2009年8月31日(月)「しんぶん赤旗」
ゆうPRESS
学生の内定先 決まらない…
就職難 深刻
企業の採用 22万人 減
「2010年卒業予定の約半数の学生が決まっていない(東京都内の私大)」「昨年に比べて(内定率は)20%落ちている(都内の私大)」―。学生をひどい就職難が襲っています。正規雇用を厳しく抑制して、もうけを確保しようとする大手企業などが、昨年に比べ22万人も採用を減らしたからです。「3年の夏、秋から活動を始めても、内定が一つももらえない」と悲鳴があがっています。(染矢ゆう子)
27日、大学生協主催の合同企業説明会の会場から出てきた都内の私立大学経済学部のA君に声をかけました。「本当に就職が決まるのか。毎晩不安で寝付けない」と訴えるA君。昨年10月から就職活動を始めました。
4月から、一度も授業には出ていません。先輩のアドバイスで3年次までに卒業単位を取り終えました。「学びたい課目」より「確実に単位が取れる課目」が優先。面接で「経済の何を学んだのか」という質問に、A君は答えられませんでした。
8月に入っても、午前中から夕方まで説明会や合同説明会に参加し、夜は面接の準備をしたり、別の企業を調べたり…。空き時間があると携帯電話で説明会を予約するなど、常にチェックを欠かしません。
これまでに50社以上落とされました。「社会全体から『君は必要とされていない』と言われているようで…」。午前1時ごろ布団に入りますが、「卒業後、進路があるのだろうか」と考え始めると不安になり、午前3時ごろまで寝付けない毎日。食事は1食か2食。説明会や面接に行くのに、毎回1000円ぐらい交通費がかかり、節約のため牛丼ばかりです。
営業を希望しています。
しかし、先日参加した合同説明会では、全体の求人が約1800人あるうち、パチンコ店が730人、IT関連が440人。ほかに、労働者に劣悪な労働環境を強いる「ブラック企業」として名前を挙げられているような企業が多数の求人を出していました。
「10月までには内定を取りたいけれど…。最近、何のために生きているのか分からなくなりました」
今回のひどい就職難は自然災害ではありません。学生の就職難をもたらしている原因は何か―。雇用問題に詳しい日本大学名誉教授の牧野富夫さんに聞きました。
強力な採用のルールを
日大名誉教授・牧野富夫さん
二つの原因があります。一つは雇用破壊です。1990年代半ばから、大企業は派遣社員など非正規を増やし、正社員を減らしてきました。
企業は前から「厳選採用」と言っていましたが、これまでは迷ったら将来の成長を考えて採用していました。
今年は、迷ったら採らないというように変わったといわれています。これまで入社の意思を確認する目的で行われていた最終面接で落とされている学生が多数出ています。
大企業がためこんでいるもうけ(内部留保)を使えば、これまで通り採用できる体力があるのに、経済情勢が悪いことを口実に、新規採用を厳しく抑制しているのです。
正社員を減らし、容易に使い捨てのできる非正規で労働力を調整するという財界の身勝手な雇用戦略を改めさせるなどして、「正社員が当たり前」の社会を実現することが必要です。
もう一つの原因は、政府・財界がすすめた大学「改革」にあります。91年に大学の設置基準が緩和され、大学が各地にたくさんできました。
ところが、国は、増大した学生に十分な高等教育を保障するための予算を抑制。学費が高騰して学生はバイトに追われています。教養課程は軽視され、小説や哲学の古典を読むことが少なくなりました。
就職活動が早期化・長期化し、ゼミや卒論に全力を尽くすこともできなくなっています。
政府は、財界や労働界、大学などに強く働きかけて、以前あった就職協定より強力な採用のルールをつくらせるべきです。ルールを破った企業には社会的な制裁を加えられるような社会にすること、学生が持つ可能性が花開くように、教育・研究に打ち込める教育条件をつくることが、長い目で見れば、日本経済と企業の利益にもなると思います。
就活中の学生の声
靴が2足目
●70社回って、ヒールのかかとがすりへり、2足目。夜中の2時ごろ、友人から「説明会の空きが出たよ」と電話があったり、情報交換して支えあっています。昨年は4年の5月から始めても内定が取れた先輩がいたのに、今年は厳しい。(早稲田大 Dさん)
●友人の中には、どうしても鉄道会社で働きたいので、「みどりの窓口」などにいったん契約社員で入って、その後の正社員登用試験を受ける道を考えている人もいます。自分は正社員というのは妥協したくない。パチンコ会社も「正社員」という点でいってみようと思います。(専門学校生 E君)
涙止まらぬ
●昨年夏からインターンシップに行ったり、自己分析や業界分析を始めて準備してきました。頑張ってきたのに、7月に大学の就職アドバイザーに「もっと行動しなきゃ」と言われてその場で涙がとまりませんでした。まだ卒論も決まっていません。10月までには決めたいけど不安です。(武蔵野大 Fさん)
お悩みHunter
同僚が仕事を選び私に負担が
Q 福祉関係の仕事をしています。同僚でとても調子のよい人がいて、「私はこういうの苦手だから」などと仕事を選び、彼女の分の嫌な仕事も全部、私がやるはめになっています。少ない人数の職場なので一人そういう人がいると困ります。良い解決方法はないでしょうか。(28歳、女性)
あなたの気持ち上司に伝えて
A たしかに困ってしまいますね。
少人数の職場ですから自分の仕事以外にもお互いのフォローが必要だと思いますし、同僚が苦手だという仕事があなたに回ってくることも仕方ない場合もあるでしょう。
でも、それで負担に感じてしまったり、十分に納得のいく仕事ができなかったりしたら困りますよ。
同僚や職場の人たちはあなたが負担に感じていることを知っていますか?
もしかしたら、あなたが同僚の仕事をすることによってうまくいっているから、これでいいと思っているのではないですか。
それでは、あなた一人が負担を背負ってしまい、結局はいい仕事ができません。
あなたの悩みの原因は、同僚の性格の問題だけではありません。
少ない人数の職場では職場全体のお互いのコミュニケーションが非常に大事です。まずはあなたの思っていることを職場の上司にきちんと伝えてください。そうしないと何も変わりません。
職場にはいろいろな人が一緒に仕事していますから、働き方から性格まで気になったり、合わなかったりする人もいるでしょう。
しかし、その改善のためにはコミュニケーションを取ってお互いを理解し合う努力が必要だと思います。
なによりも利用者のみなさんにとっても、職場の人たちがいつでも気分よく働いていることを望んでいると思います。
第41代日本ウエルター級チャンピオン 小林 秀一さん
東京工業大学卒。家業の豆腐屋を継ぎながらボクシングでプロデビュー。99年新人王。03年第41代日本ウエルター級チャンピオン。