2009年8月13日(木)「しんぶん赤旗」
「国民が主人公」の新しい日本を
解散後初の党首討論 志位委員長が主張
日テレ系番組
11日に日本テレビ系で放映された6党党首討論。日本共産党の志位和夫委員長のほか、自民党の麻生太郎総裁、公明党の太田昭宏代表、民主党の鳩山由紀夫代表、社民党の福島瑞穂党首、国民新党の綿貫民輔代表が出席。キャスターの村尾信尚氏、日本テレビ政治部長の粕谷賢之氏の司会で進行しました。
冒頭、司会者が各党党首に、「この政党に投票すると、その先にこんな日本が見えてくる、そんなイメージをぜひ語っていただきたい」と呼びかけました。
この国の将来像
二つのゆがみを正し、憲法通りの日本を
麻生氏は、「安心 活力」「子どもに夢を、若者に希望を、高齢者には安心を」などと語り、そのすべてを奪ってきた自民党政治への反省はまったくなし。太田氏も同様に「安心、安全の勢いのある国」などと述べました。鳩山氏は「絆(きずな)のある社会」と語りました。福島氏は「人を切り捨てず支えあう社会」、綿貫氏は「共生社会の復活」と。これにたいし志位氏は、「『国民が主人公』の新しい日本を」と書いたフリップを示し、こう表明しました。
志位 「国民が主人公」の新しい日本ということを私たちは訴えています。
憲法には、国民主権ということが書いてあるわけですが、実態がどうなっているかというと、内政では「財界主権」、すなわち財界の号令で不安定雇用や働く貧困層が増え、社会保障の削減が行われ、そして消費税増税まで進められようとしている。
外交は「アメリカ主権」になっている。すなわち、アメリカが求めるままに、自衛隊の海外派兵を進め、憲法9条まで変えようとしている。日米FTA(自由貿易協定)では、農業とお米までアメリカに差し出そうとしている。
この二つのゆがみを本当に正して、憲法に書いてある通りの国民主権、「国民が主人公」の日本をつくりたいというのが私たちの大きな改革の方向です。
自民党政治の大失政
雇用、社会保障をどう立て直すか
これをうけ司会者が麻生氏にたいし、有権者は(自民党政治の)どこに修正を求めていると考えているかと質問。麻生氏は「行き過ぎた競争というのがあったんではないか」などと述べ、鳩山氏は「まさに弱肉強食が格差を生んでしまった。それをできるだけなくすための方策を、いまこそ大転換してつくっていかなければ」と指摘。志位氏は具体論として、ずばりこう切り込みました。
志位 (麻生氏から)行き過ぎた競争は是正しなければいけないというご発言があったのですが、具体的にどうするかということが問われると思います。
例えば、労働法制の規制緩和をどんどん進めてきたわけです。とくに派遣労働については、1999年に原則自由化した。2004年には製造業にまで拡大した。そのためにああいう「使い捨て」の労働が広がって、そして「派遣切り」という、本当に日本だけですよ、「派遣村」のような事態が生まれたのは。こういうひどい働かせ方をまん延させてしまった。これを一体どうするのか。労働法制の規制緩和という方向を改めて、本当に抜本的な規制強化の方向にいって、そして雇用は正社員が当たり前というルールをつくるのか、これが問われますね。
それからもう一つ。社会保障については、2002年以来、毎年2200億円ずつ予算の自然増を削ってきたわけです。これが介護、年金、医療と、あらゆる分野でボロボロにしてきたわけですよ。後期高齢者医療制度のようなひどい差別的な制度をつくってしまった。これを現実に正すのかどうか、これが問われます。
ですから、本当に行き過ぎた弱肉強食をやってしまった、行き過ぎた競争主義になったというのであれば、雇用と社会保障という暮らしの支えになる問題を正すのかどうか、ここをはっきりお答えいただきたい。
志位氏の問いに麻生氏は答えず、太田氏が「私はいわゆる『構造改革』ということがよくいわれましたが、『構造改革』という前に世の中が先に構造変化をしてしまった」「そこをよく見て手を打つことが非常に大事だ」などと言いました。
また、司会者は鳩山氏にたいし、「『絆』といわれたが、あいまいな感じがしてよくわからなかった」と質問。鳩山氏は「友愛の社会を築き上げていく、自立と共生の世の中をどうつくりあげていくかと。経済も外交も一つひとつ、自立と共生のキーワードのもとでつくりかえていきたい」などと答えました。
子育て支援
総合的な対策が必要
話は、各党の総選挙政策に移り、まずは子育て支援策をめぐり、民主党の2万6000円の子ども手当の財源が話題に。麻生氏が「(財源は)少なくとも5兆2000億円になるといわれている。無駄遣いというものの中の具体的にどの部分がどう減らせるのかがよく私どもには見えない」と指摘。鳩山氏は「いま事業仕分けというものを行っており、26%のものが必ずしも国がやる必要はないということが判別している」「当然政府に入ってみないとわからないこともあるが、事業仕分けをしっかりやれば、十分手当てできるという試算をしている」などと答えました。しかし、具体的項目にはふれませんでした。これをうけ志位氏は、民主党が子ども手当の財源に、配偶者控除、扶養控除の廃止などサラリーマン増税を当て込んでいることも示しこう表明しました。
志位 子育て支援に対する給付の水準ということを見ますと、GDP(国内総生産)比で見たら、日本はヨーロッパに比べてはるかに低いんですよ。主要国の中で最低レベルです。ですから、子育て支援への給付の拡大はどうしても必要だと思います。
私たちは、児童手当を、現在、小学校6年生までの5000円をまず1万円に拡充し、段階的に18歳まで引き上げていくという現実的な案を出しています。
そして、その財源を考える際に一つのポイントとなるのが、配偶者控除、あるいは扶養控除をなくしてしまうということと抱き合わせでやりますと、だいたい600万世帯が増税になってくるわけですね。こういうやり方で財源をまかなうという抱き合わせはよくないと(思います)。
私たちは財源というのだったら、まず5兆円の軍事費や(米軍への)「思いやり予算」にメスを入れるとともに、大企業・大資産家に対する応分の負担を求めて、そこでまかなうべきだと(思います)。
それから、子育て支援では、私たちは総合的な対策が必要だと(思います)。つまり、“子育てしにくい社会”を正していく必要がある。保育園の待機児が4万人とも、潜在的には100万人とも言われている。これを認可保育所をつくってゼロにする必要がある。それから高すぎる教育費も、高校の学費は無償にする。あるいは、返済不要の奨学金をつくる、こういう総合的な対策が必要です。
財源論
「二つの聖域」にメスを入れれば消費税増税必要なし
次に話題は財源論、とくに消費税増税の是非が焦点となりました。司会者は、与党は3年後に景気が好転したら増税するとしていると指摘したうえで、麻生氏にたいし、「自民党マニフェストでは、2010年度後半に2%の成長実現といっているが、そうなれば景気回復ということになる。そうなれば2011年4月から消費税を上げるということでいいか」と質問。麻生氏は、「それはいけばですよ」「そういうように経済を成長させていかねばならんと思っている」などと答えました。鳩山氏は、「4年間は私たちは消費税を上げないといっている」とする一方で、「最低保障年金は税でまかなう」とし、将来は増税をおこなう姿勢を示しました。これをうけ、志位氏はこうきっぱりと述べました。
志位 財源となるとすぐ消費税(増税)ということになるのは、結局、二つの分野を「聖域」にしているからだと思うんですよ。
一つは、年間5兆円の軍事費、そして2800億円の米軍への「思いやり予算」、3兆円といわれる、グアムでの米軍基地建設予算など米軍再編経費で、ここを「聖域」にしている。
もう一つは、大企業や大資産家への行き過ぎた減税を「聖域」にしている。
アメリカでも、向こう10年間で富裕層に対して100兆円の増税をやろうとしている。多国籍企業に対して20兆円の増税をやろうとしている。そのお金で、庶民の減税や医療改革をやろうといっている。
やはりそういう方向を目指すべきで、この二つを「聖域」にするから、消費税(増税)でという議論になってくると思います。
これに対し、麻生首相は「基本的には消費税というのは公平な税だと思う。だから消費税というのを避けて通るわけにはいかない」「法人税(増税)の話をされるが、それでは会社が外に出て行き、雇用を悪い状況に追い込む」などと述べました。志位氏は、「日本の法人の負担の方が(欧州などと比べて)低い。それは成り立たない」と厳しく反論しました。
安保・外交
軍事支援ではアフガン問題は解決しない
番組では最後に、安保・外交がテーマとなり、来年1月に期限が切れる海上自衛隊によるインド洋での給油活動への各党の態度が問われました。麻生氏は給油継続の必要性を明言。これまで反対してきた鳩山氏は、「(政権獲得後の)翌日にすぐに撤退するのは外交の継続からいって無理だ」と表明し、撤退を主張する福島氏との間でこんなやりとりが――。
司会 民主党とは、そのへんは(総選挙後に)ちゃんと連携は組めるんですか。
福島 社民党は即時撤退の立場ですので、民主党ときちっと協議していきます。
鳩山 政権を取った後、連立政権のなかで議論していきますが、私どもの基本的な考え方は、すぐに撤退という話よりも、1月までの間に、十分にオバマ米大統領との間の信頼関係を構築する中で、新しい、より好まれる支援を考えていく。
志位氏はこう力説しました。
志位 給油活動というのは、いま米軍などがやっている戦争行為の支援活動ですから、これは憲法違反で、私たちは即時撤退という立場です。
くわえて、アフガニスタン問題の解決に役立っていないという、この現実を見る必要があると思うんです。
米軍はこの間、2万人の増派をやりました。しかし、現地の治安状況はいま、最悪なんですね。この7月だけでも、外国軍の死者が76人で最悪なんですよ。この原因は、無差別の空爆をやる、それから掃討作戦をやる、そういうやり方が現地住民の反発を招いて、武装反撃が起こる、自爆テロが起こる、この悪循環が起こっているわけです。
ですから、この悪循環から抜け出す必要がある。やはり政治的な解決、和平による解決、こちらにかじを切り替えていく外交努力を日本はやる必要があるわけで、それをやらずにともかく軍事のところで後押しするというやり方を続けるというのは、アフガニスタン問題の解決にならないということを言いたいですね。