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2009年8月8日(土)「しんぶん赤旗」

主張

「安保防衛懇」報告

軍事同盟絶対の異常な提言


 政府の「安全保障と防衛力に関する懇談会」(座長・勝俣恒久東京電力会長)が4日、年末に予定される「防衛計画の大綱」の改定に向けての報告書をまとめ、麻生太郎首相に提出しました。

 報告書は、これまでは国際安全保障も日本防衛も「抑制的」だったが、これからは「より積極的に行動する時期」だとして、軍事的役割の拡大を求めています。「専守防衛」や「非核三原則」など憲法にそった平和原則を「検証する必要がある」とのべ、見直しを示唆しているのはそのためです。日米軍事同盟を絶対視した異常で危険な提言は認められません。

米核攻撃態勢の一翼に

 報告書は、日米同盟のなかで日本が「主体的」役割を果たすことをことさら強調しています。米国からいわれる前に日本がすすんで米軍事戦略に参加し、積極的な軍事的役割を果たすということです。米国とともにイラク侵略戦争を始めた英国をモデルとして、日本が危険な軍事的役割を買って出ようとしているのは明らかです。

 「主体的」に行うという「国際平和協力活動」は、米軍などに対する後方支援にとどまらず、イラク戦争協力のような米軍の戦闘・攻撃作戦と一体化した海外派兵になるのは必至です。

 「海賊対処」派兵法が可能にした任務遂行のための武器使用を一般化することも狙っています。海外派兵の強化・拡大の企てとそのための派兵恒久法の制定を認めるわけにはいきません。

 見過ごせないのは、「通常兵器を含む拡大抑止の信頼性が低下することがないよう留意する」と明記していることです。

 「拡大抑止」とは、核・通常両戦力で相手をせん滅するというブッシュ政権がうちだした米国の核攻撃政策です。2007年5月の日米合意文書に明記されていますが、今回の報告書はさらにふみこみ、日本がすすんで「拡大抑止」を後押しする態勢づくりをめざしています。日本への核兵器持ち込みを認める「日米核密約」の維持や、核攻撃を任務とする米軍機と自衛隊機の共同訓練の強化も「拡大抑止」の後押しになります。

 金食い虫の弾道ミサイル防衛システムは、「拡大抑止」を支える中核です。米国防総省の02年「核態勢の見直し」報告は、ミサイル防衛が「拡大抑止」の「攻撃能力に保護を提供する防衛システム」といっています。

 しかも、米国に向かうミサイルを日本が「迎撃」することや公海にいる米艦船を守るといい、そのために憲法解釈の変更も要求しています。日本を米核攻撃態勢に組み入れるために、政府見解でも憲法違反とされる集団的自衛権の行使にふみだすというのは、日本の平和も安全も考えない異常な態度というほかありません。

 敵基地攻撃能力保持の「検討」や武器禁輸原則の見直しなど、どれをとっても報告書は重大です。

平和の流れを直視せよ

 報告書が日米軍事同盟強化の理由にしているのは、世界の「脅威の拡散」です。しかし事実はイラク戦争の失敗を契機に米国の一国覇権主義は破綻(はたん)し、代わって平和の流れが大きくなっています。この平和の流れを見ずに安全保障を論ずることなどできません。

 憲法9条を生かした自主・自立の外交への転換こそ重要です。



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