2009年9月25日(金)「しんぶん赤旗」
主張
障害者自立支援法
応益負担廃止は待ったなしだ
障害者が生きていくうえで不可欠な支援を「利益」ととらえ、施設やサービスを利用するごとに原則1割の「応益負担」を押し付けてきた障害者自立支援法が、ようやく廃止に向け動き出しています。障害者とその家族の運動が大きく広がるなか、長妻昭厚労相が廃止の意向を表明したものです。
「応益負担」を原則にした障害者自立支援法は、きっぱり廃止すべきです。障害者の権利を保障する、新しい総合的な障害者福祉の法制度をつくるべきです。
自立を妨げ、破壊する
障害者自立支援法はいまから4年近く前、自公政権が「構造改革」路線にもとづき社会保障費を削減するために強行したものです。法の根幹である原則1割の「応益負担」は、「障害が重い人ほど負担も重くなる」根本的な問題点を持っています。
日本共産党国会議員団が3年連続実施してきた影響調査でも、負担増で利用を抑制・断念した障害者が205人(在籍者比3・4%)にのぼり、「行事への参加、外出等が激減した」などの深刻な実態が明らかになっています(昨年8月調査分)。まさに「自立」を支援するどころか破壊する悪法です。
障害者の場合、多くの人が年金収入だけで、通所施設などで働いても工賃はわずかでしかありません。それなのに原則1割の負担が押し付けられ、給食費なども負担しなければならないとなれば、働く意欲を奪われ、暮らしが圧迫されるのは目に見えています。
自立支援法によって報酬が大幅に削減され、施設や事業所の経営も危機的です。多くの施設・事業所で職員の労働条件の切り下げを余儀なくされ、それがまたサービスの後退につながりかねないという事態をもたらしているのです。
もともと障害を「自己責任」とする立場で障害者が生きていくうえで必要不可欠な支援を「利益」とみなす「応益負担」原則は、国民の生存権を明記し、社会保障への国の責任を定めた憲法25条に反しています。昨年発効した国連の「障害者権利条約」(日本は未批准)も、障害者に対し同年齢の市民と同じ権利を差別なく保障することを定めており、自立支援法はこの趣旨をも踏みにじります。
障害者とその家族、国民が求め続けてきたのは、障害者自立支援法を廃止し、人権侵害の「応益負担」制度そのものをやめるとともに、新しい総合的な障害者福祉の制度をつくることです。
自公政権は障害者団体などの運動に押され「負担軽減」の措置をとってきましたが、法律に定められた「3年後の見直し」でも、根幹となる「応益負担」の原則そのものは変えませんでした。新しい政権が実現したいまこそ、障害者の願いを実現するチャンスです。
総合的な福祉制度を
障害者と家族、施設や事業所の関係者らが参加した「きょうされん」(旧共同作業所全国連絡会)が先日開いた全国大会でも、障害者自立支援法の廃止の動きを歓迎し、新しい制度を一日も早くつくるよう求める声が相次ぎました。
日本共産党は、障害者自立支援法を廃止するとともに、憲法と「障害者権利条約」を踏まえ、すべての障害者の権利を保障する総合的な福祉法制度を提案しています。
今こそ障害者の生活と権利を守る世論と運動を高めるときです。
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