2009年9月27日(日)「しんぶん赤旗」
「核兵器のない世界」をめざして
第5回アジア政党国際会議
志位委員長の発言
カザフスタンの首都アスタナで開かれた第5回アジア政党国際会議で25日、日本共産党の志位和夫委員長がおこなった発言を紹介します。
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尊敬する議長ならびに親愛なるすべての友人のみなさん
私は、日本共産党を代表して、第5回アジア政党国際会議の開催を歓迎し、心からの祝福と連帯の気持ちを表明します。
今回で第5回を数えるこの会議には、この大陸のすべての地域から、与野党を問わず多くの政党が集い、戦争、侵略、覇権に反対し、世界とアジアの平和秩序を共同して探求する会議として発展してきました。私は、アスタナでの会議が、これまでの到達点を踏まえ、さらに前進の一ページを刻むことを強く願いつつ、「『核兵器のない世界』をめざして」というテーマで発言をいたします。
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友人のみなさん
私たち日本国民は、広島、長崎への原爆投下という言語に絶する惨害を体験し、核兵器の恐るべき残虐さと非人道性を身をもって体験してきた国民です。この会議の開催国・カザフスタンのみなさんもまた、私たちと同じ深い痛みを体験してこられました。旧ソ連によって、セミパラチンスク核実験場で、40年にわたり456回繰り返された核実験は、100万人以上の人々に放射能による被害をおよぼし、カザフの美しい自然と生態系を深く破壊し、そして私が何より胸が締めつけられることは、その悲劇的な影響が子どもたちにも及び、世代を超えて続いていることです。
カザフスタンのみなさんは、国民的なたたかいで核実験場の閉鎖をかちとり、独立後、自らの意思で核兵器を廃棄して非核の国となり、さらに中央アジア5カ国が参加する非核地帯条約をつくるうえで大きな役割を果たされました。カザフスタンのみなさんは、核を保有することで自らの「安全」を確保するという考え方を拒否し、自ら核を放棄することで安全を確保する道を選びました。私はこれは、世界とアジアの平和に貢献する、勇気ある選択だったと考えます。
私は、被爆国・日本で、核兵器廃絶を求め続けてきた一政党を代表して訴えます。日本とともに、カザフスタンほど核兵器によって苦しめられた国はないでしょう。その地でおこなわれる今回の会議において、「核兵器のない世界」をめざす私たちの共通の意思を、世界に表明しようではありませんか。
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友人のみなさん
いま世界では、核兵器廃絶をめぐって、新しい状況が生まれています。オバマ米大統領は、今年4月、プラハでの演説で、「核兵器を使用したことのある唯一の核兵器保有国として、米国は行動する道義的責任がある」とのべ、「米国は核兵器のない世界を追求することを明確に宣言する」と、核兵器廃絶を米国の国家目標とすることを、初めて公式に言明しました。私は、この演説を心から歓迎するとともに、いかにして核兵器廃絶という人類的課題を実現するかについての私たちの考えを伝え、米国大統領のイニシアチブを要請する書簡をおくりました。米国政府からは心のこもった返書が届けられ、それはアメリカが大きく変化しつつあることを実感させるものでした。
どうすれば、人類は「核兵器のない世界」に到達できるでしょうか。私が、強調したいことは、核軍縮の個々の部分的措置を前進させることと一体に、核兵器廃絶を共通の目標としてその実現のための交渉にとりくんでこそ、「核兵器のない世界」への道は開かれるということです。
いまとりくまれている、米ロ間の新しい戦略核兵器削減条約の交渉開始、包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准、兵器用核分裂物質の製造を禁止する条約(カットオフ条約)など、核軍縮の個々の部分的措置のそれぞれが、前向きの意義をもつことはいうまでもありません。とりわけ、東南アジア非核地帯条約につづく、中央アジア非核地帯条約など、世界に非核地帯を広げることが、大きな積極的意義をもつことは論をまちません。
同時に、これらの部分的措置は、核兵器廃絶という目標と一体にとりくまれてこそ、「核兵器のない世界」への道が開かれると、私たちは考えます。というのは、これまでもこれらの部分的措置にかかわる交渉はとりくまれてきましたが、なお世界には2万発以上の核兵器が存在しているという現実があるからです。核兵器廃絶という目標ぬきの部分的措置の積み重ねでは、「核兵器のない世界」に到達できないことは、戦後の核交渉の全経過が、事実をもって証明しているのではないでしょうか。
私たちは、「核兵器のない世界」を実現するためには、核兵器廃絶そのものを正面からの主題とした国際交渉を開始することが、強く求められていると考えます。この主張は、今日、国連加盟国の多数の主張ともなっています。カザフスタンの地からそのよびかけが世界に発信されるならば、核兵器廃絶への国際的努力への大きな貢献となることを、私は信じて疑わないものであります。
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友人のみなさん
核不拡散条約(NPT)の体制をめぐっても事情は同じです。私たちは、いかなる理由であれ核兵器を持つ国が増えることにはもとより反対ですが、五つの大国にだけ核保有を認め、他の国には非核保有を義務づけるというこの条約が、前例のない差別条約であることを批判してきました。
それでも国際社会がこの体制を受け入れてきたのは、条約第6条に明記されているように、核保有国が核廃絶への真剣な努力をおこなうことを約束したからにほかなりません。そして、この条約にもかかわらず、核保有国が増え続けた最大の原因は、NPTが発効して以後39年間、この約束が誠実に果たされてこなかったことにあることを、率直に指摘しなければなりません。
しかし、この問題でも、国際社会に変化が訪れています。
オバマ大統領は、4月のプラハ演説につづく、6月のカイロでの演説で、「私は、ある兵器について、それを持つ国と持たない国があることに抗議する人々の意見を理解することができます。……だからこそ私は、核兵器保有国のない世界を追求するという米国の約束を改めて強く明言したのです」とのべ、NPT体制の不平等性を抗議することへの理解と、核兵器廃絶への意思を語りました。
それに続いて、昨日(24日)、国連安保理核軍縮特別会合において、米国政府が提出した決議案にもとづいた議論がかわされ、「核兵器のない世界のための条件を築く」ことが宣言され、NPT第6条に従って、核軍備撤廃のための交渉を誠実におこなうことが決議されました。これは前進の一歩であり、歓迎するものです。
この10年間のNPT再検討会議の歴史では、2000年の再検討会議で「自国核兵器の完全廃絶を達成するという全核保有国の明確な約束」が合意されたにもかかわらず、この合意が2005年の再検討会議で否定されたという経過があります。この逆流を克服して、前向きの合意をかちとることが急務となっています。すなわち、来年、2010年5月におこなわれるNPT再検討会議において、核保有国によって、核兵器廃絶を達成する「明確な約束」を再確認させ、その接近と実現への第一歩を踏み出すことは、世界政治のさしせまった重要課題となっています。
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尊敬する議長ならびに親愛なる友人のみなさん
以上をふまえて、私は、明日、採択されるアスタナ宣言に、つぎの三つの内容を盛り込むことを提案するものです。
第一は、「核兵器のない世界」をめざす私たちの共通の意思を、世界に表明することです。
第二は、核兵器廃絶を主題とした国際交渉を開始することを、世界に呼びかけることです。
第三は、核保有国に対して、来年のNPT再検討会議で、核兵器廃絶を達成する「明確な約束」を再確認することを求め、その接近と実現への第一歩を踏み出すことです。
核兵器が使われないこと、核爆発による犠牲者を二度と出さないことを保障する唯一の方法は「核兵器のない世界」をつくることにあります。私は、核実験による犠牲に苦しみ抜いた痛苦の経験から、みずから核兵器の放棄、非核地帯の創設という勇気ある道にすすんだ、この地、カザフスタンでおこなわれるこの歴史的会議で、これらのメッセージが世界に発信されることを強く願ってやみません。
そしてまた私は、被爆国・日本を、名実ともに「非核の日本」とし、核兵器廃絶のイニシアチブを日本が発揮することができるよう、力を尽くす決意をのべて、発言といたします。
ご清聴ありがとうございました。