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2009年8月13日(木)「しんぶん赤旗」

国民の個人情報を一元管理

社会保障カード・番号

財界発・自公推進

狙いは給付の抑制


 自民・公明両党が総選挙のマニフェストに「社会保障カード」や「社会保障番号」の導入を掲げています。民主党もマニフェストの土台である2009年版政策集に「税・社会保障共通の番号の導入」の項目を立てています。社会保障の「信頼性と透明性を向上させる」(自民)とうたいますが、国民にとってはきわめて危険な政策です。

民主党も公約

 社会保障カードは、1枚のICカードに年金手帳、健康保険証、介護保険証の三つの機能を持たせるというものです。自公政権は、厚生労働省に社会保障カードの検討会を設置して導入を推進。閣議決定された「骨太の方針2009」には「社会保障番号・カード(仮称)を2011年度中を目途に導入する」と明記し、具体化を進めています。

 社会保障番号は、年金、医療、介護などの各制度にまたがる整理番号を国民一人ひとりに付けて情報を一元管理するものです。民主党は「納税」の番号も統一すると明記しています。その理由に、「不要あるいは過度な社会保障の給付を回避すること」(政策集)を挙げています。

 これらの導入をせき立ててきたのは、財界です。日本経団連は社会保障番号・カードをテコに「社会保障個人会計」を創設するよう何度も提言してきました。

 社会保障個人会計とは、国民一人ひとりが過去にどれだけの負担をし、どれだけの給付を受けたかを確認する仕組みです。社会保障番号で管理する情報がこの個人会計で使われます。

米で悪用続出

 日本経団連は社会保障個人会計について「個人ごとに給付と負担を把握して…重複給付をチェックし、効率的な給付を行おうとするもの」(04年9月「社会保障制度等の一体的改革に向けて」)と説明しています。死亡時に個人の負担と給付を差し引きし、給付が上回れば「相続財産との間で調整を行う仕組みも検討すべきである」とまでいっています。

 経営者向けコンサルティング会社のNTTデータ経営研究所が発表した研究論文は、「現在使いすぎている人たちへの給付を抑制する」「給付を受けすぎた人に、より多く負担をしてもらう(保険金を死後に回収するなど)」(05年6月「ITと社会保障」)と露骨に狙いを明かしています。

 これは、社会保障を国民の権利と規定する憲法の「生存権」の中で位置づけるのでなく、「支払いに見合うだけのサービス」という“買い物”とみなす考え方で、企業の社会保障費負担を軽減する道具として社会保障番号・カードを利用しようとしています。

 社会保障番号・カードは、年金・医療などの重要な個人情報が漏えいするリスクもはらんでいます。

 すでに実施されているアメリカでは、番号を盗まれ悪用される「なりすまし被害」が続発しているといわれます。厚労省の検討会は、さまざまな対策を考案してもなお「残るリスク」を否定できていません。

 日本共産党は、“社会保障の給付は保険料の対価”という間違った考え方を広げて保険料とりたてを強化するための社会保障番号・カードの導入に反対しています。(杉本恒如)


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