2009年10月6日(火)「しんぶん赤旗」
印鑑販売「新世」
統一協会の“前線部隊”
霊感商法公判 元販売員が証言
霊感商法を裁く刑事裁判(「新世」事件)の第2回公判が5日、東京地裁(秋葉康弘裁判長)でありました。特定商取引法違反で起訴されている印鑑販売会社「新世」の元販売員が証人として出廷し、「新世」が伝道と経済を担当する前線部隊であり、統一協会そのものだと証言しました。
証言したのは1988年ごろに統一協会に入信し、2002年に脱退した女性。そのうち99年から02年まで「新世」販売員を担当しました。統一協会本部での会合で特別伝道部隊発足を教えられ、メンバーに加わったといいます。
女性は当時、統一協会南東京教区運営部長だった田中尚樹被告(「新世」社長)らの指導をうけ、渡されたトークマニュアルに従い、JR渋谷駅周辺で通行人に声をかける活動に従事。印鑑を買わせたあと、その客をビデオセンターに誘って教育して献金させ、さらに信仰講座の新生トレーニングや、戸別訪問でハンカチなどを売る実践トレーニングを経験させて信者にすることが目的だったと語りました。
販売員は、印鑑契約金の10〜20%を報酬として受け取り、それを統一協会への献金や、過去に借金して献金した分の返済に充てていたと証言しました。
被告側弁護士は証人に、「原理講論」などの専門用語を連発して質問。裁判所が「何を聞きたいのか」と、たしなめる場面もありました。
「先生にも覚えがあるでしょう」と被告側弁護士に切り返したのは2人目の証人です。
94年入信、05年脱会の女性。統一協会東東京教区に所属していました。
当時、田中被告が同教区江戸川教会で講義しました。内容は印鑑購入者を入信させ、その間にもさまざまな名目で献金させる教育システムと心構え。南東京教区で実績を上げた同被告に学ぶよう指示されたのだそうです。
女性は、入信数カ月後に全財産をなくさなければならないという教えに驚きました。「そうしなければ家族も先祖も救えない。つらいけれど私たちがやるしかない」と。
これに疑義をはさんだのが被告弁護人。女性が集団結婚(合同結婚=祝福)前に受けた家庭修練会のことを根掘り葉掘り聞き、記憶にないと言う女性に、「田中被告の講義だけ覚えているのはおかしい」と切り込むという図式でした。
女性がこれに「祝福直前というプレッシャーがあった。先生も祝福のときはそうだったでしょう」。反対尋問はこれで終わりました。