2009年9月4日(金)「しんぶん赤旗」
この願い新国会で
お金がなくて学べないのはおかしい
高校授業料 すぐ無償に
「学ぶことは社会をよくしていくことにつながるのに、お金がなくて学べないのはおかしい。いますぐにでも無償にしてほしい」―。埼玉県の定時制高校3年生、川辺愛さん=仮名=(17)は話します。7月に埼玉県内で開かれた、「お金がないと学校に行けないの?」首都圏高校生集会の実行委員として、2092人の全日制、定時制、通信制の高校生からアンケートを集めてきました。
調査では、高校生の約8%が「高校の学費が高く高校に通い続けられるか不安」と感じています。「アルバイトして授業料や経費などを支払う」高校生は約31%います。
「学費のことで家族に迷惑をかけて申し訳ない」と考えている高校生が26%と4分の1に上りました。
「実行委員会にかかわるまで、学校に行くことにお金がかかるのは当然だと思っていて友達と話すこともありませんでした。聞いてみると、週6のバイトで家族を養っている人、進学の夢をあきらめ落ちこんでいる人、お金がないのは自分のせいと自分を責める人がたくさんいました」
川辺さん自身も高校に通いながら、工場でアルバイトをし、アパート代の3万円、授業料と給食費、修学旅行代で1万2000円、ほかに定期代や電話代、食費を自分でまかなっています。手取りは10万円ぐらいです。家業の手伝いで腰を痛め、通院が必要ですが、医療費が払えず通院していません。
両親は、リサイクルショップを営んでいますが、経営は苦しく、アパートを引き払い、店の一角に住んでいます。両親に「お金をください」とはいえません。
日本共産党は総選挙政策で「公立高校の授業料を無償化」「私立も『授業料直接助成制度』(入学金等も対象とする)を創設し、年収500万円未満の世帯は全額助成、800万円未満の世帯は半額助成にするなど、無償化をめざして負担を軽減」することを掲げています。
政権を担うことになる民主党も「公立高校生のいる世帯に対し、授業料相当額を助成し、実質的に授業料を無料とする」「私立高校生のいる世帯に対し、年額12万円(低所得世帯は24万円)の助成を行う」としています。社民党、国民新党も高校授業料の無償化を公約しています。
同集会世話人で定時制高校教員の鈴木敏則さんは「当選した衆院議員全員に、高校生のアピール(別項)を送付し、高校授業料無償化の実現をせまっていきたい。『自分だけが苦しいんじゃない』と立ち上がった高校生の願いを父母とも共同した運動で必ず実現させたい」と話します。
川辺さんはいいます。「国会議員は真剣に私たちのことを考えて、授業料を無償にしてほしい。私たちも、少しでも学べる人が増えるようにがんばります」
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※公立は入学金・授業料のほかPTA・生徒会費、制服や体操着、教科書代などを含む(日本高等学校教職員組合の調査)。私立は入学金・授業料・施設設備費の合計(文部科学省の調査)
高校生集会のアピール要旨
この10年間で、経済的格差や貧困が広がりました。この中で、私たち高校生は「エリをつかまれて学校からつまみだされる」息苦しさを背負って、毎日、学校に通い学校生活を送っています。
10年前には、定時制生徒の授業料減免者が5・9%でした。07年には、授業料減免者が19・7%と約3・3倍に増大しました。しかし、08年には授業料減免基準が厳しくなり、授業料を払えず、学校に通えない高校生が増大しています。私立高校では、家庭の事情で転学や退学を余儀なくされる友人がいます。今まで、定時制通信制生徒の経済的精神的支えとなっていた、夜食費補助や教科書補助制度も打ち切られています。
先進国のほとんどが、高校・大学の授業料は無償なのに、日本は有料です。また奨学金や修学奨励金制度も、基準が厳しく卒業できない場合の返還する利率も高く、返却できるか不安を抱かせる制度になっています。そのため、多くの高校生が利用できない状況にあります。
経済的な事情で、修学の機会が失われることがあってよいのでしょうか。修学の機会が失われることは、私たちの就職や進学に大きく影響します。それは、経済的格差が引き継がれていくことにもなりかねません。いますぐにして欲しいことは、つぎの事です。
(1)授業料の無償化。当面、授業料減免基準の引き下げや、私学助成補助の増額(2)奨学金や修学奨励費の受給基準の引き下げ(3)定通制の給食費補助の復活と給食完全無料化(4)教科書を含め、教育諸経費の無料化(以下略)
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