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2009年9月7日(月)「しんぶん赤旗」

明日への視点

核兵器廃絶

政治の道義と核密約廃棄

友寄英隆


 オバマ米大統領のプラハ演説(4月5日)は、核兵器を使用した米国が核廃絶の先頭に立って行動する「道義的責任」(moral responsibility)を明言したことで、世界と日本の国民に大きな感銘を与えました。

 日本共産党の志位和夫委員長は、オバマ大統領に書簡を送り、在日米軍基地の問題、自衛隊の海外派兵の問題などの日米関係のあり方では意見の相違があるが、核廃絶を「国家目標」と明言したオバマ演説を心から歓迎すると述べました。

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 ところで、プラハ演説の全文を読むと、オバマ大統領は、もう一カ所、モラルという表現を使っています。核兵器使用の道義的責任について述べる前に、チェコのビロード革命(1989年)に関連して、こう述べています。

 「道義あるリーダーシップは、いかなる武器よりも強力である」(Moral leadership is more powerful than any weapon)

 米大使館のホームページでは「精神的なリーダーシップ」と訳してありますが、ここはあえて「道義ある」と訳すほうがオバマ大統領の意が伝わるように思います。「道義あるリーダーシップ」こそが、「いかなる武器よりも強力である」と強調することは、演説の後段で出てくる「道義的責任」の伏線になると読めるからです。

 今回の総選挙では、大きな争点の一つに、核廃絶にどう取り組むかの課題が浮上しました。

 広島、長崎に原爆が投下された8月に行われた初めての総選挙であったこと。オバマ演説を契機に核廃絶をめざす運動が世界中で盛り上がるなかでの総選挙になったこと。日本政府が核廃絶へむけて国際政治のなかでどうリーダーシップを果たすかが、鋭く問われる総選挙となったこと。

 とくに日本の政治の問題としては、核兵器を積んだ米軍航空機・艦船の日本への飛来・立ち入りを認めた日米核密約文書(1960年)の存在が、歴代外務事務次官の相つぐ証言で明らかになるなかでの総選挙でした。

 自民党政府は、アメリカとの秘密の従属関係を隠すために、国会と国民をだましつづけ、米政府が密約文書を公開したあとも、「そんな文書は存在しない」などと強弁してきました。このような国民をあざむき、あなどる態度は、もはや最低限のモラルさえ失った政治として、国民が自民党に愛想を尽かす要因の一つになったといえるでしょう。

 日本共産党は、こうした自公政府を徹底的に批判し、「核密約」を公開・廃棄し、非核三原則に実効性を持たせること、アメリカの「核の傘」から離脱して名実ともに「非核の日本」を築いてこそ、核兵器廃絶のイニシアチブを発揮できると主張しました。

 民主党の鳩山由紀夫代表は、「政権をとってこの問題に関してはきちんと調査する。その調査結果を国民に公表する」(8月22日の6党党首討論)と言明しました。また同代表は、「核を持ち込ませないよう(米国と交渉し)、OKさせるまで頑張る。オバマ大統領を説得する」(8月23日、テレビ朝日)とも述べました。

 核密約廃棄と非核三原則の実効性は、新政権が取り組まねばならない課題であり、その実行を見守る必要があります。

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 ところで、道義(モラル)と政治については、憲法の前文にも次の一節があることを想起します。

 「…政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務である」

 ここでは、自国の主権を維持し、他国と対等の友好関係を築くことと「政治道徳の法則」(laws of political morality)が深く結びついていると述べています。

 戦後日本で一貫して対米従属を続けて「自主・自立の立場」を投げ捨ててきた自民党政治は、憲法の「政治道徳の法則」からも完全に逸脱し、踏みにじるものでした。

 自公政権に代わる新政権には、外交においても、内政においても、憲法で規定した「政治道徳の法則」にのっとった政治を求めたいものです。(論説委員)



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