2009年8月11日(火)「しんぶん赤旗」
主張
道州制論議
地方自治の「本旨」忘れたか
今回の総選挙では、地方分権や地方自治のあり方が争点の一つに浮上しています。
とりわけ重大なことは、憲法92条の「地方自治の本旨」を真っ向から踏みにじる道州制導入の動きに拍車がかかっていることです。
財界が導入をけしかける
財界は、今回の総選挙を契機に道州制導入を実現させようと、自民、公明、民主の各党をけしかけています。
自民党は、総選挙のマニフェストで「道州制基本法を早期に制定し、基本法制定後6〜8年を目途に導入する」と、“目玉政策”として打ち出しています。公明党も、「地域主権型道州制の導入」をかかげています。日本経団連は、3日の自民党との意見交換会で、自民党の期限を明示した導入論を高く評価しました。
民主党は、マニフェストには書き入れていませんが、4日の経団連への説明会では、岡田克也幹事長が「道州制に反対ではない」などと言明しています。
憲法92条でうたう「地方自治の本旨」とは、「地方自治の本来のあり方」のことであり、地域住民の意思にもとづいて地方自治体が自主的自律的に行政をおこなうことです。地方自治を発展させる基本的な土台は、住民生活に密着した市町村にあります。
自民党の道州制案では、いま約1800に減少した市町村を、さらに当面700から1000程度に再編し、いまの都道府県をなくして、全国を10程度の道州に再編するとしています。これでは、住民自治はまったく形がい化してしまいます。
また民主党も「道州制に対する考え方」のなかで、「最終的には国と300程度の基礎的自治体による新たなる『国のかたち』をめざす」と、地方自治の基盤を大幅に再編する立場です。
道州制の導入は、単に「都道府県の再編」ではありません。道州制のねらいは、国の仕事を外交・軍事・司法などに限定し、社会保障や福祉などの行政サービスは地方に押しつけ、自立自助の名で住民負担に切り替えることです。それは、「住民自治の本旨」を投げ捨てて、自治体を財界・大企業のための開発政策や産業政策の道具に変えてしまおうというものです。
金融危機・不況の影響が地域経済を襲っているいまこそ、「地方自治の本旨」にのっとり、雇用、医療、福祉、農業、環境などの地域住民の運動の前進をふまえ、地方自治を発展させる政策の実現をめざすべきです。
日本共産党は、道州制の導入と小規模自治体切り捨てなど、さらなる上からの市町村再編の押しつけに反対します。
地方の財源を保障して
いま、「地方自治の本旨」を実現するうえで必要なのは道州制の導入などではなく、財源を保障し、地方自治を発展させることです。
日本共産党は、福祉や教育などの国庫負担金・補助金の廃止・縮減に反対し、その改善・充実をもとめるとともに、地方交付税の復元・増額で本来の財源保障・調整機能を回復・強化し、住民のくらしをまもるために必要な地方の財源総額の確保をはかります。
地方の財源確保のために「地方消費税の充実」をもとめることは、消費税の大幅増税に直結するものであり、強く反対します。
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