2009年9月15日(火)「しんぶん赤旗」
主張
イチロー選手の快挙
継続こそが最大の力になった
アメリカ大リーグのシアトル・マリナーズで活躍するイチロー(鈴木一朗)選手が、9年連続の年間200安打を達成しました。1年間に200本以上の安打を打ち続ける記録を9年間も続けたのですから、大変なことです。
イチロー選手の記録は、アメリカ大リーグでも史上初となるもので、100年以上も前の記録を更新しました。文字通り快挙であり、野球ファンとともに、拍手を送ります。
試合に出て打ち続ける
日本のプロ野球で活躍し、2001年から大リーグで活動しているイチロー選手は、これまでにも日本とアメリカの双方で年間の最多安打を記録し、日本選手の通算安打でもトップに立つなど数々の記録を更新してきました。つい先日も大リーグ通算の2000本安打を、日本人選手としてははじめて達成したばかりです。
200本目の安打は、イチロー選手らしい、俊足を生かした内野安打でした。イチロー選手が多くの記録を更新し続けることができているのは、どんな球でも打ち分け、足の速さも生かして安打にしていく、こうした優れた技術のたまものです。
同時にイチロー選手の記録は、ほとんど休まず試合に出続け、記録に挑戦していく、「継続力」が力になっています。今シーズンも開幕直後と8月に欠場しましたが、短期間で復活しました。
年間162試合の大リーグで毎年200本以上の安打を打ち続けるには、ほとんどの試合に出場することが不可欠です。35歳を迎えたイチロー選手が、欠場を少なくするため、体調管理に人一倍気を配っていることはよく知られています。
現役時代「鉄人」と呼ばれた野球評論家の衣笠祥雄さんも「しんぶん赤旗」日曜版の13日号で、「体の手入れを片時も怠らずに、1日1日、1年1年にベストをつくす積み重ねにチャレンジしてきた結果」とたたえています。
こうした継続力と、「いつも、今の自分を超えたいと思ってやっている」という限りない向上心で安打を続けるイチロー選手の努力が生んだ記録―人間の可能性に挑戦するその努力が、野球の本場といわれるアメリカ大リーグで、チームの垣根を越えたファンを広げていることも、特筆すべきです。
今回イチロー選手の9年連続200安打が約100年ぶりの大記録となったのも、伝統的に大リーグでは、コツコツと安打を重ねるより、ホームランなど一発長打を狙う傾向が強かったからといわれます。大リーグの記録を塗り替え続けるイチロー選手の活躍は、こうした野球観をも変える可能性に満ちています。これもまた、イチロー選手が継続して活躍していることの成果といえるでしょう。
さらなる挑戦で夢を
イチロー選手が自らの技術を磨き、記録に挑戦するだけでなく、野球ファンに対し深い思いを示してきたこともよく知られています。「勝つことだけでなく、プロとしてどういうプレーを見せるのか」―イチロー選手のことばです。
イチロー選手にはこれからも個性と能力を発揮して挑戦してほしい、そして多くのファンの夢を広げてほしい。イチロー選手の歴史的記録をたたえ、これからも活躍することを心から期待します。