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2009年10月4日(日)「しんぶん赤旗」

主張

雇用危機

「派遣村」の事態繰り返すな


 雇用危機が、深刻の度を増しています。

 雇用の削減が続き、一部の大企業では生産が回復しても、いっこうに失業は減らない。求人が少なく、働く意欲と能力があっても、仕事が見つけられない―失業給付の打ち切りで、公園などで炊き出しに並ぶ人の列も延びています。このままでは「派遣切り」で仕事も住まいも奪われた人が巷(ちまた)にあふれ、市民団体などが緊急の対策に取り組んだ、昨年末の「年越し派遣村」のような事態が再現すると懸念する声もあります。

雇用統計でも浮き彫り

 雇用危機の深刻さは、相次いで発表された、各種の雇用統計でも明らかです。

 総務省の労働力調査で、8月の完全失業率は5・5%と、前月からは若干低下したとはいえ、依然高い水準です。完全失業者の数は361万人で、1年前に比べ89万人も増えています。

 一般職業紹介状況によれば、仕事を求める人に対する求人の割合を示す有効求人倍率は、8月は0・42倍と前月に続き過去最低です。10人の求職者のうち6人が職を見つけられません。仕事を探す人がハローワーク(職安)にあふれています。

 8月の毎月勤労統計でみても、働く人の賃金も労働時間も減り続けており、とくに残業時間は1年前に比べ15・2%減と大幅減です。国税庁の民間給与実態調査でも、昨年の給与所得者の平均給与は1年前より1・7%減っており、10年前に比べれば、なんと1割近い落ち込みです。

 雇用危機が深刻なのはなんといっても、正規、非正規を問わず、製造業を中心に、雇用削減に歯止めがかかっていないためです。

 厚生労働省の非正規労働者の雇い止め等の調査によれば、今年12月までに期間満了や解雇で仕事を失う非正規の労働者は、昨年10月からの合計で23万8752人にのぼる見込みです。今年10月までで集計した先月の調査に比べると、6304人増えています。同じ調査で正社員の離職状況をみても4万7676人にのぼります。

 大企業に違法な「派遣切り」など「人減らし」合理化をやめさせ、雇用の責任を果たさせることは急務です。雇用が安定しなければ個人消費も伸びず、長引く不況も回復しません。政府と大企業の責任が問われます。

 同時に、現在仕事を失っている人への生活と雇用の支援は急務中の急務です。失業の長期化にともない、雇用保険の失業給付期間が切れ、緊急的に入居を認められてきた公的住宅の期限も切れるなどの深刻な例が出ています。

 「年越し派遣村」の村長を務めた反貧困ネットワークの湯浅誠事務局長は先日のNHKテレビで「人々の生活は待ったなしの状態」と警鐘を鳴らしています。対策は文字通り一刻を争います。

人間らしく働けるように

 根本的には、人々が無法な首切りなどにおびえず、人間らしく働けるルールを築くことです。雇用を安定させ、違法な「派遣切り」などを許さない労働者派遣法の抜本改正などが急がれます。

 雇用の責任を果たすどころか、派遣法の抜本改正などを妨害する財界の動きも強まっています。雇用危機を突破し、立て直しを求める国民のたたかいが重要です。



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