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2009年10月6日(火)「しんぶん赤旗」

中東和平阻む入植地拡大

米政権、優先課題に掲げるが


 【カイロ=松本眞志】外交の優先課題に中東和平の実現を掲げるオバマ米大統領が就任してから10カ月がたちました。オバマ氏はミッチェル中東特使を数度にわたりイスラエルとパレスチナに派遣して仲介外交を行い、9月にはニューヨークでオバマ氏、ネタニヤフ・イスラエル首相、アッバス・パレスチナ自治政府議長による初の3者会談を行いました。しかし、イスラエルによるユダヤ人入植地拡大が障害となり和平交渉復活への進展はみられません。


 ネタニヤフ首相は9月初旬に入植地拡大の意向を示し、バラク国防相もヨルダン川西岸地区の入植地で新たに455戸の住宅建設を承認しました。これに反発するパレスチナ側は、入植地凍結が和平交渉再開の最低条件だと主張しています。

内外から批判

 オバマ政権は入植地拡大の凍結を要求し、欧州連合(EU)も「入植地拡大計画は和平の障害」とイスラエルを非難しました。

 サウジアラビア紙アラブ・ニューズ(9月23日付)は論評で、「イスラエルはパレスチナの土地での入植地拡大によって正真正銘の国際法、国連決議違反を重ねてきた。法的観点からいえば入植地問題は交渉の議題にならない」と述べ、入植地凍結の即時無条件実施を訴えました。

 イスラエル国内でもユダヤ系市民の4割が入植地拡大に反対しています。内外の批判にもかかわらず拡大が進む理由の一つに、ネタニヤフ首相と入植者の密接な関係が指摘されています。

 汎アラブ紙アルハヤトは「ネタニヤフ氏はユダヤ人入植者を兄弟とみており、入植地問題での敗北は彼の政治的将来と信用を傷つけるものと考えている」と報じています。ヨルダン川西岸で30万人、東エルサレムで20万人といわれる入植者が無視できない政治勢力になっているとの報道もあります。

「特殊な関係」

 エジプトのアルアハラム政治戦略研究所のアブデルアリム・モハメド研究員は、本紙の問いに、「オバマ政権が本気でイスラエルに圧力をかけるつもりなら、軍事、経済、科学技術、政治の分野で米国の恩恵を受けているイスラエルは米側の要求を拒否できないはずだ」と語り、オバマ外交が功を奏しない理由に米国内の親イスラエル圧力団体の存在をあげました。

 イスラエル紙ハーレツ(電子版8月17日付)は、米国の親イスラエル団体が毎年イスラエル政府に多額の寄付金を送り、東エルサレムのアラブ人資産の買収に使われていると報道。イスラエルの平和団体「グッシュ・シャローム」も、これらの寄付金がユダヤ人入植地拡大の資金源になっていると追及しています。

 イスラエルへの個人寄付が「米・イスラエル間の所得条約の特別条項」で税控除されているなど、米国とイスラエルの「特殊な関係」も入植地問題に影を落としています。


 ユダヤ人入植地 イスラエルが1967年の第3次中東戦争で占領した地域に建設された居住地。東エルサレムを含むヨルダン川西岸の200カ所近くに約48万5千人、シリアのゴラン高原に約1万8千人が居住。シナイ半島とガザ地区の入植地は撤去済み。ジュネーブ条約は占領地への自国民の移送を禁止。国連安保理決議242(1967年)はイスラエルに占領地からの撤退を要求。同決議465(80年)は「入植地の設置、建設および計画」の「緊急停止」を求めています。


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