2009年8月9日(日)「しんぶん赤旗」
民主の日米FTA公約手直し
「締結」→「交渉を促進」
「文言修正」にすぎず
民主党は7日、政権公約(マニフェスト)に明記した、米国との自由貿易協定(FTA)の「締結」を、「(FTA)の交渉を促進し」と修正しました。
7月27日に同党が政権公約を発表すると、「公約通りに協定を締結すれば、日本農業への打撃は極めて大きい」「米国依存を強め、食料安保上の危険さえある」(日本農業新聞7月29日付「論説」)など、農業関係者が猛烈に反発しました。
民主党は、「米など重要な品目の関税を引き下げ・撤廃するとの考えを採るつもりはない」などとする緊急声明を発表(7月29日)。幹部らが弁明に追われました。
日本共産党の志位和夫委員長は4日、FTA交渉が「農業を含まないわけにはいかない」とする米駐日経済担当公使の発言も紹介し、民主党の言い逃れは通用しないと批判。日米経済協議会の委託研究でも日米EPA(経済連携協定)締結の影響として、米で82・14%、穀物で48・03%の生産減少をもたらすとしていることを示し、「日本農業の土台を支える米が文字通り壊滅的な打撃を受けることになる」として、「断固反対」の立場を表明しました。
その後も、民主党の鳩山由紀夫代表や岡田克也幹事長らが弁明を繰り返し、激しさを増す批判を前に、ついに「修正」に追い込まれたものです。
しかし、菅直人代表代行は「修正」を発表した会見(7日)で、「FTA交渉の推進は従来からの基本方針の中に入っている。基本方針が変わったということではまったくない」と述べました。これは今回の「修正」が「公約の修正」でなく「文言の修正」にすぎないことを認めるものです。
同党の「FTA締結」公約に厳しい批判が起こった根本には、食料自給率40%という日本の農業の深刻な状況、農業経営の危機があります。「政権交代」、「自公政権の退場」を求める国民の声は、アメリカの求めに応じて農産物輸入の自由化を進め、日本農業を危機に陥れた自民党農政の根本的な転換を求めるものでもあります。
米国とのFTA締結論が出てきた根本には、民主党の直嶋正行政調会長が「日米同盟強化と合わせてFTAの締結をうたった」(マニフェスト発表の記者会見、7月27日)というように、日米同盟強化の主張があります。(中祖寅一)