2009年9月11日(金)「しんぶん赤旗」
沖縄・辺野古 米軍機デモ飛行
住民抗議「アリバイ工作だ」
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沖縄県名護市辺野古への米軍新基地建設に伴い、防衛省沖縄防衛局は10日、建設予定地周辺海域の騒音を測定するため、CH53ヘリコプター2機による「現地試験飛行(デモフライト)」を実施しました。
同局報道室によると、デモフライトは県、名護市、宜野座村の要請に基づくもので、現在手続きが進行中の「環境影響評価(アセスメント)には位置付けない」としています。
デモフライトは、アセス準備書に記載された飛行経路に沿ってV字形滑走路の離着陸を想定した飛行を南側と北側から実施。その後、準備書で追加されたヘリパッド予定地4カ所で空中停止飛行を行いました。
新基地建設反対の座り込みテントには、市民団体や住民など約50人が詰めかけました。日本共産党から玉城ノブ子、前田政明、渡久地修、西銘純恵の各県議も参加しました。
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午前11時50分すぎにヘリ2機がキャンプ・シュワブ沖上空で旋回を開始すると住民らは「通常の半分の騒音。まやかしだ」「こんなデモフライトにだまされてはいけない」などと怒りの声を次々と上げました。
ヘリ基地反対協議会の安次富浩代表委員は「デモフライトは欺まん満載のアリバイ工作だ。アセスに記載しないなら、何のためにやるのか」と怒りをあらわにしました。
前田県議は「新政権のなかで沖縄県民が団結し、『新基地やめよ』の県民ぐるみの運動を起こしていきたい」と話していました。
ヘリ基地反対協抗議声明を発表
沖縄防衛局が実施した10日のデモフライトにたいし、「ヘリ基地反対協議会」は同日、抗議声明を発表しました。
声明は、今回のデモフライトを「環境アセス法とは関係ない」とする沖縄防衛局の姿勢を「準備書の不備を覆い隠そうとする腹黒い手段であり、環境アセス法を否定するもの」と厳しく批判。デモフライトを2時間に限定した点について、「1年間にわたる気象条件、早朝、午前、午後及び夜間と24時間に従って行われるものでなければ、客観的かつ科学的調査とは言えない」と指摘しています。
さらに宜野座村松田区住民が要望した施設間移動や、配備予定の欠陥機MV22オスプレイを想定したデモフライトが行われていない点についても批判しています。
解説
新基地建設の撤回を
新基地建設にむけた米軍ヘリによる「現地試験飛行(デモフライト)」は矛盾に満ちたものです。環境影響評価(アセス)法を順守する気があれば沖縄防衛局は環境影響評価(アセスメント)で実施すべきものだからです。
試験飛行を「環境アセスに位置づけない」という沖縄防衛局の説明にその意図が透けて見えます。仮に高レベルの騒音が測定されても、「供用段階で米軍に配慮するよう求める」などの言葉ですます立場です。日本政府が過去、「運用」問題で米軍に迫ったことはありません。
県や名護市は、新基地建設容認を前提にした実施要求です。「沿岸案の変更はない」としてきた米軍は、総選挙での新基地推進勢力の敗北、新政権による「県外移設」議論を警戒、「(50メートル程度なら)日米合意の範囲内」と県、名護市との着地点を示しています。
一方で、予定地周辺の住民にとって、新基地建設による米軍機の騒音被害は切実です。沖縄防衛局はV字形滑走路で「民間の上空は飛ばない」としてきました。「信用できない」とする宜野座村も村内での試験飛行を要求。沖縄防衛局は「県、名護市と調整の上、米軍に(宜野座村での試験飛行は)求めない」としました。
試験飛行が日本政府と県、名護市の3者による新基地予定地の「微調整」と並ぶ「最終ステージの政治ショー」といわれるゆえんです。
9日に予定した試験飛行を「機体の整備が間に合わない」と直前に中止した米軍の無責任ぶりも同様です。
危険な普天間基地の即時返還、基地の固定・強化につながる新基地建設の撤回以外に県民の安全を守ることはできません。(山本眞直)
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