2009年10月10日(土)「しんぶん赤旗」
学テ 全員参加中止へ
文科相 「抽出方式で十分」
全国学力テスト(全国学力・学習状況調査)について、川端達夫文部科学相は9日の閣議後の記者会見で「抽出方式でやる方向でまとめる意思を持っている」と明言し、来年度以降は対象学年の全員参加を取りやめる考えを示しました。概算要求の再提出期限である15日までに、新たな実施方法の大枠を固めるとしています。
文科相は「教育水準をできるだけ均一化し、向上させる目的を達成するには、抽出方式で十分だ。費用対効果が一つの判断」と語りました。代わりに小学6年と中学3年の国語、算数・数学に限っていた学年、教科の拡大を検討します。
一部知事らが全員参加方式の続行を求めていることに関しては、「承知しているが、そういう希望がすべてではない」と述べました。
文科省は2007年度から全国学力テストを実施。毎年度60億円弱の費用が掛かり、都道府県別の平均点の公表などで競争の激化を招いています。
日本共産党は全員を対象としたテストの実施に反対し、中止を求めていました。
解説
競争教育見直しこそ必要
新政権が来年度から全国学力テストの全員参加をやめ、抽出方式に切り替える考えを示したことは、同テストが教育現場に無用の混乱とゆがみをもたらしてきたことからみて、当然のことです。
平均点を上げるために全国学力テスト用の想定問題を繰り返しやらせ、その分ほかの授業時間が削られるなどの本末転倒な事態が各地で起きました。テストの点数だけを競う風潮をあおり、教員にプレッシャーをかけ、教育をゆがめる弊害を生んでいました。
さらに、市町村や学校別の平均正答率を公表するかどうかをめぐり、毎年のように混乱が発生。テストを受けた子どもに、採点結果が返されるのは数カ月後で、学力の形成にはほとんど役に立たないことも指摘されてきました。
学力の推移などを検証するためのデータ収集は、抽出調査で十分です。
日本共産党は、総選挙政策でも「競争とふるい分けの教育を根本から是正」することを掲げ、全員参加の全国学力テストの中止と、抽出調査に改めることを公約しました。
川端達夫文科相も9日の閣議後記者会見で、全員調査の問題点について「個々の学校がテストの成績を上げるために競争するようになる」ことへの懸念を挙げました。今回の全国学力テストの見直しを、自公前政権が推し進めた、教育に競争原理を持ち込んで子どもをふるい分けする「教育改革」の抜本的な見直しの第一歩とすることが求められます。(坂井希)
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