2009年8月6日(木)「しんぶん赤旗」
ムダ削減の半分 国防支出を抑制
米オバマ政権、次期予算で計画
オバマ米政権は、膨大な財政赤字の圧縮のため軍事費の抑制に取り組み、国防総省予算にメスを入れる姿勢を打ち出しています。(田中一郎)
オバマ政権は2月に2010会計年度(09年10月〜10年9月)の予算教書の概要を議会に送付。5月に詳細な予算教書を提出しました。
予算教書とは、予算について政府が議会に勧告するものです。米国は日本と違い、予算をつくるのは議会の仕事です。議会は、予算教書を受けて、予算関連法案を作成し、審議します。
膨大な赤字
注目されるのは、5月の予算教書提出に合わせ、ホワイトハウスが発表した予算削減計画です。
「終了、削減、節約」と題したこの計画は、10会計年度予算だけで121事業を見直し、約170億ドル(約1兆6000億円)を節約するというものです。
発表前日の6日にホワイトハウスで行われたブリーフィングで、政府高官は「(170億ドル削減の)約半分は国防(予算)によるものだ」と説明。その中には、最新鋭のF22ステルス戦闘機の調達中止やミサイル防衛局予算の削減などが含まれています。(表)
オバマ大統領は翌日の演説で、「不必要な国防計画を廃止することで資金を節約する」と意気込みをみせました。
同政権が国防総省の予算まで削減対象にした背景の一つには、年間1兆ドル(約95兆円)を超える膨大な財政赤字の解決が差し迫った問題になっていることがあります。
オバマ大統領は「まるで財政赤字が重大ではなく、無駄が問題でないかのように支出する余裕はもはやない。われわれは、次の予算、政権、次の世代のために厳しい選択をしないわけにはいかない」(同演説)と強調しています。
議会の抵抗
それでも10会計年度の国防総省予算は、5338億ドル(約50兆7000億円)で前年度比で4%増です。このほかイラク・アフガニスタンでの戦費1300億ドル(約12兆4000億円)があります。
これらの予算には▽兵士の給与2・9%増▽傷病兵対策の強化▽無人機プレデター50機▽F35戦闘機35機▽特殊部隊2400人以上の増員―などが含まれています。
にもかかわらず、議会では、軍事費維持に固執する議員たちが、オバマ政権の国防予算削減案に抵抗しました。
上院軍事委員会と下院はF22調達経費を盛り込む国防予算権限法案をいったんは可決。オバマ政権は、調達に固執すれば拒否権発動も辞さないと警告し、その後、上下院とも追加調達を削除する法案を可決しました。ただ下院が可決した法案には、オバマ政権が削減対象にしている大統領専用ヘリ計画などが盛り込まれており、最終決着は9月になるとみられます。
今後10年間
さらにオバマ政権の国防予算への姿勢がうかがえるのは、5月にホワイトハウスが示した今後10年間の財政見通しです。
このなかでブッシュ政権の政策を続けた場合、10〜19会計年度の国防予算の合計は8兆1720億ドルになると見積もっています。
一方、オバマ政権が掲げる削減努力を続けた場合、同期間で6兆6690億ドルにとどまると計算。その削減効果は1兆5030億ドル(約142兆円8000億円)に達すると試算しています。
2010会計年度国防予算に対するオバマ政権の対応
○最新鋭F22ステルス戦闘機の調達中止
○C17輸送機の生産中止
○次期大統領専用ヘリVH71導入計画の中止
○次世代巡洋艦(CGX)の調達延期
○ミサイル防衛局予算の12億ドル削減
○戦闘救難ヘリ代替計画の中止