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2009年9月30日(水)「しんぶん赤旗」

主張

JR西日本

命より利益の体質変わらぬか


 いったいJR西日本は、史上最悪の鉄道事故で106人もの乗客の生命を奪ったことから、何の反省もしなかったのか―同社の関係者が事故についての航空・鉄道事故調査委員会の報告を事前に入手し、改ざんまで働きかけていたことに強い怒りを禁じえません。

 不正な情報入手には前社長、現副社長、東京本部副本部長ら同社の幹部が関与していました。関係者は「軽率」などといいわけしていますが、組織的な犯罪行為の疑いも濃厚です。事故を引き起こしたJR西日本の人命よりも利益優先の体質は、何も変わりません。

「稼ぐ」が第一での事故

 ほぼ満員の快速電車が制限速度を超える猛スピードで急カーブに突っ込み、脱線・転覆、先頭の数両が線路ぎわのマンションに激突する大事故でした。2005年4月25日、兵庫県尼崎市のJR西日本・福知山線で発生した脱線事故です。乗客106人と運転士が亡くなり、重軽傷者は562人にものぼりました。

 亡くなった方の遺族と重軽傷を負った人たち、その家族が受けた衝撃は、事故から4年余りたっても和らぐことはありません。それどころか今回明らかになった報告書の不正な入手で、いっそう怒りと不信を強めています。

 事故から2年余りたった07年6月に公表された航空・鉄道事故調査委員会(事故調、現在の運輸安全委員会)の報告は、国の監督責任は明確にしなかったものの、JRに対しては事故の背景として、ダイヤに余裕がなかったこと、新型ATS(自動列車停止装置)の設置の遅れ、運転士に対する懲罰的な「日勤教育」などの問題点を指摘しました。

 報告はJR西日本が「稼ぐ」を目標の第一に掲げていたことも指摘しました。公共交通機関として不可欠な安全な輸送のための投資を怠り、文字通り「稼ぐ」ため、無理を重ね、社員に強制する。まさに安全軽視、利益第一主義の企業体質が批判されたのです。

 今回明らかになった不正な情報入手では、JR西日本の山崎正夫社長(当時)らが、旧国鉄時代の手づるを頼って事故調の委員に働きかけ、報告書の事前入手をたくらんでいました。山崎氏は、ATS整備の遅れなどJR西日本の責任にふれた部分を削除する、改ざんまで求めていました。実に言語道断の行為です。

 JR西日本で事故対策の責任者だった現副社長が部下に情報入手を指示していたことも明らかになりました。不正な入手が「不適切」だったとか、「軽い気持ちでやった」などといういいのがれは通用しません。不正入手が、責任追及を免れ、裁判などを有利に進めるためであったことは明らかです。

公共交通としての責任

 JR西日本には、100人以上の貴重な人命を失わせたことへの反省も、被害者や家族への心配りもまったくありません。あるのはただただ、企業と幹部の保身です。

 山崎氏は今年7月、事故の責任を問われて起訴され、「重く受け止め」と社長を辞任しました。いまとなってはむなしいことばです。

 不正入手にかかわったJR西日本は、安全を最優先しなければならない公共交通機関として、存在がかかった事態であることを銘記すべきです。監督にあたる国交省も、責任を徹底追及すべきです。


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