2009年10月6日(火)「しんぶん赤旗」
主張
明石歩道橋事故
遺族の思いうけとめるべきだ
4回目の処分も不起訴―幼い子どもたちなど11人が死亡した2001年7月の兵庫県明石市での歩道橋事故をめぐり、業務上過失致死傷容疑で書類送検された当時の明石署副署長を、神戸地方検察局があらためて不起訴としました。神戸検察審査会が事件から8年目にあたるこの7月、みたび、副署長は「起訴相当」と決定したのを踏みにじったものです。
裁判を通じて事故の真相と責任を明らかにと願ってきた遺族は、検察の不起訴処分に納得していません。検察審査会の再審査による起訴と裁判を通じて、司法は遺族の思いをうけとめるべきです。
警察の責任は明らか
明石歩道橋事故は、市民夏まつりの花火大会のさい、会場の大蔵海岸と最寄りのJR朝霧駅を結ぶ歩道橋に多くの参加者が殺到して折り重なって倒れ、11人が死亡、約250人が重軽傷を負ったという大惨事です。11人のうち9人が10歳未満の子どもたちでした。
現場の歩道橋では、7カ月前の年越しイベントでも、事故が起きていました。はるかに多くの参加者が押し寄せる花火大会では、いっそうの大混乱が起きることは十分予想されていました。事故から半年後に発表された明石市の事故調査報告も、事故が起きることは「容易に知ることができた」と指摘しています。
にもかかわらず、主催者の明石市と警備を指導した兵庫県警・明石署、警備を請け負った警備会社は十分な対策を講じず大惨事を引き起こしたのです、市と警察、警備会社3者の責任は免れません。
事故をめぐっては遺族が3者を相手に起こした民事訴訟がすでに確定しています。ところが刑事裁判では神戸地検が警察について、現場の警察官を起訴しただけで明石署の署長、副署長は起訴しなかったため、遺族が審査を申し立て、検察審査会で争われてきました。
市民の安全確保に責任を負うべき警察が、事故当時、現場の雑踏警備に必要な人員を配置せず、混乱が始まってからも必要な対策を講じなかったことは明らかです。現場に派遣された警察官を起訴しただけで、署長や副署長の責任を問おうとしなかった検察の処分は明らかに不自然です。
検察審査会は都合3回にわたって起訴すべきと議決しました。検察はそのたびに不起訴にしました。署長はその後亡くなりましたが、起訴された現場の警察官は上告しており裁判は続いています。副署長を起訴し、法廷で事実を明らかにすることに、時効などの障害はありません。検察が不起訴を続けるのは、事実と責任の究明に背を向けるものです。
審査会は役割果たせ
遺族は4回目の不起訴を受け、「検察と一般市民の考え方が違う」と怒りと失望の声をあげています。遺族がなにより知りたいと願っているのは、「あの夜、なぜ彼らは命を落とさなくてはならなかったのか」「防ぐことは出来なかったのか」ということです(遺族原告団ホームページから)。
6月からの検察審査会制度の改正で、検察が審査会の決定を覆しても審査会が再び起訴すべきだと判断すれば、弁護士が検察官に代わって起訴できるようになりました。検察審査会が再審査で起訴を認めるか、市民参加を拡大した司法の役割が求められています。