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2009年8月4日(火)「しんぶん赤旗」

熊本・原爆症認定訴訟第2陣

全員勝訴 国19連敗

地裁判決


 原爆症認定申請を却下された熊本県内の13人が却下処分取り消しなどを求めた訴訟の判決が3日、熊本地裁(石井浩裁判長、代読)で言い渡されました。石井裁判長はすでに原爆症と認められている原告を除く全員の却下処分の取り消しを命じました。今回の訴訟は原爆症認定熊本訴訟の第2陣で国は19連敗。

 原爆症認定をめぐっては厚生労働省が、度重なる司法判断を受け昨年4月、「新しい審査の方針」を策定。心筋梗塞(こうそく)や甲状腺機能低下症、肝機能障害も積極認定対象疾病としています。しかし「放射線起因性」が認められる場合と条件を付けています。今回は積極的認定対象疾病で申請し、いまだに原爆症と認められていない原告が含まれ放射線起因性をどう判断するかが注目されました。

 判決は、放射線起因性について被爆状況、その後の行動や生じた症状の有無、発生時期、内容、程度などを全体的、総合的に考慮。その上で、被爆の事実が申請疾病等の発生、治癒能力の低下をもたらした関係を是認できる「高度の蓋然(がいぜん)性」が認められるかどうかを「経験則に照らして検討すべき」だとし、全員を原爆症と認めました。

 判決後、原告団や弁護団は声明を発表。判決は「厚生労働省に対して『新しい審査の方針』のさらなる抜本的改定を迫るもの」としました。

 原爆症認定訴訟熊本弁護団の板井優弁護団長は「司法の認定基準を変えてほしいというメッセージだ。原告全員救済を求めて政府に決断を迫っていきたい」と語りました。


新基準の改定迫る判決

原告団・被団協など会見

東京

 原爆症認定集団訴訟の熊本地裁判決を受けて、全国の原告団・弁護団、日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)は3日、東京・厚生労働省内で記者会見をおこない、「訴訟の全面解決に向けた強いメッセージがこめられた判決だ」と評価しました。

 発表された声明は、今回の判決が、一連の訴訟での18の地裁・高裁判決同様、原爆症認定行政をきびしく断罪したとのべ、新基準の抜本的な改定を迫るものだと指摘。控訴し訴訟を引き延ばすことは許されないとして、勝訴原告の認定など原告全員の救済を図るべきだとしています。

 記者会見で、全国原告団の山本英典団長は「厚労省は熊本地裁判決を待たずに訴訟を解決すると約束したのに今日の判決となった。8月6日(の広島の原爆の日)まであとわずかだというのに全面解決への国の対応がなされていない。この怠慢に本当に許せない思いでいっぱいだ」とのべ、「判決は痛快だった。引き続き行政の責任を追及していく」と語りました。

 全国弁護団の安原幸彦副団長は、厚労省との非公式協議を続けているが解決のめどは立っていないと報告しました。文書で解決案の骨格を示し、5日を期限として政府側の回答を得るための交渉をおこなうと表明。「政府側の解決の枠組みがはっきりせず、強い憤りをもっている」とのべました。



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