2009年9月2日(水)「しんぶん赤旗」
NHK討論スペシャル
市田書記局長の発言
日本共産党の市田忠義書記局長は8月31日のNHK討論スペシャル「“政権選択”に政治はどう応えるか」に出席し、総選挙結果や新政権発足後の政治のあり方などについて各党幹部と討論しました。
司会の影山日出夫NHK解説委員から、民主党が308議席を獲得するなど「圧勝」したことは「大津波だったか」と問われた市田氏は、次のように答えました。
自公政治への怒りの風 政治の前向き変化歓迎
市田 自公政権が暮らし、雇用、社会保障を破壊してきたなかで、「自公政権ノー」の大きな風が起こった。これは主権者、国民の暮らしをよくしたい、社会保障をよくしてほしいという怒りが「自公政治ノー」の風をつくりました。この結果は日本の政治の前向きな大きな一歩として、大変歓迎すべき事態だと思います。
わが党は、現有の9議席を維持し、比例で得票も増やすことができました。「二大政党による政権選択」という流れが―これは逆風ではなかったわけですが―やはり圧力として働いた。そのなかで9議席を維持できたのは、善戦、健闘できたと思っています。
大企業・軍事同盟中心 二つの政治悪にメスを
続いて、与党が大敗した原因をめぐり、小泉「構造改革」など破たんした自公政治の評価が議論になりました。
市田 自公政権が大敗したと同時に、根底には自民党政治そのものの崩壊過程だというふうにみるべきだと思っています。財界・大企業中心、日米軍事同盟絶対というのが、いまの自民党政治の二つの政治悪だと考えています。
政権が代わっても、この政治悪にメスを入れられるかどうかが問われている。国民はそういう政治に怒っていたわけです。たとえば使い捨て労働がこれほどまん延している国はありません。ヨーロッパでも派遣労働者はいますが、だいたい働いている人の1割ぐらいなのに、日本では3人に1人です。
社会保障費も2200億円も毎年削られてきた。これも、やはり「経済財政諮問会議」で日本経団連の代表の要求に基づいてやられた。雇用の破壊も日経連の「新時代の『日本的経営』」という提言が背景にあったわけです。
消費税増税の話も、やはり経団連が2000年代の初めにそういう提言をしたものです。“一握りの大企業さえもうかれば、あとは野となれ山となれ、そこさえうまくいけば全体も潤う”という考えが破たんしたのが、今日の現実です。そこにメスを入れないとダメです。
民主党が大勝したが、国民の思いは自公政権のそこを変えてほしいというのが根本にあるんではないか。
派遣法改正には賛成し日米FTAは反対する
政権交代後の連立政権協議とともに、日本共産党と新政権とのあいだの「距離」が話題になりました。市田氏は次のように答えました。
市田 (民主党と)政権をともにするという点では、憲法や消費税などの国政の基本問題で立場が違いますから、その条件はありません。したがってわれわれは、建設的野党の立場を貫きます。そういう点では、いいものには賛成し協力する。
これも、ただ出されてくるものを待っているだけではなく、国民の要求に基づく政策を積極的に新しい政権に提起して、国会でも大いに討論し、いいものをつくり上げていきます。たとえば、(労働者)派遣法の改正や後期高齢者医療制度の廃止、障害が重い人ほど負担が重い応益負担をやめさせるとか、高校の授業料無料化など、そういう点では力を合わせて実らせていこうと。
同時に、容認できない問題もあります。たとえば日米自由貿易協定(FTA)は、日本のコメの82%がダメになる。また、先ほど小選挙区制の問題点が議論になりましたが、衆院比例定数の80議席削減ということになれば、ますます民意が切り捨てられます(司会「是々非々でやっていくと?」)。そういうことです。
増税付きの手当は問題 高速道より医療費無料
民主党が子ども手当などの政策を公約したことについて、司会者から「共産党は反対するのか」と問われた市田氏は、次のように述べました。
市田 子育て支援への給付というのは、日本の場合、GDP(国内総生産)比では主要国中最低レベルなんです。だから、それはいいことだと思います。ただ、サラリーマン増税のような増税付きとなると、これはやはり問題を含みます。配偶者控除や扶養控除をやめて、それを財源にするというのはよくありません。
われわれは現行の児童手当を倍に増やし、できるだけ早く18歳まで段階的にしていこうと(主張しています)。
(ガソリン税の)暫定税率廃止は、もう一般財源化されているわけですから当然ですが、やっぱり環境税という形にしていくべきだと思うし、高速道路無料化は、CO2(二酸化炭素)を増やすことにもなります。
同じ税金を使うなら、高速道路の無料化は年間1兆3千億円ぐらいかかるはずですが、高齢者と子どもの医療費の無料化にかかるのも1兆3千億円なんです。予算の使い方の優先順位からすれば、そこはやはり考えるべきです。
財源は消費税に頼らず応能負担とムダ削除を
民主党の財源論に対して、視聴者からは「“高速道路の無料化”は廃止してください」「足りないから増税、国債(増発)というのでは、いつまでたっても借金は減らない」「これ以上ムダは増やさないでほしい」などの不安の声がファクスなどで寄せられました。
市田氏は次のように指摘しました。
市田 財源問題で大事だと思うことが二つあります。一つは、税金のムダ遣いをやめることです。目的を失った八ツ場(やんば)ダムや川辺川ダム、あるいは条約上義務づけられていない米軍への「思いやり予算」2千数百億円だとか、そういうムダを削る。
とくに聖域になっているのが5兆円近い軍事費です。ここにきちんとメスを入れるというのが一つです。
それから入り(財政収入)を増やすという点では、行き過ぎた大企業、大資産家へのこの間の減税を元に戻す。10年前の水準に戻すだけで(毎年)7兆円の財源が生まれます。
アメリカでも、いま富裕層に増税し、それを低所得者への減税に回したり、アメリカには公的医療保険制度がないから、それをつくるとか。オバマ政権は軍事費も向こう10年間で140兆円削ろうとしている。そういう方向が世界の流れになってきているわけで、日本も聖域にきちんとメスを入れて、どんなことがあっても消費税に依存せず、税金を負担能力に応じて払ってもらう、ムダを削る。やはりこの辺がカギだと思います。
財源論への国民不安に民主は説明責任がある
民主党の岡田克也幹事長は、「ハコモノなどのムダ遣いをきちんと精査して、必要のないものはやめる」といいつつも、「100%すべてムダなものだとは思っていない」などと述べました。民主党と連立協議に入る社民党の福島瑞穂党首は、米軍への「思いやり予算」の削減や1メートル1億円の東京外郭環状道路のコストなどに言及し、「新しい政権」になれば、「大規模公共事業のあり方など、それ(透明化)ができるよう一生懸命やっていく」などと述べました。これに対し市田氏は次のように述べました。
市田 1メートル1億円もする東京外郭環状道路には、国幹会議(国土開発幹線自動車道建設会議)で民主党も委員を出して賛成したんです。その辺は、(連立協議は)どういう協議になるのか。軍事費の問題についても、福島さんは「思いやり予算を削る」とおっしゃった。それには私たちも賛成ですが、その辺は(連立協議で)どうなるのか。これからの協議だろうとは思いますが、率直に議論されることが望まれます。
「朝日」の世論調査で、民主党の財源論に83%の人が不安だと答えているんです。私がいっているだけではなくて。その辺は、岡田さんが「これからをみてくれ」とおっしゃいましたけど、やっぱり国民の疑問にきちんと答えていく責任がある。(総選挙で)あれだけの支持を得たわけだから、それはきちんと説明していく責任があるんではないかと私は思います。
番組には、視聴者からメールやファクスなどで約7000件の意見が寄せられました。
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