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2009年9月5日(土)「しんぶん赤旗」

主張

最低賃金

不況だからこそ大幅アップを


 今年度の地域別最低賃金の改定答申は、新潟と岐阜を除く45の都道府県で時給1〜25円の引き上げとなりました。

 中央最低賃金審議会が7月にまとめた答申では、景気悪化を理由に35県で「現行水準維持」、12都道府県に限って引き上げることとしました。これを受けた各地方最低賃金審議会は、「現行水準維持」とされた35県のうち33県で引き上げを答申しました。中央審議会が引き上げを答申した12都道府県でも、そのうち8道府県で引き上げ額を上積みしています。

健康維持も難しい

 この結果は、まともに生活できる賃金を求める職場や地域の運動と世論の広がりが、現実を前に動かしていることを示しています。

 しかし、最低賃金が地方審議会の答申通りに改定されたとしても時給の平均引き上げ額は10円で、わずか1・4%の増加にすぎません。最低賃金の水準は、最も高い東京で時給791円、低いところは629円にとどまります。これでは年間1800時間働いたとしても税込みで年収142万〜113万円、手取り月収は最高でも10万円そこそこです。こんな収入ではまともな生活はできません。

 全国労働組合総連合(全労連)の「最低賃金生活体験」でも、徹底して切り詰めた生活で体調を崩すなど、最賃では健康維持も難しいことがはっきりしています。

 昨年施行された改正最低賃金法は、最賃を決める基準の一つの「生計費」にかかわって、「健康で文化的な最低限度の生活」という憲法25条の条文を書き込みました。今の最低賃金の水準が、この条文に違反していることは明らかです。最低賃金を大幅に引き上げることは憲法の要請であり、国民の命を守る切実な問題です。

 財界・大企業は不況を口実にして、最低賃金の大幅引き上げに反対しています。

 大企業が過去最高益を更新していたときにも、年収200万円以下の「ワーキングプア」と呼ばれる「働かせ方」が増え続け、いまや1千万人を超えています。貧困のまん延が国民の購買力を大きく低下させて内需を冷やし、経済危機をいっそう深刻にしていることは明らかです。不況を打開し、日本経済を立て直すためにも、最低賃金を大幅に引き上げて、貧困の拡大に歯止めをかけることが不可欠です。

 バブル崩壊に苦しむアメリカは7月、連邦最賃を11%引き上げて時給7・25ドル(購買力平価換算で972円)としました。ヒルダ・ソリス労働長官は「正しく重要な一歩であり、不況に苦しむ労働者の実生活を改善する」とのべています。米誌『ビジネス・ウィーク』は、最賃引き上げは中小企業にとってむしろプラスであり、政府は財政赤字を拡大せずに個人消費を増やせるという、アイリーン・アッペルバウム・ラトガース大学教授の発言を紹介しています。

少なくとも千円以上に

 働いても働いてもまともな暮らしができない「働かせ方」を、公然と認めるような社会であっていいはずがありません。

 労働者派遣法の抜本改正などで「正社員が当たり前」の社会へ転換するとともに、中小・零細企業への必要な支援も講じながら最低賃金を全国一律で、少なくとも時給千円以上に引き上げることは緊急の課題です。



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