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2009年8月21日(金)「しんぶん赤旗」

郵政民営化でどうなった

利権横行、住民サービスは後退

株売却を中止し、路線の転換を


 2005年の「郵政選挙」で多数を得た自民・公明が強行した郵政民営化。「『構造改革』の本丸」とされてきたものの、郵政事業は良くなるどころか、新たな利権問題やサービスの低下など多くの害悪が噴出しています。(矢守一英)


 今年に入って、国民の財産を食い物にする事態が次つぎと表面化しました。

ひそかに売却

 「かんぽの宿」の売却問題です。あまりに安く、落札の経緯も不透明なことから大問題になりました。契約は白紙に戻りましたが、2400億円もかけて建設した国民の財産を一括して100億円余りでオリックス不動産に売却しようとしたことに批判が高まりました。

 もう一つは、西川善文日本郵政社長の出身銀行である三井住友グループとの癒着です。郵貯銀行がクレジットカード事業の参入にあたって、発行事務の委託先に三井住友カードを選定したことなどが分かりました。

 不可解な不動産取引も判明しています。東京都心の「かんぽ」関連施設が、三井住友グループ企業である住友不動産に、50億円で事実上売却されていました。取引の過程は国民に公表されず、ひそかに行われました。この施設は民営化で閉鎖された「かんぽヘルスプラザ東京」。JR池袋駅近くの一等地にあり、再開発すればばく大な利益が見込まれます。社長自身が先頭に立って身内企業に甘い汁を吸わせようとする利権の構図がみてとれます。

 地方では、郵便局がなくなるのではないかという不安が広がっています。

一時閉鎖325局

 郵政産業労働組合が高知県の自治体首長29人を対象に実施したアンケート(08年3月)では、「今後郵便局が減少すると思う」との回答が27と圧倒的多数でした。

 政府は「郵便局はなくならない」といってきましたが、一時閉鎖中の簡易郵便局は325局(7月31日現在)にのぼります。山間部や離島などでは郵便局しか金融機関がないところも多くあります。かけがえのない金融窓口の役割を果たす郵便局がなくなることは、まちの機能を失い、地方の過疎化・疲弊を加速させることにもつながり重大です。

 住民サービスの後退も明らかです。

 全国郵便局長会が5月に行ったアンケートによると、郵便局によせられる苦情や不満の内容は、証明や書類などの煩雑さや郵便物の誤配・遅配、待ち時間の長さ、各種手数料の値上げなど、サービスに関係する問題が上位を占めました。8割近くの郵便局で民営化前と比べて来客数が減ったとの結果も出ました。

 民営化を前後して強行された集配郵便局の再編では、過疎地を中心に1048局で集配が廃止されました。このことが、土日窓口の廃止や遅配・誤配など配達の乱れの要因になっています。

 郵便局以外のところに設置されている局外ATM(現金自動預払機)も減少しています。病院や大学など公共性の強い場所にある場合でも、存続を望む利用者の声を押し切って撤去される例が相次ぎました。

 窓口・ATM利用の際の送金サービス手数料も大幅に引き上げられました。

 郵便局の人が郵便配達のときに、郵便だけでなく貯金を預かったり、保険、年金を届けたりしていた業務もできなくなり、地域住民は不便を強いられています。

反対を貫いて

 郵便局の利用者が減るなど、国民にとって郵便局が縁遠く感じられるようになったのは、郵政民営化によって郵便、郵貯、簡易保険の3事業一体で運営されていた郵政事業が四つの会社にバラバラにされてしまったからです。

 日本共産党は、郵政民営化は「百害あって一利なし」と反対を貫いてきました。そして郵政民営化が国民の要求に基づくものではなく、日米財界の要求に基づくものであることを明らかにしてきました。総選挙政策では、政府が保有する郵政株の売却を中止し、3事業一体の経営、国民にあまねく公平に貯金、保険サービスを提供する、金融サービスのユニバーサルサービスの義務付けを行うことなど、郵政民営化路線を根本から転換することを主張しています。

日本共産党の総選挙政策から

○国が保有している郵政株の売却を中止し、郵政民営化路線を根本から転換します。

○郵便局ネットワークによって提供されている生活に不可欠なサービスを「ユニバーサルサービス」として義務付け、全国あまねく提供されるように力を尽くします。

○郵政事業を国民に開かれた、国民へのサービスに徹する事業にするための改革にとりくみます。

○中小企業、住宅などへの資金供給は、公的金融による支えが必要です。その原資として、郵貯・簡保資金を活用します。

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