで前進させて選挙をたたかいました。地区委員長は、「いつまでも国政選挙、都議選で勝てない党でいいのかについて激論してきた。結論は実力をつけるしかない。その根幹は党員拡大であり、とくに青年を迎えるために、毎日毎日必死になって考え追求してきたが、結果はちゃんと出る」との報告を寄せています。
これらの三つの党組織に共通しているのは、「支部が主役」という党建設の大道にたったとりくみをつらぬくとともに、「党を強く大きくすることなくして勝利なし」の決意を全体のものとして、党勢拡大に執念を燃やしていることであります。この教訓に全党が学び、9カ月後に迫った参議院選挙にむけて、どんな情勢の展開になろうとも、必ず前進・躍進できる強大な党をつくりあげようではありませんか。
5中総の新しい選挙方針の実践と教訓について
つぎに5中総の新しい選挙方針の実践と教訓について報告します。
5中総で決めた新しい選挙方針の基本点
今回の総選挙は、5中総で決定した比例代表での前進に力を集中する新しい選挙方針を、最初に実践するたたかいとなりました。新しい選挙方針の基本は以下の点にありました。
――比例代表で「650万票以上」を獲得することを衆参の国政選挙の共通の全国的目標として掲げ、その達成をめざすこと。
――現在の党組織の力を最も効果的に比例代表での前進に集中するために、「すべての小選挙区での候補者擁立をめざす」という方針を見直し、小選挙区での擁立は一定の要件を満たした選挙区とすること。比例代表の候補者は、ブロック全域で活動する候補者にくわえて、全県からそれぞれの県で日常的な活動をおこなう候補者を擁立すること。
――この方針を成功させる要は、比例選挙で前進するためのとりくみを、あらゆる選挙戦と党活動全体の中軸にすえ、文字どおり日常不断のとりくみにしていくことにあります。すなわち選挙活動の日常化ということであります。
この提起にもとづいて、わが党は、全国すべての都道府県で比例代表の候補者を擁立し、152の小選挙区に候補者を擁立してたたかいました。148もの小選挙区に候補者を擁立しないで比例一本で総選挙をたたかったのは、初めての経験となりました。この新しい方針の実践を踏まえて、つぎの諸点を教訓として明確にしておきたいと思います。
国政選挙の日常化・系統化という点で大きな前進をつくった
第一は、全党が、国政選挙の日常化・系統化にとりくむという点で大きな前進をつくったということであります。
とくに、早い段階から、全都道府県に、比例候補者、小選挙区候補者を擁立したことは、国政選挙は「選挙間際にならないと本気にならない」という弱点を克服するうえで、大きな力を発揮しました。候補者が先頭にたって、多面的な要求運動、団体・個人との対話と交流、「大運動」と「集い」、各種シンポジウムなど、国民との新しい多面的な結びつきを築いてきたことは、今後の大きな財産をつくりました。
5中総では、得票目標に見合う後援会員づくり、ニュースを活用した系統的な後援会活動にとりくむことを、「選挙活動の日常化の一つのカナメ」と提起しましたが、後援会員数はこの2年間で295万人から386万人に前進し、「後援会ニュース」を通じた結びつきも前進し、ここでも今後につながる重要な財産がつくられました。
小選挙区候補を擁立した選挙区――比例得票前進の力となった教訓
第二は、小選挙区候補を擁立し、日常的、系統的に活動したことが、比例得票前進の大きな力となった経験が各地で生まれたことであります。小選挙区候補を擁立した選挙区では、そのうち70%の選挙区で得票を伸ばしています。
東京都では、比例代表の得票を前回比で114%に伸ばし、得票増では全国一となりました。この教訓の一つが、すべての小選挙区で早くから候補者を擁立し、小選挙区候補者が、比例での前進への貢献を最優先の仕事としつつ、小選挙区でも自信をもって「勝たせてください」と訴える姿勢を確立してたたかいにのぞんだことにあったと報告されています。東京では、9回にわたって候補者会議をおこない、候補者演説や候補者活動、政策論戦の意思統一をおこない、その積み重ねが選挙本番での公開討論会で他党候補を論戦で追い詰めることなどにもつながり、陣営に勇気をもたらしました。都委員長の報告では、「小選挙区候補者を擁立した選挙区では、小選挙区選挙でも、他党に負けない演説と活動をすすめてこそ、比例代表選挙での前進の力となることを、今回の選挙ほど鮮やかに証明した選挙はなかった」とのべています。
比例一本でたたかった選挙区――得票前進のとりくみから教訓を
第三に、小選挙区に候補者を擁立せず、比例一本でたたかった選挙区では、得票を伸ばした選挙区は31%でありました。小選挙区に擁立しないことからくるデメリットを乗り越えられなかったとする報告も寄せられていますが、比例一本でたたかうという新たな方針に正面から挑戦して、得票を前進させている選挙区が31%も存在することが重要であり、そのとりくみから教訓をひきだすことが必要であります。
比例一本でたたかった選挙区のなかでも、山形2区では前回比で比例得票率を116%、神奈川4区では110%にするなどの経験が生まれています。山形2区では、(1)得票目標を絶対にやり抜くことを共通の決意とし、「これまでやったことのないあらゆることに挑戦しよう」という気概で、地方議員が先頭にたって「自らの選挙」として大奮闘するとともに、(2)「小選挙区の候補者がいない中で、どうしたら票が出せるか、元気な党の姿を見せる街頭宣伝は、他党に勝って地域第1党になろう」という決意で、党員一人ひとりが候補者になるという気概で、かつてない規模でのハンドマイク、メガホン宣伝にとりくむなかで、得票率増をかちとっています。
方針の的確さを確認しつつ、将来的には全小選挙区で擁立できる党への前進を
こうして、5中総が提起した新しい選挙方針にもとづくとりくみは、個々には弱点やアンバランスも生まれましたが、全体として見るならば現在の党の力量、実情にそくした的確な方針であったと確認できます。また、この方針の実践をつうじて、今後の国政選挙に生かすべき豊かな財産を数多くつくったことも、全党の確信にすべきであります。
同時に、5中総決定でものべたように、「本来は、すべての小選挙区で候補者を擁立してたたかうことが、綱領路線の実現という見地からも、将来的にはめざすべき当然のあり方」であり、そうした力量をもつ党への前進をめざすことが、全党的課題となっていることも、あわせて強調しておきたいと思います。
比例ブロックでの政治的力関係を変え議席増を確実に実現する政治戦略をもつ
総括の最後に、一つの問題提起をしておきます。
今回の選挙では、比例ブロックごとに政治スローガンと政治目標を明確にして、「ブロックは一つ」のとりくみを強めましたが、各ブロックでの議席増を確実に実現するためには、現行のドント方式のもとで議席増を達成できるだけの政治的力関係の変革をめざし、そのための活動を目的意識的に追求する必要があります。
私たちは、過去3回の衆議院選挙で、それぞれの条件は違いますが、連続して9議席にとどまり、ブロックごとでみても議席数を前進させた経験をつくれていません。四つの比例ブロックでは連続して空白が克服できていないという問題があります。こうした現状に絶対に甘んじるわけにいかないことは、いうまでもありません。
つぎの総選挙にむけて、比例ブロックごとにどうやって政治的な力関係を変え、議席増をはかるかの政治的・組織的戦略をたて、それにもとづく系統的な活動にとりくもうではありませんか。比例ブロックごとの得票目標を、全支部、全党員のものにするとともに、要求実現の活動、新たな支持層の開拓、党建設の系統的追求などにとりくみ、どの比例ブロックでもつぎの機会には必ず議席増をはかることをめざすとりくみに、ただちにとりかかろうではありませんか。
3、参議院選挙の勝利にむけた基本方針について
報告の第三の主題は、参議院選挙の勝利にむけた基本方針についてであります。
来るべき参院選の政治的位置づけと政治的構え
まず参議院選挙の政治的位置づけと、この政治戦にのぞむ政治的構えについてのべます。
9カ月後に迫った参議院選挙は、民主党政権誕生後の新しい政治状況のもとでの最初の全国的選挙としてたたかわれます。この選挙は、自公政治に代わる新しい政治をもとめる国民の探求が本格化するもとでたたかわれる政治戦となります。総選挙で始まった日本政治の前向きの変化のプロセスがさらに前進し、「二つの政治悪」から抜け出す方向にむかうかどうかは、日本共産党が伸びるかどうかにかかっています。
また、参議院選挙は、民主党・社民党・国民新党という与党3党、「建設的野党」としての日本共産党、退場の審判を下された自民党と公明党という、まったく新しい政党配置のもとでの政治戦となります。わが党にとっては、「建設的野党」としての真価が問われるたたかいとなります。
こうして参院選は、新しい政治局面、新しい政党関係のもとで、私たちのたたかいいかんでは、これまでの政党間の力関係を大きく変える可能性をはらんだ政治戦となるでしょう。
来るべき参議院選挙を、政治の根本的変革を求める党として大志を持ってたたかい、必ず日本共産党の本格的な前進・躍進に転じる選挙にしようではありませんか。
参議院選挙の政治目標について
つぎに参議院選挙の政治目標について提起します。
比例代表選挙――650万票以上の得票、5議席の絶対確保を
参議院選挙では、「比例を軸に」をつらぬき、比例代表選挙で650万票以上の得票を獲得し、5議席を絶対確保することを目標とします。比例代表選挙では、「日本共産党」と党名での投票をよびかけることを基本にします。5人の比例代表予定候補とその活動地域割りを、発表します。
北海道・東北・北関東 大門実紀史さん。現参議院議員です。
東京・南関東 田村智子さん。党東京都委員会副委員長です。
東海・北陸信越 河江明美さん。党愛知県委員会県委員です。
近畿 市田忠義さん。党書記局長、現参議院議員です。
中国・四国・九州沖縄 仁比聡平さん。現参議院議員、弁護士です。
書記局長として奮闘している市田さん、現職議員として試されずみの大門さん、仁比さんにくわえて、将来性豊かな田村さん、河江さんという新人の女性候補者、5名のベストチームであります。全国の力を一つに集め、5人全員当選を勝ち取ろうではありませんか。
選挙区選挙――全選挙区で候補者を擁立・挑戦し、東京での絶対確保を
選挙区選挙では、全都道府県で候補者を擁立し、東京選挙区で絶対確保をはかることを目標とします。
東京選挙区の予定候補者は、党政策委員会責任者・現参議院議員の小池晃さんです。中央委員会と東京都委員会が協議し、首都で必勝を期すに最もふさわしい候補者として小池晃さんを擁立することを決めました。比例代表の5人とともに、東京選挙区での議席の絶対確保をはかることを目標とします。
選挙区選挙では、全選挙区に候補者を擁立し、勝利をめざしますが、とりわけ、かつて議席をもったことのある北海道、埼玉県、神奈川県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県での積極的な議席獲得への挑戦をよびかけるものであります。すべての県で、選挙区予定候補をすみやかに決定するようにします。
たたかいの基本方向について
参議院選挙の勝利にむけたたたかいの基本方向としては、つぎの2点を強調しておきたいと思います。
すべての党組織と党支部で、得票目標とそれを達成する方針を
第一は、参議院選挙にむけて、「650万票以上」に見合う都道府県、地区、自治体、支部ごとの得票目標をあらためて明確にして、その達成にむけたとりくみをただちに開始することであります。
とくに、得票目標を支部の生きた自覚的な目標にすることが重要です。支部の「政策と計画」のなかに得票目標をしっかりと位置づけて、それを達成するための方針をもち、その実践に踏み出すなかで方針を充実させていくようにします。
いっせい地方選挙の準備を急ぎ、一体にたたかう態勢を
第二は、1年半後に迫ったいっせい地方選挙の政治目標と候補者決定をいそぎ、地方議員と予定候補者が参議院選挙を一体にたたかう態勢をつくることであります。
とくに道府県議、政令市・区議、県庁所在地・主要な地方都市では、第25回党大会までに政治目標と予定候補者を決定し、参議院選挙勝利にむけた機関の態勢づくりと一体に、いっせい地方選挙勝利をめざす態勢づくりをすすめます。
幹部会報告で明らかにした総選挙のたたかいの総括と教訓は、そのすべてが参院選をたたかう方針につながってくるものであります。総選挙の激戦でえた教訓のすべてを生かし、さらに発展させ、今度こそ必ず勝利をつかみとろうではありませんか。
4、第25回党大会の招集と党大会にむけた「党躍進特別期間」のよびかけ
報告の第四の主題は、第25回党大会の招集と、党大会にむけた運動についてであります。
第25回党大会の招集の提案
まず第25回党大会の招集を提案します。
次期党大会については、7中総で延期を決めるとともに、衆議院選挙後に開催する中央委員会総会で判断することにしてきました。党規約にもとづく党大会の招集の措置として、招集日と議題について、以下の通り提案します。
招集日は、2010年1月13日。会期は16日までの4日間とします。
議題は、大会決議と中央委員会報告、新中央委員会の選出、その他とします。
党大会にむけて「党躍進特別期間」にとりくもう
党大会にむけて、全党がつぎの四つの課題に重点的にとりくむ「党躍進特別期間」を設定し、党躍進の大きな上げ潮のなかで大会を迎えることを提案します。
国民要求実現、公約実践の活動を、あらゆる分野ですすめる
第一は、国民要求実現、公約実践の活動を、あらゆる分野ですすめることであります。国民の暮らしの「SOS」を受け止め、その苦難軽減の活動にとりくみましょう。暮らしと平和を守る国民運動を、あらゆる課題で前進させるために力をつくしましょう。
そのさい、自民党の支持基盤が大規模に崩壊するもとで、従来の保守層も含めて、これまでにない広範な人々との対話と共同の広大な条件が広がっていることをとらえ、そのすべてをくみつくす構えでのとりくみの発展をはかることが大切であります。
「綱領を語り、日本の前途を語り合う大運動」を新たな情勢のもとで発展させる
第二は、「綱領を語り、日本の前途を語り合う大運動」を、新たな情勢のもとで発展させることであります。
「建設的野党」という立場と結びつけて党綱領を語る、新たな探求と発展をはかりましょう。国民要求にこたえて現実政治を前に動かす党の役割を語りながら、日本の政治の根本的変革のためには、「財界中心」「軍事同盟中心」という古い枠組みを打破し、「国民が主人公」の新しい日本にすすむことが不可欠になることを、新しい情勢のもとで新鮮に語っていきましょう。
参議院選挙にむけて、新たにすべての支部が「集い」を開き、100万人を超える規模をめざし、党大会までに最初の大きなうねりをつくりだそうではありませんか。
すべての支部で新たな党員を迎え、「しんぶん赤旗」読者では前大会時を突破して大会を
第三は、党勢拡大の大きな上げ潮で大会を迎えることであります。
党員拡大は、全党的な努力で9月度も前進し、23カ月連続前進のなかで9中総を迎えました。大会後、新たな党員を迎えた支部は41・2%であります。大会にむけ、すべての党支部で新たな党員を迎えるとともに、すべての党組織が「政策と計画」「総合計画」で掲げた党員拡大目標を達成することをめざして奮闘しましょう。
この間の党の奮闘によって、党前進の条件を大きく広げてきた労働者と若い世代のなかでの党員拡大に、思い切って力をそそぐことを訴えます。また、11月下旬に全国大会を迎える民青同盟にたいする親身な援助を強めることをよびかけるものです。
読者拡大は、全国すべての都道府県、地区、支部が、参院選を、前回参院選の陣地を大きく上回ってたたかうことを展望して、党大会までに日刊紙読者を3万1791人以上、日曜版読者を15万269人以上増やし、前回党大会水準を突破することをよびかけます。前回党大会水準を突破すれば、全党的には前回参院選時比で日刊紙106・1%、日曜版106・4%となり、参院選を読者の大幅増でたたかう土台が築かれます。選挙後に読者を大きく減らし、それを取り戻せないままつぎの選挙を迎えるという悪循環を、今度こそ断ち切ろうではありませんか。読者を大きく増やして選挙に勝ち、選挙に勝った力でさらに読者を大きく増やすという、発展の循環に転じようではありませんか。
読者拡大は、機関紙の再発行、経常財政の維持、選挙闘争資金の保障など、党の基礎的財政の確立という面からも、なんとしても安定的前進の軌道にのせなければならない課題となっていることも強調しなければなりません。
みなさん。党大会にむけて党勢拡大の大きな上げ潮をつくれるかどうかを、参院選勝利の第一の関門と位置づけて全力をつくそうではありませんか。
全党員が参加する強く温かい党づくり ―― 「党生活確立の3原則」で大きな前進を
第四は、すべての党員が条件にそくして力を発揮し、党活動に参加する、強く、温かい党づくりにむけて、「党生活確立の3原則」――支部会議に参加する、「しんぶん赤旗」日刊紙を読む、党費を納める――で大きな前進をはかることであります。
とくに大会にむけて開かれる支部総会を、これらの党生活確立にむけた一大転機となるよう、支部への懇切丁寧な援助を強めることを訴えるものです。これまでさまざまな事情から党活動に参加できなかったすべての同志を、この機会に訪問し、実情を聞き、悩みや要望に耳を傾け、人間的な信頼のきずなをつくり、党活動に参加する手だてをとりきろうではありませんか。
党員の一人ひとりの生活や活動を、狭く党活動の当面の課題だけで見ずに、丸ごと見るならば、多くの同志は、国民とのさまざまな結びつきをもち、国民のなかの多様な諸団体のなかでのさまざまな活動に参加しているはずであります。それらのすべてに光をあて、党の活動のなかに位置づけ、みんなの力を結集する党活動をつくりあげようではありませんか。
「特別期間」の成功で、参院選勝利にむけた基礎的土台をつくろう
以上、四つの課題を提起しましたが、多くの国民が新しい政治への期待と探求を強めるもとで、これらの課題をやりきる客観的条件は大いにあります。
主体的条件という点でも、私たちは、第24回党大会期に、2回にわたる「職場講座」、「特別党学校」、雇用・社会保障・農業などでの新たな政策提起とたたかいの発展、青年・学生のなかでの活動の強化、野党外交の発展などにとりくみ、国民の期待や注目を広げてきました。これらの数々の新たな探究と努力を、党大会にむけた運動にすべて結実させようではありませんか。
「党躍進特別期間」を成功させ、参院選勝利にむけた基礎的土台を、党大会に向けてつくりあげることをよびかけて、幹部会を代表しての報告を終わります。