文字の大きさ : [] [] []

2009年9月21日(月)「しんぶん赤旗」

ゆうPRESS

差別・偏見 考えた

ハンセン病 療養所で交流会

東京 国立多磨全生園


 国により強制的に隔離され、差別と偏見に苦しめられたハンセン病の元患者が暮らす国立療養所、多磨全生園(ぜんしょうえん)=東京都東村山市=で12、13の両日、「ハンセン病を知りたい青年交流会」(ハンセン病市民学会青年・学生部主催)が開かれました。元患者の話や、同世代との交流を通し青年は何を感じたでしょう―。(野村説)


図

 ハンセン病は、らい菌による感染症で感染力はきわめて弱く、感染して発症してもプロミンなどの特効薬が開発されてからは「治る病気」になりました。それにもかかわらず、政府は1907年以降強制隔離政策をとり、戦後も「らい予防法」(1953年制定)が廃止される1996年まで、90年にわたって断種、強制作業など生活全般で人権侵害を続けてきました。

 青年交流会は2005年から始まり5回目、今回は18歳から36歳までの男女19人が参加しました。

病院?収容所?

 1909年につくられた同園には現在、約36万平方メートルの敷地に294人がくらしています。

 交流会の初日には、フィールドワークが行われました。元患者で、園内にあるハンセン病図書館元館長(80)らとともに、患者を閉じこめた監房跡や、故郷に帰ることもできずに亡くなった人たちが眠る納骨堂などを見てまわりました。

 参加者から、「当時の生活の様子を教えてください」と、質問が出ました。元患者は「戦争が終わるまで、園内は自給自足でした。園内での労働は熱があっても休むことができず、病院に来たのか、収容所に来たのか分からなかった」と答えました。

学校追い出され

 2日目は同園の退所者が講演しました。

 28歳まで16年間療養所で生活した68歳の男性が話しました。男性は「今でもおおやけに自分の名前を出してハンセン病のことを話すのは怖い。他人との付き合いを恐れ、『昔、何やってた』と聞かれるのが嫌で、親しくなる前に距離をとってしまう」と語りました。

 31歳までの15年間を療養所ですごした男性(73)は、「左手の指が曲がり始めたのが12歳。担任の先生に竹の棒でつつかれ、『おまえは悪い病気だから学校にはいられない。帰れ』と言われた」と、差別と偏見のなかで耐えた少年時代を語りました。「最初は学校帰りの友だちとも遊んだが、だんだん症状がでてきて家に引きこもるようになった。死のうと農薬のビンを持って山に行ったこともあったが、今は生きていて良かったと思う」と目を潤ませました。

 交流会実行委員のMさん(26)は「ハンセン病はなにか近づきにくいというイメージもありますが、ハンセン病から学べることはたくさんあります。ハンセン病を理解しなければ、また次の偏見や差別につながります。学ぶことによって1人が1人に伝え、輪を作っていきたい」と語りました。


参加したみんなの思い

 交流会に参加した人たちに聞きました。

問題を風化させない

 日本人と結婚したアメリカ人の田中キャサリンさん(31)は、米国のシカゴ大学でハンセン病文学について論文を書いています。「アメリカではハンセン病問題は、もう終わったと思っている人もいます。でも知識不足からくる偏見などはまだあり、今後も取り上げていかなければなりません。問題を風化させないためにも、こういう交流会は非常に重要だと思う」と感想を語りました。

人を差別しない子に

 早稲田大学3年生で文化構想学部に所属する女性は、ハンセン病は手足が不自由になったり、顔にケロイド状の後遺症が残ったりして「かわいそう」という印象しかありませんでした。女性は「強制的に隔離され、収容所と同様の生活が患者に強いられていたことなどは知りませんでした。写真や資料をもとにリポートをつくるのと違い、実地の見聞は新鮮で有意義でした。将来、結婚して子どもを持ったときに人を差別しない子に育てたい」と語りました。

ハンセン病伝えたい

 「香川県の大島にある青松園はここよりも社会から閉ざされていて、元患者は『スタッフとしか話せる人がいない』と言っていました」。こう語るのは、香川県出身で、中央大学で法律を学ぶ男性(18)です。

 男性は「交流会に参加し横のつながりを持てたことが今回の一番の収穫。友だちの中にはハンセン病を知らない人もいるので、自分の言葉でハンセン病のことを伝えていきたい」と話しました。


お悩みHunter

試用期間に「クビ」、いいの?

  今年8月、20人ほどの会社に営業社員で採用。社長から「6カ月間は試用期間。営業成績の悪い社員は即日辞めてもらう」と言われました。実際、「明日からこなくてよい」と、その月の働いた日数分の給料だけを渡されて辞めさせられた社員も。試用期間って会社に都合のいい制度なのですか。(25歳、男性)

「合理的理由」ないなら違法

  試用期間中でも労働契約は成立していますから、労働者を合理的理由なく解雇することはできません。

 試用期間中の労働契約は、採用決定時に労働者の資質・性格・能力などの適格性に関する資料を十分収集することができないため、試用期間中の勤務状態の観察などにより、会社の職務についての適格性がないと判断された場合に本採用を拒否できる「解約権」付き労働契約と解されています。

 そしてこの「解約権」は、その趣旨・目的に照らして客観的に合理的な理由が存し、社会通念上是認されうる場合に行使できるとされています。

 勤務成績不良の事例で、業務の習得に熱意がなく、上司の指示に従わず協調性に乏しいことを理由とする解雇を有効とした判例がある一方、「試用期間中の者に若干責められるべき事実があったとしても、会社には教育的見地から合理的範囲内でその矯正・教育に尽くすべき義務がある」として解雇を無効とした判例もあります。

 キャリアを買われて採用されたわけではない新人について、営業成績が悪いという理由だけで教育指導の機会もなく短期間で解雇するのは、違法である可能性が大きいと思います。

 また、試用開始から14日を超えて働いていれば、労動者は解雇予告手当を請求できます。

 辞めさせられた同僚に、行政や組合の相談窓口に行くよう勧めてはいかがでしょう。

弁護士 岸 松江さん

 東京弁護士会所属、東京法律事務所所属。日本弁護士連合会両性の平等に関する委員会委員。好きな言葉は「真実の力」。


もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp