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2009年8月7日(金)「しんぶん赤旗」

主張

原爆症合意

政府は誠意を尽くし救済を


 原爆症認定訴訟をめぐり、麻生太郎首相が原爆投下から64年にあたる6日、広島市で原告団らと救済策についての確認書を締結しました。確認書は一審で勝訴した原告を原爆症と認定し、原告にかかわる問題の解決のため基金を設けるなどの内容です。

 原爆症認定訴訟では、国が19連敗しています。確認書は被爆者の運動と裁判所の判断に押され、敗訴した原告を含め全員の救済へ道筋をつけたものです。政府が合意を誠実に実行するとともに、抜本的な被爆者救済につなげていくことが求められます。

やむにやまれぬ訴え

 広島、長崎を一瞬で焼き尽くし、20万人以上の人命を奪った原爆の投下は、いまもなお多くの被爆者の心と体を苦しめ続けています。とりわけ原爆特有の放射線による被害は、被爆から30年、40年たって突然がんなどを発症し、被爆者の生命さえ脅かしています。

 「原爆症」の認定を受ければ国の負担で医療などを受けることができる制度が被爆者のたたかいでつくられたのは、被爆から半世紀近くたった1994年です。しかし実際には原爆の影響を過小評価する認定基準のため、被爆者全体のわずか1%弱しか認定されなかったというのが実態でした。こうした中、被爆者が困難を押し自らのプライバシーもさらけ出して起こしたのが原爆症認定訴訟です。

 全国で起こされた認定訴訟の原告は17地裁で306人にのぼりました。裁判では次々原告勝訴となりましたが、国は一審で負けても認定せず、二審の高裁で負ければ初めて認定するという不当な態度を続けてきました。一審で勝訴したのに認定されず二審で争っている原告が47人もいます。症状の悪化や高齢化で、この間68人もの原告が亡くなりました。

 度重なる敗訴で、国は認定基準そのものの見直しにも追い込まれ、昨年も新しい審査方針を発表しました。しかしその後も3日の熊本地裁判決まで13の訴訟すべてで敗訴しています。新方針でも認定されなかった被爆者についても、原爆症と認定すべきだとする裁判所の判断が相次いでいます。

 国は新しい審査方針で認定数が増えたと主張してきましたが、被爆者全体でみれば1%弱が2%になったぐらいです。訴訟を起こしている以外にも、約7500人が認定審査を待っています。原告を全員救済するとともに、認定基準を拡大し、「疑わしきは被爆者の利益に」の原則に立って原爆症の認定を積極的にすすめ、被爆者への援護・救済を抜本的に拡大していくことが急務です。

被爆者の立場に立って

 今回の合意にもとづき、基金をつくる法律は、総選挙後の新しい国会で議員立法として審議されます。被爆者の立場に立った、早急な制定が求められます。

 また、被爆者と原告団などが厚生労働相と定期協議の場を設けることも合意されています。「今後、訴訟の場で争う必要のないよう」とあるように、認定制度のあり方など、国が被爆者の声に誠実に耳を傾けることが不可欠です。

 被爆者の願いは国による救済とともに、核兵器そのものを地球上からなくすことです。政府が広島、長崎の惨状を直視し、被爆国として核兵器廃絶の責任を果たすことが、いよいよ求められます。



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