2009年8月14日(金)「しんぶん赤旗」
戦後64年 独で戦犯追及
ナチス元少尉に終身刑
「伊で民間人10人殺害命じた」
ドイツのミュンヘン地方裁判所は11日、第2次世界大戦中の1944年にイタリア中西部トスカーナ州で民間人10人の殺害を命じたとして、ナチス・ドイツ軍元少尉のヨゼフ・ショイングラバー容疑者(90)に終身刑を言い渡しました。ドイツでは戦後64年を経過した今も、戦争犯罪に対する追及が続いており、7月には米国に在住していたナチス収容所元看守がドイツ司法当局に引き渡され、近く裁判が始まります。(夏目雅至)
ショイングラバー容疑者指揮下の部隊は、44年6月26日、2人のドイツ兵が死亡したイタリアの抵抗運動パルチザンによる攻撃への報復として、同州アレッツォ近郊の村ファリツァノ・ディ・コルトナで74歳の女性を含む民間人4人を射殺。さらに11人を拘束して民家に閉じ込め、家ごと爆破、重傷を負いながらも助かった当時15歳の少年を除く10人を殺害しました。
この少年が裁判で証言しました。地裁判決は4人射殺については、証拠不十分としています。
同容疑者は戦後、ミュンヘン近郊のオットーブルン村で家具商を営み、村議会議員を務めていました。しかし、イタリア軍事法廷は2006年9月、ファリツァノの虐殺容疑で同容疑者に欠席裁判で終身刑を判決。同容疑者は、ドイツ国籍のため外国への身柄引き渡しはできませんでしたが、ドイツ検察当局は08年10月、同容疑者をミュンヘン地裁に起訴していました。
ロイター通信によると、ナチス戦犯を追及しているサイモン・ウィーゼンタール・センターのエルサレム事務所は声明を発表、「歳月は犯罪者の罪を軽減することはなく、高齢であることは殺人者の法的保護にはならないとの見解を強めるものだ」と判決を歓迎しました。
米国から身柄引き渡しを受けた元看守、ジョン・デムヤンユク容疑者も89歳の高齢者。ウクライナ生まれで、ソビボール収容所(現ポーランド東部)など3カ所のナチス収容所で、ユダヤ人2万7900人の殺害に関与したとされています。