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2009年9月8日(火)「しんぶん赤旗」

主張

遺骨返還問題

植民地支配の誤り認めてこそ


 戦後64年もたつというのに、日本が戦時下に朝鮮半島から強制連行し強制労働させるなかで犠牲になった韓国・朝鮮民間人の遺骨は、政府レベルでいまだ一体も返還されていないことに批判の声が大きくなっています。

 政府が2005年に内外の声に押されてようやくとりかかった遺骨実態調査も、進んでいるとはいえません。強制連行したうえに強制労働を押し付けた政府責任を直視し、遺骨返還問題の早期解決のために政府は全力をあげる必要があります。

真剣さに欠ける政府調査

 日本に労働者として強制連行された韓国・朝鮮人および軍人・軍属として動員された人の数は100万人以上です。朝鮮の植民地支配のための統治機関「朝鮮総督府」は151万人と試算できる統計資料をつくっています。日本にさまざまな口実でつれてきた人々がどうなったのかの全容を明らかにすることは政府の責任です。

 軍人・軍属の遺骨については一定程度調査が進み、遺骨もわずかとはいえ韓国に返還されていますが、民間人については遺骨調査の規模も内容もきわめて貧弱です。

 政府は4年前に宗教団体、地方公共団体、125の民間企業に対して遺骨に関する調査依頼を行いました。現在までに、それぞれ1172体、1194体、147体、重複分を除いて合計2346体の情報が寄せられています。これはぼう大な強制労働犠牲者のごく一部にすぎません。

 韓国政府は日本による強制連行の被害補償を行うために約20万人の申請を受け付け、審査にあたっています。日本政府の調査で明らかになった遺骨の数は韓国政府への申請数のわずか1%です。日本が十分な結果をださなければ、韓国に住む家族の多くは補償も受けることができません。日本政府の責任は重大です。

 とくに問題なのは政府調査の規模と範囲が狭すぎることです。

 戦時下で韓国・朝鮮人の強制労働に関与した企業は、福岡県の麻生鉱業をはじめ数千社だといわれています。にもかかわらず政府が遺骨調査の対象にしたのは125社にすぎません。名称変更や合併などの事情があるにせよ、これはあまりに少なすぎます。

 地方公共団体への調査も全国規模ではなく、10県にとどまっています。外務省は非公式にはこれを超えるとはいっていますが、それでも地方公共団体の半分でしかありません。1946年に厚生省(当時)が実施したのも16府県のみです。北海道や東京など30都道県では未実施です。全体として十分な調査でないことは明白です。

 遺骨調査・返還は日韓の外交協議で約束したものです。そのためには調査対象を狭くするのではなく、全国規模に広げ、企業の数も増やすなどして、調査を実効あるものにすることが重要です。

言葉でなく行動で示せ

 日韓協議を機に政府が遺骨問題へのとりくみをはじめたとはいえ、いまもって積極的に全容をあきらかにしないのは、武力を背景に朝鮮に押し付けた日韓併合条約を正当化する立場が大もとにあるからです。遺骨調査・返還問題を解決するには、植民地支配への真摯(しんし)な反省が不可欠です。

 植民地支配の誤りを認め、行動で償うことが重要です。



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