2009年10月8日(木)「しんぶん赤旗」
主張
貧困の実態把握
生存権守る政治取り戻そう
長妻昭厚生労働相が6日の記者会見で、貧困世帯の割合を示す貧困率の調査に着手すると表明しました。山井和則厚労政務官によると、一般世帯の貧困率と子どもの貧困率の調査結果を臨時国会までに公表するとしています。
調査さえしなかった
日本では、分かっているだけでも年間100人近くが餓死し、警察の統計でも経済・生活苦による自殺者が7千人を超えています。財界の要求に従った労働法制の規制緩和によって、派遣・請負などの不安定雇用が急速に拡大し、「ワーキングプア」が深刻な社会問題となっています。
日本共産党は貧困の広がりを一刻も放置できない問題として重視し、貧困問題にとりくむ国民の運動と連帯して、国会で繰り返し自公政権を追及してきました。日本共産党は夏の衆院選の公約にも、政府が貧困の実態を調査し、貧困を減らす具体的な目標を策定することを明記しています。
貧困の実態をつかむことは、貧困をなくす具体的な目標を立て、そのための政策を進める大前提です。すべての国民に「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」(25条)を保障している憲法を持つ日本の政府として、貧困の実態把握は最低限の責任です。
ところが自公政権は、貧困の実態どころか、生活保護を必要とする困窮世帯数の調査さえやろうとしませんでした。
OECD(経済協力開発機構)によると、平均所得の半分以下を「相対的貧困」と定義する貧困率は、日本は14・9%でメキシコ、アメリカなどに次ぐ4番目の高さです。子どもの貧困率も加盟国平均を大きく上回っています。
生活保護基準は政府が定義する「絶対的」な貧困水準です。生活保護の捕捉率(生活保護基準以下の世帯のうち保護を受けている世帯の比率)は欧州諸国では7〜9割です。しかし日本は、複数の研究者の推計によるとわずか10〜20%弱にすぎません。自公政権の下で貧困がまん延し、国民を貧困から守るという憲法が定めた責務を政府がまったく果たしてこなかったことを鮮明に示しています。
自公政権が貧困の実態把握に背を向け続けたのは、その事実を隠そうとしたためだけではありません。根本にあったのは国民の暮らしを見下す冷淡な姿勢です。多数の若者を不安定雇用に追い込んだ派遣法の改悪や庶民増税など、国民生活を犠牲にする一方で大企業を応援する「構造改革」路線の冷たさです。
生活保護の母子加算や老齢加算をばっさり切り捨て、生活保護の申請さえ受け付けない「水際作戦」を横行させる異常な政治に国民が退場を迫ったのは当然です。
冷たい政治変える一歩
政府が貧困の実態把握に乗り出したことは、暮らしに冷たい政治を変える第一歩です。それをもとに、鳩山内閣が表明している生活保護の母子加算の復活にとどまらず老齢加算も復活すべきです。必要とするすべての国民が利用できる制度として、生活保護を抜本的に改善する必要があります。労働者派遣法の抜本改正も急務です。
派遣切りにあった若者や生活保護世帯にも課税する消費税は、増税ではなく減税こそ急がれます。貧困の実態を明らかにすることは、その必要性を浮き彫りにすることにもつながります。