2009年9月6日(日)「しんぶん赤旗」
自公政権下の12年度医療・介護改悪計画
安上がり・低サービス
新政権 どう対応
2012年度に医療と介護の両制度を同時に改定するための検討作業が厚生労働省内で始まっています。自公政権時代の8月初旬に「医療・介護改革調整会議」が同省内に発足しました。ただ、同会議は厚労相の私的会議の位置づけ。同省も「大臣が代わり、やめろとなればやめることになる」と説明しており、新政権の対応が問われます。
「調整会議」(8月11日発足)の議長は水田邦雄厚労事務次官。構成員には医政・保険・老健3局の局長が含まれます。大きな制度変更を行う意向を同省幹部が講演や雑誌で繰り返し表明するなど、省をあげての取り組みとなっています。
12年は医療機関に支払われる診療報酬と介護事業所に支払われる介護報酬が同時に改定される6年に1度の年です。同省はこの機会に医療法・健保法・国保法・介護保険法など総合的な法改定をめざします。具体的な狙いは、同会議で参考資料とされた「地域包括ケア研究会」の報告書(5月発表)から浮かび上がります。
報告書は、25年には「団塊の世代」が75歳以上に達するとして、「現行の給付水準を維持すれば、介護費用が爆発的に増加し、負担が急激に増大する…。逆に介護費用を一定程度に維持しようとすれば、給付水準の大幅な削減を行わなければならない」と強調。以下のようなサービス切り捨てのメニューを検討しています。
▽介護施設に医師・看護師を置かず訪問診療・看護を利用する▽在宅サービスは事業所に一定額しか入らない包括払いにする▽調理などの生活援助・福祉用具の一部・低所得者への施設居住費と食費の給付などを介護保険から外す▽生活援助はボランティア任せにする―。“施設でも在宅でも同水準の包括ケアが受けられる”との建前で両方のサービスを引き下げるものです。
同会議には、昨年政府が開いた「社会保障国民会議」の報告書や資料も提出されました。医療分野について▽平均在院日数の短縮▽急性期医療全体での早期退院の実現と在宅での療養支援▽過剰な病床の「適正化」―などの記述があります。
全体として、医療から介護へ、施設から在宅へ、介護保険からボランティアへと、“安上がり・低サービス”の方へ患者と要介護者を追いやる計画です。実行に移されれば、ますます大量の医療・介護難民が生まれることは必至です。
厚労省計画に民主党公約は
社会保障切り捨ての「構造改革」に国民の怒りが爆発するもとで、民主党は2200億円の社会保障費削減方針の撤廃や療養病床削減計画の凍結を総選挙で公約しました。社民党や国民新党との政策協議でも、「後期高齢者医療制度は廃止し、医療制度に対する国民の信頼を高め、国民皆保険を守る」「介護労働者の待遇改善で人材を確保し、安心できる介護制度を確立する」という項目が検討されています。
一方で、民主党の政策集には「不要あるいは過度な社会保障の給付を回避する」などとも書かれています。
医療・介護制度を一体で改悪しようという厚労省あげての取り組みにどう対処するのか。民主党は06年に合計44万の病床削減という自公以上の大幅削減を提唱していたこともあるだけに、新政権の動向を注視する必要があります。