2009年8月10日(月)「しんぶん赤旗」
ゆうPRESS
海の中から地球見えた
「NPOパパラギ」 支える若者たち
神奈川県に、“もっと海や自然のことを好きになろう!”と活動している「NPOパパラギ“海と自然の教室”」があります。環境問題や平和問題にも取り組んでいます。ボランティアスタッフは100人以上です。(記事中一部仮名です)
NPOパパラギは、鎌倉材木座海岸(神奈川県鎌倉市)や伊豆富戸ビーチ(静岡県伊東市)で、シュノーケリング教室・体験ダイビングを開催しています。
7月30日、伊豆教室では、子ども20人、おとな20人が参加しました。はじめにリーダーの武本匡弘(まさひろ)さん(54)が、自己紹介。子どもたちから「あ、手話だ」と声が出ました。武本さんが手話をやるのは、参加者やスタッフにも耳の不自由な人がいるからです。
「ぜひ私の名前を覚えてください。選挙に出ますっ!」と、さっそくギャグを飛ばし、名前を何度も言い、参加者を和ませました。
実は、名前を覚えるのは、とても大事なこと。もしもの事故や遭難したとき、リーダーの名前をしっかり言えなければならないからです。
「餌付けをしようとしたり、水中の生き物に触ったりは、絶対にしないでくださいね」と、一通りルールや基礎知識などを説明し、さあ海へ。
これまでの参加者は、約2000人になりました。運営にはボランティアスタッフの存在は欠かせません。
この夏、初めてボランティアに参加した小林美夏さん(29)。「(水中)マスクをつけてください。バディ同士、髪の毛が中に挟まっていないか、よく確認してあげてくださいね。挟まっていたら、マスクの中に水が入ってくるからね」。チームの子どもたちに声をかけます。
バディとは、「仲間」「相棒」という意味です。海では2人組、3人組を作り、お互いを助け合います。
小林さんは、24歳の時に行ったオーストラリアのきれいな海が忘れられず、海に興味を持ち、このNPOを知りました。航空気象関係の仕事をしており、毎年のように異常気象が観測され、航空業界では、運航のための天候の予測が年々難しくなっているといいます。
「今年、エルニーニョが発生したり、梅雨がなかなか明けないこととか、それに、このあたりでは見られない季節来遊魚(死滅回遊魚)の稚魚が、浅瀬にいることもあります。なんか、地球規模で、気象の大きな変化を感じます」
ウサギのようなくりっとした目を輝かせて「きれいな海を子どもたちにも伝えたい」。小林さんの目は真剣でした。
シュノーケリング、スキューバダイビング 3点セット(マスク、シュノーケル、フィン)をつけて、海面から水中を散策する遊びがシュノーケリング。さらにタンク(圧縮空気)、浮力調整具等を身につけ、潜水することをスキューバダイビングといいます。どちらも、保温のために、ウエットスーツを着用します。
季節来遊魚(死滅回遊魚) 黒潮に乗って本州沿岸に流れ着く南方系の魚。冬は海水温の低下で死滅します。最近の海水温の上昇で、越冬することも確認されました。
NPOパパラギ“海と自然の教室”=http://www.papalagi.co.jp/npo/npo.html
戦争なんかしている場合じゃないですよ
NPOパパラギでは、平和であってこそ、海で楽しめると、8月15日の終戦の日に地元で行われる「ふじさわ・不戦のちかい平和行動」の実行委員会にも参加しています。
この春、スタッフになった、工藤佑介さん(27)は、実行委員会で、チラシ作りなどを担当しています。
はじめは憲法9条に何が書かれているかわかりませんでした。武本さんがラーメンをおごるからと、だまして実行委員会につれてきたと言うと、「違いますよー。そんな気持ちじゃないですからー。興味があったんです」。
実行委員会に来ている年配の人たちは、自分の考えをしっかり言葉にして言える人たちで、すごいと思いました。
「若い人があまり平和運動に参加しないのは、戦争のことを知らないだけです」と話す工藤さんに、ダイビングと憲法9条の関係を問うと、「僕の中ではどんなことでも“関係ない”と思わないようにしています。考えれば関係がつながってくるんです」。
実際、イラク戦争では機雷除去等の作戦として、イルカが使われたとも言われています。実は工藤さん、イルカ大好き青年。大学を卒業後、ドルフィントレーナーの専門学校に入りました。しかし狭き門の現実にぶつかりました。今はスキューバダイビングのインストラクターを目指しています。
「地球が好きだから。だって、こんなすばらしい星、ほかにないじゃないですか。戦争なんかしている場合じゃないですよ」。一見シャイに見えた青年の中に、誠実なこだわりを見ることができました。
お悩みHunter
勉強難しく高校辞めようかと
Q 高校2年です。推薦で入ったのですが、学校の勉強についていけなくなりました。学校を辞めて、バイトしながら人生の勉強をした方がいいのではないかと考えたりします。先日、親友に話したら、「現実から逃げている」としかられました。夏休みの間に真剣に考えたいのですが…。(17歳、男性)
困難乗り越えれば自信持てる
A 本気でしかってくれる親友に恵まれているあなたは、それだけ気持ちが伝わるすてきな人なのだと思います。
今の迷いを考える上で一番大切なのは、「人生の勉強」は「場所」で決まるのではなく、どこにいても、その気さえあれば可能だということです。
学校を辞めて、バイトすることだけが「人生の勉強」ではありません。むしろ、そんなふうにとらえている考え方が、あなたの弱点なのかもしれません。
あなたが今考えるべきことは、なぜ学校の勉強についていけなくなったのか、その理由や原因を解明することだと思います。
「推薦」で合格したほどですから、中学では成績も良く、教員からの信頼も厚かったはずです。ところが高校入学後、なぜか思うように学習成果が上がっていないのではないでしょうか。
学習面に関しては、各教科の先生が、あなたの問題点を一番把握しています。
夏休み中に今までのノートやテスト類を持参して、本気になって相談してみてはいかがでしょうか。
担当教師なら、あなたがぶつかっている壁や課題がくっきりと見えてくるはずです。
苦しくても「現在の自分」と徹底的に向き合い、この困難を突破すれば、自分に自信が持てるはずです。
誠実なあなたなら、きっとできますよ。
あとは、現実の自分と向き合おうとする勇気だけでしょう。
教育評論家 尾木 直樹さん
法政大学キャリアデザイン学部教授。中高22年間の教員経験を生かし、調査研究、全国での講演活動等に取り組む。著書多数。