2009年9月29日(火)「しんぶん赤旗」
独総選挙 左翼党は得票・議席増
大連立の2党後退
【ベルリン=片岡正明】ドイツ連邦議会(下院、定数598)選挙が27日、投開票され、大連立を組んできた二大勢力のキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)と社会民主党(SPD)がともに後退し、国民が大連立政治にノーをつきつけた格好になりました。これに対し、野党の左翼党と自由民主党(FDP)は得票率、議席数とも大きく伸ばしました。
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メルケル首相は同首相が率いるCDU・CSUがSPDとの大連立を解消し、右派野党のFDPと連立政権をつくると表明しました。
選挙の暫定結果は、CDU・CSUが前回より後退して史上2番目に低い得票率となり、239議席でした。SPDも前回より減らし、史上最低の得票率で146議席。一方、FDPはこれまでで最高の得票率で93議席を獲得しました。
CDU・CSUとFDPの合計は過半数の332議席に達する見込みです。メルケル首相は「新政権に必要な多数を確保するという目標を達成した」と勝利宣言しました。
これに対し、左翼党は得票率を伸ばし、76議席を得ました。90年連合・緑の党は68議席となっています。
FDPは経済自由化を主張し、CDU・CSUとともに脱原発政策の見直しを掲げており、新たな連立政権では政策変更の可能性もあります。
左翼党のビスキー共同議長は27日、同党の選挙勝利集会で、「支持率2けたの社会的力を持つ党として、社会保障改悪やアフガニスタン派兵に反対を強めていく」と強調しました。
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州議会選も左翼党前進
合計12州に議席保有
【ベルリン=片岡正明】ドイツ連邦議会選挙と同時に投票が行われた北部のシュレスウィヒ・ホルシュタイン州の州議会選挙で左翼党が前進しました。
左翼党は前回比5・5ポイント増の6・0%を獲得、初めて同州議会の議席(5議席)を得ました。左翼党はこれでドイツ16州のうち12州で議席を有することになりました。
これに対し、キリスト教民主同盟(CDU)は前回比で8・7ポイント後退し31・5%、社会民主党(SPD)は13・3ポイントの大幅減で25・4%でした。
一方、同時に選挙が行われた旧東独部のブランデンブルク州では、左翼党は前回比0・8ポイント下がったものの27・2%を維持しました。
両州とも連邦政府と同じくCDUとSPDの連立政権が続いてきました。
解説
社会保障削減・アフガン派兵に批判
ドイツ連邦議会(下院)選挙戦では、経済危機の対処と社会的公正の実現、アフガニスタンからの撤退問題などが問われました。
キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)と社会民主党(SPD)との大連立政権は、2005年の発足当初、付加価値税(日本の消費税に相当)の16%から19%への引き上げや、年金受給年齢の65歳から67歳への引き上げなどを実施。本来は支持基盤であるはずの労組の強い反対でSPDが反対に回るような制度改悪を進めました。
また、アフガニスタンのドイツ軍部隊派兵では、駐留する北部地域で今年の春以来、ドイツ兵やアフガン市民の死者が増え、撤退を求める世論が過半数以上を占めました。それにもかかわらず、対テロ戦争に必要だとして、アフガニスタンへの独部隊の派兵を続けています。2党にほとんど違いはなくなり、国民から批判を受けました。
特にSPDは、労組が選挙戦で距離を置くなど、支持者離れが進みました。
CDU・CSUも自由民主党(FDP)との連立構想が明確になる中で、新政府成立後の経済自由化政策と緊縮政策が問われました。
FDPは最高税率の大幅引き下げと社会保障制度などへの支出をカットする緊縮政策をセットで提案。CDU・CSUの支持者からはこの提案に反対する声もあり、一時支持率が40%を上回っていた勢いが急速に低下しました。
この中で、社会保障削減反対・アフガニスタン派兵反対を強く訴えた左翼党が躍進したことが今回の選挙の特徴です。(ベルリン=片岡正明)