2009年8月9日(日)「しんぶん赤旗」
主張
財源論議
軍事費と財界を聖域にするな
自公の幹事長が6日、衆院選の与党共通公約に景気好転後の消費税増税を明記することで合意しました。「財源論で民主党との違いを鮮明にしたほうがいい」という認識で一致したといいます。
こんな国でいいのか
総選挙公約で自民党は2011年度までに消費税増税の法律を通すと明記しています。経済財政諮問会議は、過去の借金の穴埋めを含め、消費税率を12%に引き上げることが必要だとする試算を示しました。自民党の総選挙向けのパンフレットでは、「『リアル』な政策で、いまを支え、明日をつくる。それが責任ある政治です」とアピールしています。
こんなに財政赤字を増やした「責任」は、大企業や大銀行、大金持ちに大盤振る舞いを繰り返してきた自民党政治、自公政権にあります。そのツケを消費税増税で国民に押し付けるのは「責任転嫁」にほかなりません。
消費税の増税は自公にとっては「現実的」な財源論なのかもしれません。しかし国民の暮らしから見れば、これほど「非現実的」な財源論はありません。
消費税は毎日の「消費」に掛かる過酷な税金です。株式など「投資」に大金をつぎ込む大金持ちと、所得の大方を生活で「消費」せざるを得ない大多数の家計とは、負担の重みがまったく違います。
とりわけ日本は貧困のまん延が深刻です。若者や女性の2人に1人が非正規雇用で、大半が年収200万円以下に押さえ込まれています。トヨタやキヤノンなど財界トップの大企業は派遣や期間工を搾れるだけ搾って、景気が悪くなると簡単に切り捨てています。
消費税を増税するということは、貧困に苦しむ「ワーキングプア」の若者にも、大企業が「使い捨て」にした失業者にも、容赦なく負担させるということです。
ここ10年ほどの間に政府は法人税を7・5%引き下げ、所得税・住民税の最高税率を15%も引き下げてきました。大資産家の相続税や株式配当の税率も大幅に引き下げています。5兆円の軍事費は「聖域」扱いです。2800億円の米軍「思いやり予算」、グアム基地建設・米軍再編に3兆円を費やす計画など「日米軍事同盟」には湯水のように血税を投入しています。
こんなことを続けていて、日々の暮らしに精いっぱいの若者、失業者、母子家庭や低年金の高齢者に重い増税をする―。こんな社会でいいはずはありません。
日本共産党が提案しているように、軍事費などの無駄遣いを正し、大企業・大金持ちへの過剰な減税を元に戻すなら、12兆円の財源を生み出すことができます。消費税を増税する必要はありません。
庶民増税論に陥る民主
一方、民主党は、当面は消費税を増税しないと言いながら、議論は進めるとしています。総選挙公約には「消費税を財源とする『最低保障年金』」の法律を13年までに成立させると書いています。
民主党も大企業・大金持ち減税や軍事費は「聖域」にするという立場です。その立場に立つ限り、結局「消費税しかない」という庶民増税論に陥らざるを得ません。
財源問題で問われているのは「財界・大企業中心」「日米軍事同盟絶対」から脱却するのかどうかという政治の姿勢であり、日本の新たな進路そのものです。