2009年8月16日(日)「しんぶん赤旗」
台風9号豪雨被害から1週間
被災者に疲れと怒り
兵庫・佐用町
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台風9号の影響で西日本各地に降った豪雨被害から16日で1週間。死者18人、行方不明3人の大きな被害を出した兵庫県佐用町では、被災者、ボランティアによる懸命の汚泥やがれきの撤去作業が続いています。長引く避難生活に加え、先の見通しにも不安を募らせている被災者の顔には疲労の色が濃くにじんでいます。(阿曽隆)
同町久崎地区。佐用川と千種川の合流する同地区は、佐用川左岸の護岸が崩れ、190世帯の9割以上が床上浸水の大きな被害を受けました。
「盆も何もない」と、泥かき作業に追われていた男性(66)。9日夜、何度も水位を確かめに行きました。午後7時半すぎには、はんらんまであと1メートルという水位になり、あわてて避難したといいます。
一方、町は午後9時20分、全域に避難勧告を出しましたが、そのころはすでに役場自体が腰まで水につかる状態で混乱していたといいます。
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2度も水害
同町での犠牲者は、その大半が避難所などに向かうなかで流されるなどしたとみられます。
住民は、「家は大きな被害を受けました。避難勧告を待っていたら、みんな死んでいたでしょう。いったいどうなっているのか」と防災体制に疑問を投げかけました。
同地区は2004年の台風21号でも佐用川があふれ、大きな被害が出た地域。今回、はんらんしたのは5年前の損壊個所と同じ場所でした。住民らは5年間で2度も水害に見舞われ、災害復旧工事のあり方に不満と怒りを強めていました。
久崎自治会は堤防のかさ上げや川床のしゅんせつなどを05、06年に町や県に陳情。日本共産党佐用町議団も抜本改修を要求して運動していました。
しかし、国の補助対象となる災害復旧工事は現状復旧工事が原則。そのため、今回同じところから越水した濁流が、コンクリートで固められていない堤防の内側を削り取り、決壊につながりました。
住宅の被害は甚大です。護岸に近い住宅は大規模に損壊、床上浸水では泥と流木が襲いました。
見通しなく
平屋の自宅が天井まで水につかり、壁が落ち、すべての家財道具を失った男性(69)。
車庫と納屋も跡形もなく流失。家の前の水田60アールは砂利に埋もれ、見る影もありません。片付けに追われながら「家の被害ばかりか、農機具までも失った。国や県には、この場所で元の生活に戻れるよう、支援してほしい。今のままでは何も見通しが立たない」と思いを語りました。
再建支援の法改正を
住宅再建に公的支援を求める住民の声は切実です。国の被災者生活再建支援法では、全壊や、半壊でも被害が大きく解体・建築したものに300万円を支給、大規模半壊で補修した場合も150万円まで支給されます。
しかし、水害では柱や屋根などに被害がなく一部損壊で支援対象外となるケースも多いのが特徴です。 悪臭をはじめ、壁、台所、風呂場など1階の大部分に大きな被害が出る水害の特徴にふさわしく、同法の抜本改正が必要です。