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2009年7月29日(水)「しんぶん赤旗」

「国民が主人公」の新しい日本を

――日本共産党の総選挙政策

2009年7月28日 日本共産党


 日本共産党が28日に発表した「『国民が主人公』の新しい日本を――日本共産党の総選挙政策」の全文は、次の通りです。

国民へのアピール

自公政権を終わらせる“審判”をくだし、新しい日本の進路の“選択”を

 いよいよ総選挙です。こんどの選挙は、主権者国民が、自公政権に退場を求めるきっぱりした“審判”をくだすとともに、自公政治に代わる新しい政治のあり方、日本の進路を“選択”する歴史的な選挙です。自公政治を退場させ、「国民が主人公」の新しい政治を――この願いを日本共産党に託してください。

自公政権を終わらせる“審判”を――日本共産党はそのために全力をあげます

 いまや「自公政治ノー」は圧倒的多数の国民の声となっています。国民が自公政権を見放しているのは、首相の資質や政権運営の失態などの個々の問題に原因があるだけではありません。

 自公政治のもとで、国民のくらしの安心が奪われ、明日への希望さえも奪われてきました。「使い捨て」の不安定雇用が全労働者の3人に1人にまで広がり、年間を通じて働いても年収200万円にも満たない「働く貧困層」が1000万人を超えています。「人間はモノではない」「若者から夢と希望を奪う社会でいいのか」――切実で深刻な声が沸き起こっています。社会保障予算を連続的に削減し、制度の改悪を繰り返した政治によって、医療も、年金も、介護も、どの制度も深刻な危機にさらされ、医療難民、介護難民などといわれるような事態まで広がっています。庶民には年間で5兆円の増税、大企業と大資産家に年間7兆円もの減税が実施されるなど、弱肉強食の政治が貧困と格差に追い打ちをかけています。農業と中小企業の経営が立ち行かなくなり、地域経済は深刻な疲弊へと追いやられています。政府の調査でも6割の国民が「くらしが苦しくなっている」と訴えています。

 こんな政治が続けば国民のくらしは土台から崩され、日本の経済も社会も衰退してしまう――この不安と怒りが「自公政権は退場せよ」という大きな流れとなっているのではないでしょうか。自公政権が続くことは国民にとって百害あって一利なしです。日本共産党は、どんな問題でも、自公政権に正面から対決してきた政党として、自公政権を退場に追い込むために全力をあげます。国民の手で決定的な審判をくだそうではありませんか。

自公政治に代わる新しい政治、日本の進むべき道の“選択”を――日本共産党は二つの改革の旗印をかかげます

 同時に、こんどの総選挙は、自公政治を終わらせた後、それに代わるどのような新しい政治をつくるのか、新しい政治の進路を国民のみなさんが選択する選挙です。

 日本共産党は、自公政権を終わらせた後、日本の政治が取り組むべき二つの改革の「旗印」――(1)国民のくらしと権利をまもる「ルールある経済社会」を築く、そのために異常な財界・大企業中心の政治を転換する、(2)憲法9条を生かした自主・自立の平和外交でアジアと世界に貢献する、そのために異常な「日米軍事同盟絶対」の政治から脱却する――を掲げてこの総選挙をたたかいます。

1、国民のくらしと権利をまもる「ルールある経済社会」を

 世界的な経済危機の中で、日本の経済社会のあり方が根本から問われています。世界不況のなかで、ヨーロッパでも失業が大問題になっていますが、首都のど真ん中に「派遣村」ができたのは日本だけです。貧困と格差が広がり、まじめに働き、つましくくらしてきた人たちが、失業や倒産、病気などで簡単に貧困に陥ってしまう――日本では、経済危機の影響が特に残酷な形で現れています。これは、日本には国民のくらしをまもるまともなルールがなく、大企業の横暴勝手な行動が他の資本主義国に比べても野放しにされているためです。今こそ、こうした異常な財界・大企業中心の政治を根本からあらため、雇用、社会保障、中小企業、農林水産業、税制など経済のあらゆる分野で、国民のくらしと権利をまもるルールをつくる道にすすむべきです。

 人間らしく働けるルールを築きます……さんざん安い賃金で働かせ、不況になったらモノのように「使い捨てる」、その一方で、「サービス残業」「名ばかり管理職」など違法行為による長時間労働がはびこり、過労死・過労自殺が後を絶たない――こんな働かせ方で、日本の経済、社会、そして企業そのものに未来があるでしょうか。

 「派遣村」も、過労死も、自然災害ではありません。財界いいなりに労働法制の規制緩和をすすめ、安定した雇用を壊して、不安定雇用に置き換えてしまった政治の責任が問われています。労働者派遣法を抜本改正し「『雇用は正社員』が当たり前の社会」にしていく、同じ労働なら同じ賃金・休暇が保障される「均等待遇のルール」をつくる、法律で残業時間を規制し長時間労働をただして「過労死」をなくす、雇用・失業保険の抜本的な充実など、ヨーロッパでは当たり前になっている人間らしい労働のルールをつくります。

 くらしを支え、命と健康をまもる社会保障制度にたて直します……もともと日本の社会保障はヨーロッパなどと比べても貧弱だったうえに、自公政権が毎年、毎年2200億円もの社会保障予算を削減してきたために、日本の社会保障制度は、世界でも例がない異常な事態が、あらゆる分野で引き起こされるまでになっています。

 日本のように医療費の窓口負担が通院でも入院でも3割もかかるという国は、他の先進国にはありません。多くは無料か少額の定額制です。後期高齢者医療制度という高齢者を別枠の保険制度に囲い込んで差別医療を強いる制度をつくったのも、日本だけです。年金を受給するのに25年も保険料を払い続けなければならない国もありません。「加入期間」を設けていない国も多く、設けていても5〜10年程度です。「障害者自立支援」の名で、障害者福祉にまで応益負担を持ち込み、障害が重い人ほど負担が重くなるなどという制度をつくったのも日本だけです。

 しかも、所得の少ない人、生活に困窮している人が社会保障制度から排除されています。健康保険証の取り上げが34万世帯にのぼり、雇用保険を受けられる失業者は2割程度、生活保護でさえ受ける必要がある人の1〜2割しか受給していないとされています。

 お金のあるなしで格差をつけず、誰もが平等に必要な給付を受けられる社会保障のルールを確立し、憲法25条の生存権を保障する社会保障制度へと抜本的に拡充をはかります。

 消費税増税に反対、軍事費や大型開発などのムダをなくすとともに、大企業・大資産家へのゆきすぎた減税を見直して、社会保障などの財源を確保します……自公政権は、「福祉のための財源だから仕方がない」と言って、2011年度までに消費税を増税する法案を通すとしています。消費税は、導入の時も、5%への増税の時も「社会保障のため」が口実でした。しかし、消費税導入後の20年間で「良くなった」という社会保障制度が一つでもあるでしょうか。この間に、国民が払った消費税は総額213兆円ですが、同じ時期に法人3税の税収は183兆円も減っています。消費税は、大企業への減税の穴埋めにされたのです。

 消費税の増税は、「派遣切り」された失業者にも、生活保護の母子加算を切られて苦しい生活を強いられている親子にも、月に数万円の国民年金しか収入がない高齢者にも、容赦のない増税です。所得が少ない人ほど重い負担となる増税、貧困と格差を拡大する増税で「社会保障の財源をつくる」というのは本末転倒です。だから私たちは、「消費税増税は最大の福祉破壊増税」だと訴えています。しかも、消費税増税は最大の景気破壊増税です。日本共産党は、消費税増税に反対をつらぬきます。

 消費税増税に頼らなくても、安心できる社会保障のための財源をつくることはできます。

 まず、税金の無駄遣いをなくすことです。年間5兆円にものぼる軍事費に“軍縮のメス”を入れます。とりわけ、米軍への年間2800億円にものぼる「思いやり予算」や米国のグアムにつくる基地建設費用など「米軍再編」に3兆円もの税金を注ぎ込む計画は、即刻やめるべきです。大型開発の無駄、政官財のゆ着や特権による浪費、そして政党助成金などの税金の無駄遣いにも、徹底的なメスをいれるべきです。

 もう一つは、大企業・大資産家へのゆきすぎた減税を見直し、応分の負担を求めることです。自公政権は、庶民には保険料の値上げや増税を押しつける一方で、大資産家や大企業への減税を繰り返してきました。証券優遇税制は、大資産家の株式配当や譲渡所得には、何億円の所得があっても10%しか課税しません。アメリカ25%、フランス29%からみても異常な金持ち優遇税制です。大企業の税金と社会保険料の負担は、ドイツやフランスの7〜8割にすぎません。大企業や大資産家へのゆきすぎた減税を見直し、特権をなくし、所得に応じた負担で社会保障を支える、これが当たり前のやり方です。

 こうした歳出・歳入の改革をすすめれば12兆円の財源を生み出すことができます。消費税増税などに頼らなくても社会保障や国民のくらしを支える財源はしっかりつくれます。どうか安心して消費税増税反対の声をあげてください。その声を日本共産党に託してください。

 「財界・大企業中心」の政治をただしてこそ、国民のくらしはまもれます……どうして、日本に「働く貧困層」が広がり、「使い捨て」の働かせ方がこれほどまでに広がってしまったのでしょうか。その出発点は、1995年に財界(日経連=現・日本経団連)が、「新時代の『日本的経営』」という雇用戦略を発表し、これを受けて労働者派遣法をはじめ、労働法制の規制緩和が次々におこなわれたからです。

 日本の社会保障をここまで貧しくした社会保障予算の連続削減政策も、日本経団連会長が、経済財政諮問会議のメンバーとしての地位を利用して「社会保障については、大胆な制度改革を前提として要求基準を定めるべき」だという号令を出したのがきっかけでした。

 消費税の増税と法人税の減税を政府に要求し続けているのも財界です。2003年1月に発表された日本経団連の提言「活力と魅力溢れる日本をめざして」は、「消費税率16%」と「法人税の大幅引き下げ」「企業の社会保険料負担をなくす」をセットにした要求をしています。

 どんな問題でも大もとには、財界・大企業の身勝手な要求、違法・脱法行為も平然と繰り返す横暴な態度があります。

 「財界・大企業中心の政治」をただすには、何よりも、企業献金を禁止することが必要です。お金をもらっていて「財界・大企業にモノを言う」ことはできません。しかも、いま日本経団連は、献金をするときに政党の政策の「通信簿」までつけて、財界の要求により近い政党ほど多くの献金をするという方針をとっています。巨額のひもつき献金に頼っているようでは、「モノを言われる」だけになってしまいます。

 また、経済財政諮問会議とか規制改革会議など、経団連会長をはじめ財界の首脳と政府寄りの学者、そして官僚がいっしょになって、財界の利益最優先の政策を、日本経済全体のまともな方針だとして押しつける仕組みをなくすことが必要です。政府のもとに設置される各種の審議会などは、日本社会を公正に代表できるものにするべきです。この立場から現行制度の抜本的見直し・改革をおこないます。

 さらに、日本の政治は、アメリカからの経済要求、対日要求にとても弱いという特徴があります。郵政民営化も、日本の財界、銀行や保険業界だけでなくアメリカの保険業界からの強い要求で、ブッシュ大統領と小泉首相の日米首脳会談の議題にまでなっていました。アメリカ政府が日本をあたかも属国のようにして「年次改革要望書」を毎年送りつけてくるような仕組みをなくすことも必要です。

 「財界・大企業にモノが言える党」が必要です……こうした政策を果断にすすめる「財界・大企業にモノが言える党」が必要です。日本共産党は、「雇用をまもれ」、「働いてきた人たちを路頭に迷わせるな」と、日本経団連にもトヨタやキヤノンなどの大企業にも堂々と申し入れました。大企業の違法・不法な「非正規切り」には、国会できびしく追及するとともに、立ち上がった労働者と連帯し、労働組合とも力をあわせて雇用破壊とたたかっています。

2、憲法9条を生かす自主・自立の外交で、世界とアジアに貢献する日本に

 世界はいま大きく変わりつつあります。イラク戦争の失敗は、アメリカ一国がわがもの顔に世界を支配しようとする「一国覇権主義」の時代が終わったこと、軍事力にものをいわせて世界の問題を“解決”するやり方がもはや通用しないことをはっきりとしめしています。これに代わって、国連憲章にもとづく新しい世界秩序への流れが大きく広がりつつあります。アジアでは、EU(欧州連合)が東南アジア友好協力条約(TAC)に加入を決め、アメリカも条約に署名しました。これによってTAC加入国は52カ国、世界人口の7割近くに増え、世界を覆う一大潮流となります。また、アメリカ大陸でも、「米国の裏庭」といわれた中南米の歴史に終止符がうたれ、対等・平等の新たな友好関係の構築が日程にのぼりはじめています。

 日本は、“戦争はしない”“国際紛争は平和的に解決する”ことを憲法に明記している国です。この憲法9条をまもり生かして、世界の前向きの変化を促進し、世界とアジアの平和に貢献する日本をめざします。

 地球上から核兵器をなくすために積極的な役割を果たします……いま、人類の悲願である「核兵器のない世界」をめぐって、世界の歴史の劇的な変化への大きな一歩が刻まれつつあります。オバマ米大統領が4月にプラハでおこなった演説は、世界に大きな問題を提起しました。オバマ演説は、アメリカの大統領として初めて、「核兵器のない世界」を追求することを米国の国家目標にすると宣言しました。そして、広島・長崎への核兵器使用が人類的道義にかかわる問題であることを初めて表明しました。そのうえでオバマ演説は、核兵器廃絶にむけた世界の諸国民の協力を呼びかけています。

 日本共産党の志位委員長は、この演説を歴史的意義をもつものとして重視し、オバマ大統領にあてて、「核兵器廃絶のための国際条約の締結をめざして、国際交渉を開始するイニシアチブを発揮すること」、「2010年のNPT(核不拡散条約)再検討会議において、核保有国によって、核兵器廃絶への『明確な約束』が再確認されること」を求める書簡を送りました。これにたいして米国政府から、書簡への感謝を表明し、「この問題(核兵器のない世界)にたいするあなたの情熱をうれしく思う」とのべる返書が届けられました。私たちは、「核兵器廃絶をめざす国際交渉を開始せよ」の声と運動を広げるために全力をつくします。

 この問題での自公政権の対応は、時代の巨大な流れにまったく逆行するものです。核兵器廃絶にむけて歴史が動きはじめているときに、核兵器廃絶のためのイニシアチブをなにひとつとらず、米国の核戦力への依存を繰り返し求める態度をとっています。「唯一の被爆国」の政府として恥ずかしいかぎりです。

 「核密約」を全面公開させ、「非核の日本」を実現します……そればかりではありません。日米間の核密約問題をめぐって、複数の外務次官経験者が「密約はあった」と証言するなど、日本への核持ち込みの「黙認」を取り決めた密約の存在が、いまあらためて国民の批判を浴びています。ところが麻生政権は、あくまでも「密約はない」と言い逃れようとしています。こんなでたらめは絶対に許せません。核密約に関するすべての記録を公開してきっぱりと廃棄し、今後、いかなる形であれ、核兵器を積んだ軍艦や航空機の日本への寄港や一時乗り入れを認めない態度を明らかにすべきです。

 同時に、この問題をめぐって、わが国の「国是」とされてきた「非核三原則」(つくらず、持たず、持ち込ませず)を見直して、核持ち込みを公然と認めよという動きが強まっていることも見逃せません。世界で「核兵器のない世界」への巨大なうねりが広がりつつあるまさにそのときに、「非核三原則」に風穴をあける――被爆国日本が絶対にやってはならないことであり、世界史への重大な逆行です。日本共産党は、「非核三原則」を順守させ、名実ともに「非核の日本」を実現するために全力をつくします。

 北朝鮮が5月におこなった核実験は、北朝鮮に「核実験を実施しないこと」を求めた国連安保理決議に違反するとともに、国際世論と、国際政治で新たに広がりつつある核兵器廃絶への具体的前進の機運に挑戦するものです。日本共産党は、北朝鮮の行動に対してきびしく抗議しています。名実ともに「非核の日本」をつくりあげてこそ、「核兵器のない世界」の実現にむけて、被爆国日本の政府がそれにふさわしいイニシアチブを発揮できます。また北朝鮮との関係でも、相手に対して「核兵器を捨てよ」と求める強い立場に立てます。

 「軍事偏重」「日米同盟絶対」外交から、憲法9条にもとづいて世界の前向きの変化を促進する外交に転換します……世界が前向きに変化しているときに、自公政権は、“軍事偏重”でやみくもに海外派兵を押しすすめ、憲法を改悪して、日本を「海外で戦争をする国」にしようとする動きを強めています。憲法9条がめざす「戦争のない世界」の理想が、まさに世界政治の現実の流れとなりつつあるなかで、世界にさきがけて憲法9条を掲げたその日本が、軍事偏重の政治にいつまでもしがみついていていいのかが正面から問われています。

 日米安保条約=日米軍事同盟を廃棄し、アメリカと対等・平等の関係をつくります……自公政権の「軍事偏重」政治の大もとに、日米安保条約=日米軍事同盟があります。日米安保条約は、世界とアジアの軍事緊張を高めるとともに、沖縄をはじめ日本中で「基地あるがゆえ」の苦しみを国民に押しつけています。

 世界が変化するなかでわが国が進むべきは、日米安保=日米軍事同盟を廃棄し、憲法9条にもとづいて世界とアジアの平和に貢献する道です。アメリカとの関係も、戦後60年余続いてきた「対米従属」から抜け出して、対等・平等の日米友好条約を結びます。

 国民のみなさん

 自公政治に代わる根本的対案――二つの改革の「旗印」を掲げ、行動する日本共産党を伸ばし、安心と希望の新しい日本をつくろうではありませんか。

日本共産党は、「国民が主人公」の新しい政治めざして「三つの仕事」をすすめます

 こんどの総選挙で、民主党中心の政権ができる可能性が大きいことは事実です。民主党とは、「財界中心」「軍事同盟絶対」の政治など、国の政治の根本的な問題で立場の違いがあります。民主党の政策は、後期高齢者医療制度の廃止など個々には日本共産党と一致する部分もあります。同時に、憲法改定や消費税増税など容認できない政策も表明しています。そこで、民主党中心の政権がつくられた際には、日本共産党は、建設的野党としての立場を堅持し、国民の利益にてらして、「良いものには賛成、悪いものにはきっぱりと反対」という態度でのぞみ、次の三つの仕事に取り組みます。

 国民の願いを実現する「推進者」として、積極的な提言で国政を動かします……切実な国民の要求を実現するために、積極的提言をおこない、その実現のために、一致点で協力し、政治を前に動かす「推進者」の仕事を果たします。

 日本共産党は、労働者派遣法の抜本改正、後期高齢者医療制度の廃止、障害者自立支援法の廃止による応益負担の撤回、食料自給率の向上をめざした農産物の価格保障・所得補償の実施、中小企業支援の拡充、米軍基地の縮小・撤去、地球的規模での核兵器廃絶へのイニシアチブの発揮など、国民の立場に立った積極的提言をおこない、その実現のために、一致する点での共同をすすめます。

 消費税増税、憲法改定の推進、衆院比例代表の削減など、間違った政治を許さない「防波堤」の役割を果たします……すでに民主党が表明している、国民を苦しめ、日本と世界の平和に逆行する危険な諸政策を具体化させる動きがおこった時には、それを許さない「防波堤」の役割を果たします。

 民主党は、「年金財源のため」として消費税増税が必要という立場を表明しています。憲法でも、民主党の鳩山代表は、「新憲法試案」で9条2項を削除して「自衛軍」を書きこむという主張をしています。非核三原則でも、アメリカとの「密約」が動かしがたい事実となったことを理由にして、「持ち込ませず」の原則をはずして、「二原則」に後退させてしまうという考えを鳩山代表は表明しています。

 さらに民主党は、比例代表選挙の定数を80削減するとしています。直近の国政選挙の得票で試算すると、自民・民主の「二大政党」が、67・6%の得票で衆議院の議席の95・3%を占めることになります。共産党をはじめ他の政党は、32・4%の比例得票があっても、議席はわずかに4・7%になってしまいます。民意を切り捨て、議会制民主主義の根本を覆す動きを許すわけにはいきません。

 日本共産党は、くらし、平和、民主主義を壊すような暴走が始まれば、これに正面から立ちはだかります。こうした問題でも、一致点での政党間の協力をすすめるとともに、広く国民世論を喚起し、国民の運動と共同してたたかいの先頭にたちます。

 「国民が主人公」の民主的な政権に向けた国民的な共同をすすめます……世界も日本も大きな激動の時代に入っています。これまでのような「財界・大企業中心」、「軍事同盟絶対」の政治では、大きな時代の変化に対応できません。日本共産党は、国民のくらしと権利をまもる「ルールある経済社会」を築く、憲法9条を生かした「自主・自立の平和外交」で世界とアジアの平和に貢献する国になる――こうした方向での国民的共同を広げます。

 日本共産党がこの総選挙で躍進すれば、いまの激動の時代に、「国民が主人公」の民主的政権=民主連合政府への大きな一歩を踏み出す道が開かれます。

 国民のみなさん

 日本共産党を伸ばして、「自公政権退場」の“審判”をくだし、新しい日本の進路を“選択”してください――私たちは、このことをすべての有権者に訴えます。比例代表では日本共産党と書いていただき、国民の立場でスジを通す党を伸ばしてください。日本共産党を伸ばしてこそ、自民党政治に代わる新しい政治、「国民が主人公」の新しい日本に踏み出すいちばんの力になります。国民のくらしをまもり、願いを実現する政治をすすめる力にもなります。みなさんのご支持、ご支援を心からお願いします。


「国民が主人公」の新しい日本をめざす日本共産党の基本政策

【1】財界・大企業中心の政治をただし、くらしと権利をまもる「ルールある経済社会」を築きます

1、人間らしく働けるルールをつくり、安心して働き続けられる社会に

 雇用情勢は悪化の一途をたどり、厚生労働省の調査でも、昨年10月から今年9月までに失職する非正規労働者は22万3千人にのぼり、リストラの波は正社員にも広がっています。自動車、電機などの大手製造業20社だけで、この半年間に8万7千人の従業員を削減する(共同通信の集計)など、日本有数の大企業が先頭にたって雇用破壊をすすめています。

 こうした大企業の行動を後押ししたのが、労働者派遣法や労働基準法などの相次ぐ「規制緩和」です。労働者派遣の原則自由化を決めた1999年の派遣法改悪に日本共産党以外のすべての政党が賛成するなど、「使い捨て」の働かせ方を広げた政治の責任は重大です。

 大企業は「赤字経営」とはいっても、内部留保が全体で230兆円にのぼり、製造業大企業だけでも、この5年間に95兆円から120兆円へと25兆円も増大させています。財界や大企業は、「雇用には使えない」といいながら、内部留保を取り崩して株主への配当をしており、雇用を維持する体力は十分あります。

 雇用破壊は、内需の柱である個人消費、家計に大きな打撃となり、さらに景気全体が悪化するという悪循環を引き起こしています。雇用をまもり、人間らしい労働のルールをつくる雇用政策に大きく転換することは、経済と産業のまともな成長と日本社会の安定のためにも、避けて通れません。

(1)大企業に雇用への社会的責任を果たさせ、無法な「非正規切り」やリストラ、雇用破壊をやめさせます 

 「非正規切り」の多くは、偽装請負、偽装派遣、契約途中の解雇、派遣期間違反など、現行法でも違法・脱法行為のもとでおこなわれています。不当に解雇された労働者が全国で、労働組合をつくり、たたかいに立ち上がっています。

 違法行為を告発し、正規雇用を求める申告が広がり、マツダや東芝のグループ会社などに、労働局から是正指導もおこなわれています。裁判でも、いすゞの「非正規切り」が違法行為であると断罪されています。日本共産党は、労働者をはげまし、連帯して、雇用をまもるために全力をあげます。

 監督・勧告・指導などあらゆる手段で雇用をまもる労働行政に……現行の労働者派遣法でも、偽装請負などの期間を含め3年以上派遣労働者を受け入れていた企業には直接雇用をする義務があります。本来なら、派遣先企業に直接雇用されるべき多くの派遣労働者が「派遣切り」されています。政府が、違法・脱法の「派遣切り」「非正規切り」をやめさせれば、多くの労働者の生活と雇用をまもることができます。そのために労働者の申告、相談に親身になって対応できるよう労働局の体制強化も必要です。

 日本共産党は、国会でも、日本経団連の代表や雇用破壊をすすめている大企業の経営者を参考人として招致するなど、国政調査権を発動し、機敏に対応することを求めていきます。

 人権さえも踏みにじる退職強要や強制配転など乱暴なリストラをやめさせる……大量解雇の波は正社員にも及び始めています。無理やり「自主退職」に追い込むための「パワーハラスメント」や強制配転なども違法行為です。判例として確立し、労働契約法にもその趣旨が反映されている「整理解雇4要件」((1)解雇をしなければ企業の維持・存続ができないほどの必要性、(2)解雇回避の努力、(3)対象となる労働者の人選が合理的、(4)労働者に十分な説明をして納得を得る努力)を厳格にまもらせていきます。

(2)失業者への生活援助を抜本的に強化します

 日本は、先進国のなかでももっとも失業者に冷たい国になっています。国際労働機関(ILO)によれば、日本は失業給付を受けていない失業者の割合が77%にものぼっており、ドイツやフランスの10%台と比べてもあまりにも異常です。雇用保険の特別会計にため込まれている6兆円もの積立金を有効に活用するなら、もっと大規模に、もっときめ細やかに、失業者への生活支援をすすめることができます。

 雇用保険を抜本的に拡充する……09年の雇用保険法の「改正」では、雇用保険から排除されている失業者1008万人のうち適用対象になるのは148万人にすぎません。雇用保険の拡充は、「失業給付が切れる」から劣悪な労働条件でも就職せざるを得ないという状況を改善し、「働く貧困層」をなくしていくうえでも重要です。失業給付期間を、現在の90〜330日から180〜540日程度までに延長する、給付水準の引き上げ、受給資格の取得に要する加入期間の短縮、退職理由による失業給付の差別をなくし、受給開始時の3カ月の待機期間をなくすなど拡充します。

 失業給付を受けられない失業者などへの支援をすすめる……政府がつくった失業者への生活援助制度は、「住宅喪失者」とか「職業訓練」などの条件をつけたうえに、3年という期限付きです。生活援助を、生活に困窮しているすべての失業者を対象にするように抜本的に拡充するとともに、恒久的な生活扶助制度として確立します。

(3)新しい雇用の創出と再就職支援に取り組みます

 介護、医療、保育など社会保障を充実させ、新しい雇用をつくる……社会保障分野は、「雇用誘発効果」が「介護」が全産業中1位で、「社会福祉」3位など、国がまともに取り組めば大きな雇用が生まれます。しかし、「派遣切り」で仕事を失った人の就労の場として介護が注目されても、政府の社会保障削減、介護報酬の引き下げによって、労働条件が非常に劣悪になっているために、新規雇用創出どころか、離職と介護現場の人手不足が深刻化しています。医療や保育なども含めて、国の社会保障政策を削減から拡充に転換してこそ、新しい雇用も創出できます。とくに劣悪になっている介護と障害者福祉の労働者の賃金を月3万円以上引き上げるために特別の公費投入をおこないます。

 自然エネルギーをはじめ環境での雇用創出をすすめる……地球温暖化などの環境問題に真剣に取り組む政策に転換し、自然エネルギーなどの分野で新規雇用を創出します。自然エネルギー導入の先進国であるドイツでの実績にてらせば、日本でも、年間約6万人の雇用を増やし、2030年には約70万人の雇用を擁する産業に発展させることも可能です。

 職業訓練を充実・強化し、新しい分野の仕事に就けるようにする……日本は失業者の生活支援も貧弱ですが、再就職支援の対策費も、ドイツ、フランスなどの5分の1程度です。公立の職業訓練校が削減されたこともあって、公共職業訓練、民間委託の訓練ともに2倍近い倍率になっています。希望するすべての失業者に職業訓練の機会を提供できるようにするとともに、技術や技能、資格を取得できるように職業訓練を充実することや相談体制の整備など再就職支援を強化します。

(4)労働者派遣法の抜本改正をはじめ、雇用の安定と労働者の権利をまもる労働法制に

 派遣労働を臨時的・一時的な業務に限定し、常用雇用の代替にしてはならないことを明記するとともに、もっとも不安定な働かせ方となっている登録型派遣を原則禁止し、専門業務にきびしく限定します。製造業への派遣を禁止します。派遣期間違反、偽装請負など違法行為があった場合には派遣先企業が直接雇用していたとみなす「みなし雇用」の導入など、労働者派遣法を派遣労働者の雇用と権利をまもる派遣労働者保護法に抜本改正します。数カ月単位の雇用契約を繰り返す「細切れ雇用」をなくすために、期限の定めのある雇用契約を合理的な理由のある場合に限定するなど、非正規労働者の雇用と権利をまもります。「同一価値労働同一賃金」の原則に基づいた均等待遇の法制化をすすめます。

(5)長時間・過密労働を是正し、過労死を根絶します

 失業者が増える一方で、過労死基準を超えるような長時間労働がまかり通っています。「サービス残業」を根絶するとともに、残業の上限を法律で制限し、残業代の割増率を50%に引き上げるなど、過労死や「心の病」を広げている長時間労働を是正します。“一人で二人分働かせる”ような長時間労働を是正することは、新規雇用を創出することにもつながります。

(6)最低賃金の引き上げ、公契約法(条例)などで「働く貧困層」をなくします

 全国最低賃金制度を確立し、当面、最低賃金を時給1000円以上に引き上げ、くらしと地域経済の底上げをはかります。そのために、中小・零細企業には雇用保険財政なども活用して必要な賃金助成をおこないます。

 国や自治体などが事業の外部委託を発注する際に、低賃金を押しつけるために生まれている「官製ワーキング・プア」を是正します。発注する公的機関と受託する事業者の間で結ばれる契約(公契約)に、生活できる賃金など人間らしく働くことのできる労働条件を定めるようにし、そのための法律や条例を定めます。

2、くらしを支え、生存権を保障する社会保障制度に――削減から拡充への大転換を

 深刻な経済危機だからこそ、自公政権がとりつづけてきた社会保障削減路線を撤回し、くらしを支える社会保障制度の拡充へと大きく転換することが強く求められています。

 自公政権は、社会保障予算の削減・抑制と社会保障制度の改悪を繰り返してきました。その結果、日本の社会保障は、社会的弱者が制度から真っ先に排除され、貧困と格差を是正するどころか、「生活苦で保険料が払えないと保険証を取り上げられ医者にもかかれない」など、貧困に追い打ちをかけています。社会保障の負担増は、国民のくらしに重くのしかかり、給付、サービスの削減は、生活と将来への不安を増大させています。医療体制の崩壊や介護の人手不足など、社会保障の根幹にかかわる深刻なゆがみが顕在化し、病院が次々に閉鎖される、お産ができない、救急車を呼んでも病院までたどり着けないなど、これまで「当たり前」だったことさえも、まともに機能しなくなっています。

 憲法25条は、すべての国民に生存権を保障し、社会保障の増進を国の責務として明記しています。日本共産党はこの立場から、医療・年金・介護をはじめ社会保障の各分野で、負担の軽減と不安の解消をすすめます。

 社会保障の拡充は、現在のくらしを支え、将来不安の解消にも大きく貢献し、内需の大きな柱である個人消費をあたためます。さらに、雇用や地域経済にも大きく波及します。社会保障の削減から拡充への転換は、景気対策としても大きな力を発揮します。

(1)医療にかかる負担を軽減し、“医療崩壊”の危機を打開します

 お金のことを心配して医者にかからず重病化してしまう、国保料を払えない滞納世帯が2割におよぶ――まともな医療保険制度とはよべない事態がひろがっています。「保険証1枚」あれば、誰でも、どんな病気でも医療が受けられる――公的医療保険制度の原点です。日本共産党はこの立場での改革をすすめていきます。

(1)後期高齢者医療制度を廃止します

 高齢者だけ別の医療保険制度に囲い込む――こんな世界にも例がない差別医療制度は廃止し、老人保健制度に戻します。これにともなう国保の財政負担は国が補てんします。

(2)先進国では当たり前の“窓口負担ゼロ”をめざして、負担軽減をすすめます

 外来でも入院でも3割もの窓口負担をとられるなどという国は、先進国では日本だけです。公的医療制度がある国では、窓口負担はゼロか、あっても少額の定額制です。日本も、80年代前半までは、「健保本人は無料」「老人医療費無料制度」でした。この当たり前の制度を崩し、“国際標準”から著しく後退させてしまったのが自民党政治です。保険料は所得など能力に応じて負担し、必要な医療は誰もが平等に受けられる、この方向にむかって日本の医療をたて直します。

 子どもと高齢者の医療費を無料にする……“窓口負担ゼロ”をめざして負担軽減に踏み出します。その第一歩として、就学前の子どもの医療費無料制度を国の制度として創設するとともに、75歳以上の高齢者の医療費を無料化します。さらに、現役世代の医療費3割負担も、健保も、国保も、本人も、家族も、引き下げをめざします。自公政権が来年度からの実施を決めた70〜74歳の1割から2割負担への2倍の値上げを撤回します。

 国の責任で、国保料(税)をひとり当たり1万円引き下げる……国民健康保険は、加入者の所得が減っているにもかかわらず、保険料がどんどん値上げされ、くらしを圧迫し、深刻な負担になっています。その最大の要因は、1984年以来、国庫負担が削減されてきたことです。いまこそ負担増から軽減に、国が責任を果たすため、国庫負担を引き上げます。

 国保証取り上げをやめる……失業や経営難などで生活に困っている人から、「滞納」を理由に国民健康保険証を取り上げるという無慈悲な行政をやめさせます。

(3)“医療崩壊”の危機を打開し、安心してかかれる医療体制を確立します 

 医師・看護師を計画的に増員し、医療体制をたて直す……先進国で最低レベルの医師数を計画的に増員し、OECD(経済協力開発機構)加盟国の平均並みの医師数にします。そのために医学部入学定員を1・5倍化します。看護師の増員と労働条件の改善で、看護師200万人体制を確立します。“医療崩壊”をもたらした大きな要因は診療報酬の連続引き下げです。診療報酬の改革――「総額削減」、保険外診療の拡大をやめ、安全・有効な治療はすみやかに保険適用する、薬・医療機器にかたよった報酬のあり方を見直し、医療従事者の労働を適正に評価するなどをすすめ、外来でも入院でも、医科でも歯科でも、安全・安心で質の高い医療が受けられる医療提供体制を確立します。

 国公立病院など公的医療機関への支援を強める……政府は、「採算重視」「コスト削減」を強要し、「不採算部門」を口実に産科・小児科・救急医療などを率先して切り捨ててきました。総務省の「公立病院改革ガイドライン」が、自治体病院の閉鎖や病床削減に拍車をかけています。国の政策が各地の医療崩壊の“引き金”をひいています。

 不採算部門やへき地医療をになう公的医療機関の役割を投げ捨てる政府のやり方をあらため、国公立病院、厚生年金病院、社会保険病院など公的医療機関の乱暴な統廃合や民営化をやめ、地域医療の拠点として支援を強めます。

 難病や新型インフルエンザ、がん、ウイルス性肝炎などへの対策の強化……感染症治療体制を緊急に整備します。肝炎対策基本法を制定し、すべてのウイルス性肝炎患者に対する恒久的な総合対策を確立します。

 原爆症認定訴訟を全面解決し、認定基準を抜本的に改善する……広島、長崎での被爆から64年を迎え、高齢化した被爆者の願いにこたえ、根本的な解決をはかります。

(2)最低保障年金制度をつくり、無年金・低年金問題の解決をはかります

 日本の年金制度の最大の問題は、無年金者が100万人を超え、国民年金だけの受給者は平均月額4万7千円など、日々の生活をまかなえない低額年金の人々が膨大な数にのぼっていることです。次の方向で無年金・低年金問題を解決し、年金全体の底上げをはかっていきます。

 受給条件を「25年以上」から「10年以上」にただちに引き下げる……保険料を「25年以上」納めないと1円も年金が支給されないという過酷な制度は日本だけです。アメリカでも年金の受給資格要件は約10年以上で、イギリス、フランス、カナダなど、受給の資格要件に加入期間がない国も少なくありません。

 年金額を月額5万円底上げする最低保障年金制度をつくり、国民年金では月額8万3千円に引き上げる……日本の年金制度には、諸外国では当然の最低額保障の仕組みがありません。全額国庫負担による最低保障年金制度の創設に踏み出します。すべての国民に当面月5万円の最低額を保障し、その上に支払った保険料に応じた額を上乗せします。それにより、国民年金の満額を現行の月額6万6千円から8万3千円へと引き上げます。厚生年金も、基礎年金部分を同様に引き上げていきます。これにより無年金者はなくなります。

 「消えた年金」「消された年金」問題の解決……“被害者を一人たりとも残さない”“一日も早く”という立場で、国の責任で解決します。

 公的年金等控除など高齢者増税を見直す……この間におこなわれた高齢者の所得税・住民税の増税について、公的年金等控除の最低保障額を140万円に戻すとともに、所得500万円以下の高齢者には老年者控除を復活します。

(3)安心して利用できる介護制度への抜本的見直しをすすめます

 高すぎる保険料・利用料、在宅介護での利用制限、増え続ける特養老人ホーム待機者など、「介護地獄」は解決されず、介護を苦にした痛ましい事件も続いています。安心して利用できる介護制度への抜本的な見直しは待ったなしです。

 保険料・利用料を減免し、経済的理由で介護を受けられない人をなくす……介護保険への国庫負担割合をただちに5%引き上げ、国の制度として保険料・利用料の減免制度をつくります。さらに、国庫負担を介護保険発足以前の50%にまで戻し、所得の少ない高齢者には原則として負担を求めない仕組みをつくるなど、お金の心配なく利用できる制度にしていきます。

 要介護認定の改悪や「介護とりあげ」を中止する……要介護認定の改悪は大きな見直しを迫られましたが、白紙撤回が必要です。要介護認定制度や利用限度額は廃止して、現場の専門家の判断で必要な介護を提供できる制度に改善します。訪問介護、通所介護、福祉用具の利用制限などの「介護とりあげ」をやめます。

 介護施設などの整備をすすめる……特別養護老人ホームの待機者が38万人にのぼることは重大です。国が2006年から基盤整備への補助金をカットしたことが大きな原因です。5カ年計画で特養老人ホームの待機者を解消し、「介護難民」をなくすため、特養老人ホームや生活支援ハウスなどの緊急整備を国の責任ですすめます。療養病床の廃止・削減計画を白紙撤回します。

 介護労働者の労働条件を改善し、人材不足を解消する……介護報酬を5%引き上げるとともに、介護報酬とは別枠の公費投入で、介護労働者の賃金を月3万円以上引き上げます。2014年度をめどに、150万人の介護従事者を養成・確保します。

(4)障害者自立支援法を廃止し、障害者福祉・医療を拡充します

 障害者の福祉や医療は、本来、利用料負担を求めるべきものではありません。障害者自立支援法を廃止し、「応益負担」を即刻撤廃します。福祉施設・作業所への報酬の日払い制度をやめ、大幅に引き上げます。障害者福祉で働く労働者の賃金を国の責任で3万円以上引き上げます。

 障害者関連予算は、ドイツの3分の1、スウェーデンの7分の1しかありません。これを大幅に増額し、日本国憲法と国連「障害者権利条約」を踏まえた総合的な福祉法制を確立して、障害者福祉・医療の拡充をはかります。

(5)貧困の実態を国が把握し、憲法25条の生存権を保障する生活保護に

 日本では、判明しているだけでも年間100人近くが餓死し、「経済的な困難」で自殺する人が後を絶たないなど、貧困の広がりが深刻な社会問題となっています。日本の相対的貧困率は、OECD加盟の先進国中で第4位です。ところが、いま生活保護を受けている人は対象となるべき人の1〜2割程度にすぎないとされています。日本政府は他の先進国では当たり前の「生活保護の捕捉率」(生活保護基準以下でくらす人たちのうち、どれだけ保護を受けているか)の調査さえしていません。政府として貧困の実態を把握することは、国民を貧困からまもる政治姿勢にたつ大前提です。貧困の実態調査をおこない、政府が貧困を減らす具体的な目標を策定します。

 保護申請の門前払いをやめ、老齢加算・母子加算の復活を……住所の有無、年齢などを理由にした保護申請の門前払いをやめ、当座の所持金のない人には即日で保護決定をくだすなど、生活保護法の本来の趣旨にそった行政に転換します。生活保護の老齢加算・母子加算を復活します。

3、安心して子育てできる社会に――総合的な子育て支援をすすめます

 子育て支援は、仕事と子育ての両立、経済的負担の軽減、「子どもの貧困」の解決など、“子育てがしにくい”という日本社会のあり方への総合的な取り組みが必要です。

(1)子育てと仕事が両立できる社会に

 人間らしく働けるルールをつくる……残業規制の強化など長時間労働の是正、育児休業制度の改善、妊娠・出産にともなう不当な解雇や退職勧奨、不利益な扱いをなくす、若い世代に安定した雇用を取り戻すなど、子育てしやすい働き方、賃金・労働時間を保障することが大切です。

 保育制度の改悪を中止し、待機児童を“ゼロ”にする……保育所に入れない待機児童は4万人にのぼり(08年10月現在)、認可外施設やベビーホテルなどに預けられている子どもや保育所への入所を希望している潜在的な待機児童なども含めると100万人近くになるとされています。待機児童をすみやかにゼロにするために、国が計画をつくり、国の責任を明確にして認可保育所を整備していきます。希望者全員が入所できるよう学童保育を抜本的に拡充します。

 政府・厚労省は、保育所にたいする市町村の義務をなくし、保護者と保育所の「直接『契約』・自己責任」にする「改革」を実施しようとしています。保育料に「応益負担」を導入する仕組みに変えることも検討しています。保育への公的責任を後退させ、負担増や格差を持ち込む大改悪を中止させ、公的保育をまもり、充実させます。保育料、幼稚園授業料の負担軽減をはかります。

(2)医療費無料化、児童手当を現行の2倍の月1万円に

 子どもの医療費無料制度を国の制度として確立し、そこに自治体の独自助成を上乗せできるようにして、医療費負担軽減を拡充します。小学校6年生までの児童手当を、ただちに現行の2倍に引き上げ1万円にします。18歳までの支給をめざし改善していきます。その際、扶養控除、配偶者控除の廃止などのいわゆるサラリーマン増税との「抱き合わせ」での手当増額はおこないません。

(3)教育費負担を軽減し、経済的理由で学業をあきらめる若者をなくします

 高校入学から大学卒業にまでかかる費用は子ども1人当たり平均1045万円、教育費は年収の34%にのぼり、とくに年収200万〜400万円の世帯では55・6%に達します(日本政策金融公庫調査)。貧困と格差の広がりは、高すぎる学費のために中退せざるをえない若者を増やし、私立大学では年間1万人の学生が経済的理由で退学しています。子育て支援というなら、この重い教育費負担の軽減は避けて通れません。

 憲法は国民に「ひとしく教育を受ける権利」(第26条)を保障し、教育基本法は「すべて国民は…経済的地位…によって、教育上差別されない」(第4条)としています。

 高校授業料の無償化をすすめる……先進国(OECD加盟30カ国)で高校に授業料があるのは日本を含めて4カ国(韓国、イタリア、ポルトガル)にすぎません。公立高校の授業料を無償化するとともに、私立も「授業料直接助成制度」(入学金等も対象とする)を創設し、年収500万円未満の世帯は全額助成、800万円未満の世帯は半額助成にするなど、無償化をめざして負担を軽減していきます。

 給付制奨学金の創設など奨学金制度の改革で支援を強める……国の奨学金はすべて無利子に戻すとともに、返済猶予を拡大します。とくに就学が困難な生徒・学生のため、返済不要の「給付制奨学金」を創設します。給付制奨学金制度がない国は、先進国のなかで日本、メキシコ、アイスランドの3カ国だけです。

 大学の「世界一の高学費」を軽減する……国公立大学の授業料減免を広げ、私立大学の授業料負担を減らす「直接助成制度」をつくります。「学費の段階的無償化」を定めた国際人権規約を批准します。国際人権規約の第13条は、高校と大学を段階的に無償化することを定めていますが、条約加盟国160カ国中、この条項を「留保」しているのは、日本とマダガスカルの2カ国だけです。

(4)生活保護母子加算の復活、就学援助、児童扶養手当の拡充など、「子どもの貧困」の克服に力をつくします

 生活保護母子加算を復活します。生活困窮世帯の子どもに給食費・学用品代・修学旅行費などを援助する「就学援助」も受給者が急増するなどその役割はますます重要になっています。ところが政府が2005年に国庫補助を廃止したために、支給額や基準を切り下げる自治体も増えています。国庫補助を復活し、拡充へと転換します。父子家庭への対象拡大、手当額の引き上げなど、児童扶養手当を拡充します。児童福祉施設の生活と進学保障の充実、児童相談所の体制強化を緊急にすすめます。

4、中小企業を応援する政治へ本格的な転換をはかります

 自民党・公明党が推進してきた外需優先・内需切り捨ての「構造改革」路線によって、中小企業と地域経済は痛めつけられてきました。そのうえ、アメリカ発の経済危機のもとで、原油・原材料高騰、大企業による違法な「下請け切り」、銀行による理不尽な貸し渋り・貸しはがしで突然の経営難に追い込まれるなど、二重三重に苦しめられています。今こそ、大企業優先の経済路線を転換し、中小企業を本格的に応援する政治が必要です。

(1)景気悪化から中小企業をまもる四つの緊急課題に取り組みます

 雇用の7割を支えている中小企業向け雇用調整助成金を抜本拡充する……仕事の激減など中小企業を襲っている深刻な事態に即応できるように、給付開始を早めることや、助成率を休業補償の5分の4から5分の5に引き上げるなど、中小企業向け雇用調整助成金を抜本的に拡充します。

 貸し渋りをやめさせ、信用保証制度の改善で資金繰りを支える……三大メガバンクは、大企業貸し出しを増やす一方で、昨年3月からの1年間で中小企業向け貸し出しを約2・6兆円も減らしています。こうした理不尽な貸し渋り・貸しはがしは直ちにやめさせます。また、信用保証協会の「緊急保証」制度は、全業種を対象にしていないだけでなく、3分の1の企業が、拒否・減額されるなど保証を受けにくくなっています。緊急保証制度について全業種を対象とするほか、審査条件を緩和します。さらに、「一般保証」制度に導入された「部分保証」制度を廃止し、全額保証に戻します。商工中金の完全民営化をやめさせるなど、政策金融全体のあり方を再検討し、円滑な資金供給という本来の役割を果たさせます。

 違法な「下請け切り」をやめさせる……大企業による一方的な発注内容の変更など「下請け切り」の多くは、下請代金支払遅延等防止法に反する違法・不法行為です。二階経済産業大臣でさえ、「違法に近いものもたくさんある」(09年2月5日、衆院予算委員会)と答弁しています。違法な「下請け切り」への指導監督を抜本的に強化し、直ちにやめさせます。

 中小企業が廃業・倒産しないために緊急の休業補償・直接支援をおこなう……仕事の激減によって、多くの中小企業が廃業・倒産の危機にさらされています。中小企業の廃業・倒産の急増は、優れたモノづくりの技術を失わせ、日本経済と産業にとって重大な損失です。

 中小企業を対象にした緊急の休業補償・直接支援を実施します。中小貸し工場への家賃や光熱費などの固定費への補助、固定資産税の減免、大企業からの注文に応えるためにおこなった設備投資の減価償却への助成など、休業しても中小企業が存続できるような支援を抜本的に強化します。

(2)日本経済の基盤を支える中小企業への支援を抜本的に強化します

 中小企業は、(1)短期的な利益よりも「雇用確保」や「社会貢献」を重視する、(2)地域経済への波及効果が大きく、もうけが地域経済に還元される、(3)優れたモノづくり技術を持つ経済・文化資源である、(4)地域経済に根ざし社会的責任を果たしているなど、日本の経済・社会にとってかけがえのない役割を果たしています。内需主導で日本経済を立て直すことが求められている今こそ、中小企業が生きいきとその力を発揮できるために、国・自治体が力を合わせて、本格的に支援することが必要です。

 中小企業憲章を制定し、中小企業予算を1兆円に増額する……今年度の中小企業予算は1890億円で、1企業当たり年4万5千円にすぎません。他方、米軍への「思いやり」予算は2879億円、米兵1人当たり年811万円であり、中小企業の180倍です。

 中小企業に冷たい政策を大もとから転換し、当面、一般歳出の2%、1兆円程度に増額します。中小企業の各分野に専門家を配置し、製品開発や販路拡大、起業支援や人材・後継者の育成などへの支援を抜本的に強化します。また、中小企業の新しい成長分野として、自然エネルギー、省資源・リサイクル分野への公的投資と助成を増やします。

 EUは、「小企業憲章」を制定し、「小企業が最優先の政策課題にとらえられてはじめて、新しい経済の到来を告げようとするヨーロッパの努力は実を結ぶ」と位置づけています。日本でも「中小企業憲章」を制定して中小企業の役割を明確にし、国の政策の影響・効果を検証して中小企業政策に反映させます。

 「地域金融活性化法」「納税者憲章」をつくる……中小企業・地域経済に対する金融機関の貢献を義務づける「地域金融活性化法」を制定します。政府系金融機関の統廃合をやめ、公的金融制度の拡充をはかります。先進国では当たり前の「納税者憲章」を制定し、消費税の免税点引き上げや家族の労賃を必要経費と認めない所得税法56条の廃止など、中小企業や零細業者を育てる税制に転換します。

 中小企業の法人税率の引き下げ……法人税にも累進制を導入し、中小企業の一定範囲の所得については、現行より税率を引き下げます。

 自治体のとりくみへの支援を拡充する……政府は、「三位一体改革」の中で、財政的な裏付けもおこなわないまま、地方自治体への中小企業施策の“丸投げ”をすすめてきました。こうした姿勢を転換し、商店街の振興、農商工連携、伝統産業・地場産業の支援などについて、地方自治体が主導的な役割を果たせるよう国の支援を抜本的に拡充します。

 大企業・大銀行の横暴を規制し、中小企業をまもるルールをつくる……中小企業の経営難の背景には、違法な「下請け切り」や貸し渋り・貸しはがし、大型店の一方的な出退店など、大企業の身勝手な行動があります。日本共産党は、中小企業や地域経済をまもるためのルールをつくり、大企業に当たり前の社会的責任を果たさせます。

 ――独占禁止法を改正し、中小企業との取引・競争における大企業の地位の乱用を厳しく規制します。

 ――下請代金法を改正し、違反した企業名や事実の公表、損害賠償支払いの義務化などの措置をとれるようにします。訴えのあるなしにかかわらず、系統的に下請け取引に関する実態調査をおこなうため、下請検査官を抜本増員します。

 ――公正取引委員会に中小企業の代表を加えるなど、その機能を拡充・強化します。

 ――業界団体・中小企業団体が、大企業ならびに大手の業界相手に、「団体交渉」をおこなう権利を保障した「公正取引確保法」(仮称)を制定します。

 ――労働者の平均賃金に見合う最低加工賃の算定基準を策定します。

 ――大店立地法第13条を廃止し、自治体が自らの権限で条例をつくり、大型店や大工場等の出退店を規制できるようにします。

(3)地域に密着した生活・福祉型公共事業で仕事と雇用を生み出します

 政府の公共事業は、高速道路やスーパー中枢港湾、空港などの大型開発中心です。大型公共事業に偏重した現状を見直し、小規模・生活密着型、福祉型の公共事業への本格的な転換をすすめます。これは、雇用を生み出すとともに、特養ホームの待機者や保育園の待機児童を解消し、国民生活を改善させるうえでも大きな役割をもちます。

 待ったなしの耐震化工事にただちに取り組む……小中学校などの耐震化、老朽化した施設の維持補修は、命と安全をまもるためにも最優先課題です。耐震性が不十分な公共施設7万棟、公営住宅7万戸の耐震工事などに直ちに取り組みます。みずほ総研は、倒壊の危険の高い1万棟の小中学校の耐震化工事で、約2万3千人の雇用が生まれると試算しています。耐震化・維持補修工事を実施し、雇用創出と中小企業の仕事おこしにつなげます。

 中小企業向け官公需を拡充し、入札制度を改善する……中小企業向け官公需発注比率を少なくとも7割以上に引き上げるとともに、最大限、分離分割発注をおこないます。地方自治体による「小規模工事登録制度」を創設・拡充し、中小企業の受注を増やします。“ダンピング競争”を防ぐため、積算単価の適正化をはかるなど、入札制度を改善します。

 波及効果の高い住宅リフォームへの助成を増やす……各地の自治体が実施している住宅リフォームへの助成制度は、助成予算の20倍を超える波及効果を生んでいます。住宅リフォームへの支援を抜本的に拡充します。中小建設業者への著しい負担となっている「住宅瑕疵担保保証制度」の改善をはかります。

 大手ゼネコンから建設業者をまもるルールをつくる……大手ゼネコンによる低単価発注、下請け代金支払いの未払いなどをやめさせます。自治体の仕事を受注する企業に、人間らしく働ける賃金と労働条件を義務づける「公契約」法や「公契約」条例の制定をすすめます。労働協約をしっかり結ぶためのルールをつくります。

5、農林漁業の再生で食料自給率を高め、「安全な食料を日本の大地から」を実現します

 日本は、食料自給率がわずか40%、先進国の中でも異常な低さです。「お金を出せば世界中から食料を買い集めることができる」という時代は終わりを告げています。

 ところが自公政権は、国内生産を支える価格保障制度を廃止し、規模の大小で支援する農家を選別するなど、現場の実態を無視した政策で、国内の生産基盤を弱体化させる農政を依然として続けています。さらに昨年7月のWTO(世界貿易機関)交渉では農産物の輸入をさらに拡大する関税引き下げを事実上、容認しました。こんな政治では、日本農業も国民の食料もまもれません。

 農林漁業など第1次産業の衰退は、地域経済を疲弊させています。居住人口の半数以上が高齢者となり、社会的な共同活動が困難となる「限界集落」を広げる要因にもなっています。農業生産を拡大すれば、それに関連する食品加工、サービス、製造業なども活性化し、農業生産額の3倍もの規模で地域経済に波及する効果があります。食料自給率向上と農林漁業再生に向けた政策への抜本的な転換は、地域経済の再生にもつながります。

 経済・社会の基盤である食料の安定的な確保のために、当面、食料自給率の50%台への回復を最優先の課題とします。その達成に向けて、昨年3月に発表した「日本共産党の農業再生プラン」で提案した施策の実現をめざします。

(1)安心して農業・漁業にはげめるよう価格保障・所得補償を実施します

 わが国農業の再生にとっていまもっとも必要なのは、農業経営を安定して持続できる条件を保障するための制度を整備・充実することです。価格低迷が農業の衰退を招き、大規模経営でさえ維持が困難な状況です。経営が成り立ち、持続できる条件を整えてこそ、他の産業分野や都市部から参入してくる人たちも増えます。

 農産物輸出国であるEUやアメリカでも実施されているように、価格保障・所得補償の拡充を農政の基本として日本でも実施し、生産・経営コストをカバーできる条件を早急に確立します。米でいえば、過去3年間の平均生産費を基準にした不足払い制度による価格保障制度を創設して当面、少なくとも1俵60キロあたり1万7千円以上を保障します。加えて、水田のもつ国土・環境保全の役割を評価した直接支払い(所得補償)を拡大し、あわせて当面1俵あたり約1万8千円を確保します。麦、大豆、畜産、野菜・果樹などの主な農畜産物も条件に合わせて価格保障・所得補償で増産をうながします。

 とくに米価が急落している現状で、政府は、備蓄米の買い入れをルールどおりにおこない、米価の低落を防ぎます。

 農業経営の強化に取り組んでいる経営者や農協、共同組織に、機械導入・更新や事務コストに関する助成を拡充するなどの支援をすすめます。

 水産物も、「調整保管制度」などを活用して価格の下落を防ぎます。経費に見合う魚価の実現のために、価格保障・所得補償をはかるとともに、食料自給率を支える資源管理型の漁業をめざし、資源回復のための休業にたいする補償、適切な輸入管理を実施します。

(2)農林漁業の担い手を育成し、後継者確保のために就業援助を強めます

 農業を中心的に担う基幹的農業従事者202万人のうち65歳以上が約6割に達し、漁業者の半数近くが60歳以上です。食料自給率を支える後継者の確保は差し迫った課題です。

 「担い手の多様化」を口実に、自民党、公明党、民主党の賛成で、農地法が改悪され、外国資本も含む株式会社の農地利用が原則自由にされました。しかし北海道で大規模なトマトのハウス栽培に乗り出した企業がわずか3年で撤退するなど、株式会社はもうからなければ撤退し、農地の荒廃を大規模にすすめることにつながります。

 今後の農業の担い手も家族経営が主役であり、多様な家族経営の維持を、担い手対策の中心にすえます。小規模農家や兼業農家を排除する「水田・畑作経営所得安定対策」(「品目横断対策」)をやめ、農業を続けたい人すべてを応援します。地域農業の重要な担い手であり、高齢者・離農者などの農地や農作業を引き受けるなど、大規模農家や生産組織などが果たしている役割を重視して、支援を強めます。

 新規就農者への就業支援を強化する……後継者をふくむ新規就農者へ「月15万円を3年間」の「新規就農者支援制度」を創設します。同時に、新規就農者の研修や技術指導を引き受ける農業生産法人や農家への支援も強化します。都会から移り住んで就農することを望む人のための住宅提供などの支援や、農林漁業の技術・経営を身につけるための教育・研究機関の強化、就業しようとする人のための農地、船などの確保に国の支援をすすめます。

 地元木材の利用拡大や森林資源を使ったエネルギー供給で仕事を広げる……日本の国土の3分の2を占める森林は、国土の保全、空気の浄化、水資源の涵養(かんよう)など多面的な役割を果たしています。中山間地などの活性化のためには、農業とともに林業の振興が大切です。森林の維持を中心的に担っているのは、わずか3万人の林業専業労働者ですが、5年間で3分の1も減少しています。地元産の木材使用への補助、公共施設建設への地元産木材の優先使用などで、林業の活性化を図るとともに、間伐材や廃材によるバイオ燃料の供給など森林資源を活用した自然エネルギーの供給で新たな仕事と収入を生み出します。

(3)関税など国境措置を維持・強化し、「食料主権」を保障する貿易ルールに

 世界ではいま、各国が輸出のためでなく自国民のための食料生産を最優先し、実効ある輸入規制や価格保障などの食料・農業政策を自主的に決定する権利=「食料主権」を保障する貿易ルールの確立を求める流れが広がっています。農業をめぐる自然的・社会的条件や、農業の果たしている多面的機能には国ごとに違いがあります。そのため、生産条件の格差から生まれる不利を補正するため、関税や輸入規制など必要な国境措置がとられています。こうした国境措置を維持・強化することは当然です。各国の「食料主権」を尊重する立場に立って、WTO農業協定を根本から見直すよう求めます。わが国が諸外国と結ぶFTA(自由貿易協定)・EPA(経済連携協定)について、日本の農業と食料をはじめ国民の利益に重大な打撃をあたえるものには反対します。

(4)都市農業、中山間地農業にたいする支援を強化します

 都市の環境に果たす農地の役割と農業への参加の意欲に応えるため、都市計画制度での位置づけを強化し、農地への相続税・固定資産税を、維持可能な水準に引き下げます。当面、生産緑地の指定を拡大し、相続税猶予の条件を緩和します。期限切れとなる条件不利な中山間地農業への直接支払い制度を継続し、指定の条件を緩和します。

(5)農業者・消費者の共同を広げ、「食の安全」と地域農業の再生をめざします

 食品の産地・品質の偽装、添加物の表示違反、賞味期限の改ざん、メラミン混入など、山積する「食の安全」問題を打開するには、食品に関する検査体制をただちに強化するとともに、根本的には食料自給率を抜本的に高めることが必要です。BSE(牛海綿状脳症)対策の全頭検査を維持するなど食に関する信頼を高め、安全・安心の生産・流通の拡大など農業者と消費者の共同を広げて、「食の安全」と地域農業の再生をめざします。

 汚染米問題の根源には、日本に必要のないミニマムアクセス米を年間77万トンも輸入するという政府の施策があります。輸入機会の提供にすぎないはずのミニマムアクセス米の「義務的」輸入を中止するとともに、「規制緩和」によって国の米流通に対する管理責任を放棄してしまった、小泉「改革」の一環としての「コメ改革」を見直します。

6、地球温暖化をくいとめる国際的な責任を果たし、地球環境をまもります

 7月のラクイラ・サミット(イタリア)でも改めて確認されたように、地球温暖化の被害が取り返しのつかないレベルになるのを避けるには、産業革命前にくらべて2度以内の気温上昇(現在までにすでに0・76度上昇)にとどめることがカギです。

 温暖化抑制に有効なルールをしっかり設定し、それにもとづいて中長期的な取り組みをすすめることが必要です。いまこそ、温室効果ガスの排出量を減らしながら発展する経済社会への本格的な転換が求められています。国の将来にかかわる総合的な戦略・政策のなかに地球温暖化対策をしっかり位置づけ、政府の取り組みを義務づける法律(気候保護法=仮称)を制定します。

(1)基準年を1990年から2005年に変更するごまかしをやめ、2020年までに温室効果ガスを30%削減する中期目標を設定します

 自公政権は、6月に、2020年までの日本の温室効果ガス削減中期目標を、2005年基準で「15%削減する」と決定し、欧米と比べても遜色(そんしょく)がないなどといっています。しかし、日本は、2005年までに逆に7%も増やしています。政府の中期目標は、1990年比にすればわずか8%の削減にすぎません。これでは、京都議定書で約束した2012年までの目標である1990年比で6%削減と、ほとんど変わりません。EUが90年から05年までにすでに2%削減し、さらに2020年までに90年比で20%〜30%削減しようと取り組んでいる姿と比べると、日本は「遜色がない」どころか、「基準年を移す」という小手先のごまかしの「目標」にすぎません。自公政権は、削減のための施策を「統制経済」などとする財界のいいなりになってきた結果、まともな削減目標さえ定めることができなくなっています。

 今年12月にコペンハーゲン(デンマーク)で開かれる温暖化に関する国際会議では、2013年以降の新たな国際的取り組みを具体的に決定しなければなりません。日本共産党は、日本に課せられた先進国としての国際的義務を果たすために、2020年までに90年比で30%削減することを明確にした中期目標を確立し、2050年までに80%削減するという長期目標をすえ、着実に実現していくための手立てを講じます。

(2)最大の排出源である産業界に対し、公的削減協定など実績のある施策を実施します 

 産業界は日本の温室効果ガスの総排出量の8割(家庭が使う電力分を電力会社の排出とすれば9割)を占め、わずか166の事業所だけで日本全体の二酸化炭素排出量の50%に達しています。

 にもかかわらず日本では、もっぱら財界の“自主努力”まかせにされています。EU諸国では国が産業界と公的協定を結んで実績を上げています。こうした施策によく学んで、日本でも政府と産業界の間で削減目標を明記した公的な削減協定を義務づける必要があります。企業の目標達成のための補助的手段としての「国内排出量取引制度」や、二酸化炭素の排出量などに着目した環境税を導入し、削減を加速します。

(3)自然エネルギーの活用を大幅に拡大します

 二酸化炭素の排出量の9割がエネルギー由来であり、エネルギー対策は温暖化抑制のかなめです。現在、自然エネルギー(再生可能エネルギー)は1次エネルギーのわずか2%(大規模水力発電分3%を除く)にとどまっています。国際的にも日本は、大きく立ち遅れ、電力供給にしめる比率でEUを下回り、太陽光発電の導入量でドイツに首位の座を奪われスペインにも抜かれました。風力発電ではアメリカ、中国からも立ち遅れています。

 自然エネルギー利用の発電を促進する固定価格買い取り義務制度を導入する……2020年までにエネルギー(1次)の20%、2030年までに30%を自然エネルギーでまかなう計画を策定し、着実に実行していきます。そのためにすでに国会で提案したように、電力会社が、太陽光だけでなく自然エネルギーによる電力全般を、10年程度で初期投資の費用を回収できる価格で、全量買い入れる「固定価格買い取り義務制度」に転換します。初期投資を回収したあとは余剰電力の買い取りに切り替えます。そのさい、いま電気料金に含まれ主に原発用に使われている電源開発促進税(年間3510億円)や、温室効果ガスの削減目標に達しない分の穴埋めに海外から排出権を買い取るのにも使われている石油石炭税(同5100億円)などの使い方を見直し、ユーザーへの負担を抑制するようにします。

 自然エネルギーの普及促進のために、家庭用の太陽光発電に対する国の補助を抜本的に引き上げ、公的助成を半分まで高めます。国、自治体の施設や、一定規模以上の建物については、自然エネルギーの利用、熱効率の改善を義務づけます。

 危険な原発だのみの「環境対策」をあらためる……自公政権は、原子力発電を「温暖化対策の切り札」とし、長期的にも電力供給の約半分を原発でまかなおうとしています。この間、地震などの自然災害や、事故、データ捏造(ねつぞう)などによって、原発の停止が相次いでいます。しかも、事故や廃棄物による放射能汚染という環境破壊の危険も大きく、安全上も、技術的にも未確立な原発に頼った「温暖化対策」はやめるべきです。

7、国民サービスの拡充、どんな利権も許さない郵政事業に――郵政民営化を中止します

 自民・公明は4年前の衆院選で、郵政民営化を「改革の本丸」などとして、民営化すれば、社会保障の充実、地方経済の立て直し、戦略的外交の推進、安全保障の確立などにもつながるという荒唐無稽(むけい)な「バラ色」の大宣伝をしました。しかし、こうした民営化の「バラ色」の宣伝は、すべてメッキがはがれ落ちました。それどころか、簡易郵便局の閉鎖、郵貯ATMの撤去、各種手数料の引き上げ、時間外窓口の閉鎖、集配郵便局の統廃合など、国民サービスが大きく後退しました。

 しかも、民営化によって、国民共有の財産を食い物にする「新しい利権構造」と腐敗が次々に明らかになっています。「かんぽの宿」をはじめ郵政事業として保有していた資産の「たたき売り」や郵貯カード事業との提携で利益をあげたのは、西川善文日本郵政社長の出身銀行である三井住友グループや、規制緩和の旗振り役だった宮内義彦氏が会長を務めるオリックス・グループです。自民党・公明党は、「郵政民営化によって利権がなくなる」などと宣伝してきましたが、実際には、古い利権から新しい利権に変わっただけです。

 郵政事業は、長年にわたり、国民の貯金や保険料、郵便料金で培ってきた国民の共有財産であり、地域住民のくらしを支える重要な役割を果たしています。それが、民営化をすすめた営利企業によって食い物にされているのです。西川社長をはじめ、新たな利権を拡大し、国民共有の財産を食い物にさせた経営陣の責任は重大です。

 国が保有している郵政株の売却を中止し、郵政民営化路線を根本から転換する……今必要なことは、国民が安心して利用できる郵便・貯金・簡保などのサービスを提供することです。郵便局ネットワークによって提供されている生活に不可欠なサービスを「ユニバーサルサービス」として義務付け、全国あまねく提供されるように力をつくします。そのためにも郵政事業を、三事業一体の運営を堅持し、ユニバーサルサービスをまもり、利権を許さない公的な事業として再生します。

 郵政事業を国民に開かれた、国民へのサービスに徹する事業にするための改革に取り組む……「かんぽの宿」の売却問題など、民営化をめぐる利権についての実態解明をすすめます。郵政関連事業が高級官僚の天下り先になり、無駄な施設をつくっている問題にもメスを入れます。民営化後、いっそうひどくなっている郵政事業での非正規雇用の拡大、「使い捨て」の働かせ方を改善します。

 中小企業、住宅、福祉・医療施設などへの資金供給……これらの分野の資金供給は、民間銀行などの「市場まかせ」ではなく、公的金融による支えが必要不可欠です。こうした公的金融の原資として、郵貯・簡保資金を活用します。

8、消費税増税に反対し、軍事費・大型公共事業などの無駄をなくし、大企業・大資産家に応分の負担を求めて、社会保障などの財源を確保します

(1)消費税増税に反対します

 政府は、昨年12月に閣議決定した「中期プログラム」と今年の国会で成立した税制「改正」法で、今後2年間のうちに消費税増税を含む「税制改革」を実行する計画を決め、借金のつけを消費税増税によって国民に押しつけようとしています。

 日本共産党は、国民を苦しめる消費税大増税計画にきっぱり反対します。ヨーロッパ諸国で実施されているように、消費税の減税に踏み切ります。その際、低所得者への減税効果が大きくなるよう、食料品などの生活必需品を非課税にする方法で実施します。軍事費や大型公共事業をはじめとする歳出面での無駄をなくすとともに、「負担能力に応じた税負担」の原則にたった税制改革をすすめます。これによって、社会保障などに必要な財源を12兆円以上確保することが可能です。

(2)軍事費・大型公共事業などの歳出の無駄をなくします

 いま、どの政党も「歳出の無駄をなくす」と口ではいっています。しかし、本当に無駄をなくすためには、軍事費、財界・大企業の要望、アメリカからの対日要求、政官財のゆ着構造と利権など、「聖域」に切り込めるかどうかという、政治の姿勢が問われます。

 軍事費を「聖域」にせず、大幅に削減する……年間5兆円にものぼる軍事費を「聖域」とせずに削減するかどうかは、本当に無駄を削れるかどうか、巨額の財政赤字にまともに立ち向かう意思があるかどうかの「試金石」です。アメリカのオバマ政権は、財政健全化のために軍事費を今後10年間に140兆円削減するとしています。日本の軍事費は、国の人件費や物件費の4割、公共事業を除く施設費の6割近くを占めており、これにメスを入れることなしに歳出の大幅削減はできません。米軍への巨額の税金投入――3兆円ものグアム島への基地建設などの「米軍再編」経費、年間2800億円にのぼる米軍への「思いやり」予算や、憲法違反の海外派兵経費、海外派兵のための装備や訓練経費を全額削減するとともに、軍事費全般を「聖域」とせずに削減していきます。

 大型開発にメスを入れる……政府は、地域住民の反対もあって1970年以来凍結されてきた東京外郭環状道路(練馬―世田谷間)の事業化を決定し、この計画を自民、民主の国会議員が委員となっている国土開発幹線自動車道建設会議(国幹会議)が全会一致で承認してしまいました。地下40メートルに直径16メートルのトンネルを2本も通すこの計画には、総額1兆8千億円、1メートル1億円以上の費用がかかります。この外環道を含む「三大都市圏環状道路」には、毎年5千億円もの事業費がつぎ込まれています。こうした高速道路建設をはじめ、八ツ場(やんば)ダム、川辺川ダムなどのダム建設(3千億円弱)、スーパー中枢港湾(1千億円強)、空港建設などの大型事業を総点検し、不要不急の事業を中止・延期します。

 高速道路無料化より福祉・教育を優先する……高速道路料金の無料化や大幅引き下げに何千億円、何兆円という税金を注ぎこむことが、「税金の使い方」として適切でしょうか。無駄な高速道路建設に歯止めもかけないまま、旧道路公団の借金を国民に肩代わりさせて続けられようとしている高速道路料金の軽減よりも、福祉や教育を税金の使い方として優先します。

 政官財のゆ着や特権による浪費をなくす……官僚の天下りを禁止し、政官財のゆ着や特権による浪費をなくします。政府が組んだ15兆円もの補正予算には、自動車・家電業界などの要求を丸のみした補助金ばらまきや、目的も効果もはっきりしないのに基金を積むなど、無駄な事業が多数含まれています。これらの予算にメスを入れ、その財源を社会保障などに振り向けます。

 政党助成金を廃止する……年間320億円もの国民の血税を政党が分け取りする政党助成金は、ただちに廃止します。「無駄な補助金を削る」とか「財政難」と言いながら、自分たちへの巨額の補助金は受け取り続ける政党に「聖域のない無駄の削減」はできません。

(3)大企業・大資産家に「能力に応じた税負担」を求めます

 もう一つの「聖域」は、大企業や大資産家を不当に優遇している現在の税制です。この間、庶民には定率減税の廃止や年金課税の強化などの増税が続く一方で、大企業や大資産家には減税が繰り返されてきました。最近10年間におこなわれたものだけでも、年間ベースで7兆円以上、累計で40兆円以上の減税がされています。

 いま、アメリカでは、ゆきすぎた「金持ち減税」を改め、富裕層に10年間で100兆円以上の負担を求めるという税制改革が提案されています。イギリスでも40%の所得税最高税率を来年4月から50%に引き上げることが提案されています。

 日本でも、くらしをまもり、内需主導の経済危機打開の道を開くために、不公平税制にメスを入れ、税制がほんらいの所得再分配機能をとりもどす方向での改革が必要です。

 ――所得税・住民税の最高税率を少なくとも98年以前の水準(所得税・住民税あわせて65%)に戻し、高額所得者・大資産家に応分の負担を求めます。

 ――大資産家の株式配当や譲渡所得には、わずか10%しか課税しない証券優遇税制は、アメリカ(25%)、フランス(29%)など、欧米と比べても低すぎます。証券優遇税制をただちに廃止し、税率を少なくとも20%に戻します。

 ――社会保険料を含めた大企業の負担は、ドイツやフランスの7〜8割にすぎません。景気が回復して大企業の利益があがった段階できちんともうけ相応の負担をさせるようにするのは当然です。大企業の法人税率を97年の水準まで段階的に引き上げます。

 ――政府が決めた贈与税の減税は、ひとにぎりの資産家だけを優遇するもので、景気対策としての効果も見込めません。この間に引き下げられた相続税の最高税率を元に戻し、大資産家に応分の負担を求めます。これは、格差是正につながるだけでなく、大資産家の消費や生前贈与による現役世代への資産移転を促進することになり、当面の贈与税も増収になるなど、景気対策としても有効です。

 以上のような改革をすすめれば、大型公共事業削減(約2兆円)、軍事費削減(約1兆円)などの歳出の無駄の削減で5兆円以上、大企業の税率引き上げ(約4兆円)、証券優遇税制廃止(約1兆円)、所得税の最高税率引き上げ(約0・7兆円)などの税制改革によって7兆円以上、あわせて12兆円以上の財源が確保できます。これらの改革は、今後、数年間かけて段階的にすすめていきます。当面の緊急の景気対策のためには、特別会計の積立金など、いわゆる「埋蔵金」の活用もはかります。これによって、消費税増税に頼らずに、社会保障などの拡充をはかることが可能になります。

 さらに、将来必要になる社会保障などの財源は、“応能負担の原則――所得や資産など能力に応じた負担”の立場で確保していきます。国民のくらしを支える改革をすすめれば、内需主導の安定した経済成長への道が開かれます。そうしてこそ、新たな財源もつくりだすことができます。国民のくらしをつぶしてしまうような増税で「財政の帳尻」を合わせようとしてもうまくいきません。「財政再建」を「理由」に、1997年に消費税増税などの9兆円負担増を押しつけたことによって、財政赤字がいっそう巨額に膨らんだ苦い教訓でも明らかです。

【2】憲法9条を生かした自主・自立の平和外交で、世界とアジアに貢献する日本をつくります。日米安保条約=日米軍事同盟を廃棄し、アメリカと対等・平等の関係をつくります

(1)地球上から核兵器をなくすために積極的な役割を果たします

 被爆国日本の国民の切実な願いであり、人類的課題である「核兵器のない世界」――核兵器廃絶に向けて、歴史的な変化がおこりつつあります。オバマ大統領が4月にプラハでおこなった演説は世界に大きな問題を提起しています。これは、(1)米国大統領として初めて「核兵器のない世界」を追求することを国家目標とすると宣言しています。(2)広島・長崎への核兵器使用が人類的道義にかかわる問題であることを初めて表明するとともに、その立場から核兵器廃絶にむけた責任を語っています。(3)そして、核兵器廃絶にむけて世界の諸国民に協力をよびかけています。

 日本共産党の志位和夫委員長は、この演説を歴史的意義をもつものとして重視し、(1)核兵器廃絶のための国際条約の締結をめざして、核兵器保有国による国際交渉を開始するイニシアチブを発揮すること、(2)2010年のNPT(核不拡散条約)再検討会議において、核保有国によって、核兵器廃絶への「明確な約束」が再確認されることを求める書簡をオバマ大統領に送りました。それにたいして、米政府から書簡にたいする返書(オバマ大統領の指示で、国務次官補代理が大統領に代わって書いたもの)が届けられました。書簡への感謝が表明され、「この問題(核兵器のない世界)にたいするあなたの情熱をうれしく思う」という返書は、核兵器廃絶にたいするオバマ大統領の真剣さと熱意を示すものです。

 米国大統領への書簡と、米政府からの返書は、内外に積極的な反響をよびおこしています。志位委員長は衆参両院議長と会談し、被爆国・日本で核兵器廃絶の国民世論を喚起していくことで一致しました。多くの国々の在京大使や外交官からも歓迎の声が届けられています。全国各地で、自治体の首長、平和・市民団体、宗教者などとの懇談がおこなわれ、政治的立場の違いをこえて、多くの人々から歓迎の声が寄せられています。この反響の広がりは、核兵器廃絶という人類的課題が空想的なものではけっしてなく、現実のものとなる可能性を多くの人々が感じだしていることを示しています。

 アメリカに前向きの変化を促した根本の力は、平和を願う世界諸国民のたたかいです。日本共産党は、戦後一貫して核兵器廃絶のためにたたかい続け、綱領にもその課題を明記した党として、この歴史的なたたかいの一翼をにない、広範な人々と共同して地球上から核兵器をなくすために積極的な役割を果たします。

(2)核密約の全ぼうを公開させ、名実ともに「非核の日本」を実現します

 日本は、人類史上唯一、核戦争の惨禍を体験した国でありながら、自公政権のもとで、アメリカの「核の傘」依存を正当化して、「核兵器をつくらず、持たず、持ち込ませず」の「非核三原則」をないがしろにする動きや核武装論が繰り返されてきました。

 元外務次官4人が核密約の存在をマスコミに証言し、衆院外務委員長も関係者と面談したうえで、「核密約はあった」と確認するなか、日本への核持ち込みの黙認を取り決めた日米間の密約があらためて国民の批判を浴びています。

 この密約は、1960年に日米間で結ばれ、63年の大平外相とライシャワー駐日大使の会談で再確認された、核兵器を積んだ軍艦や航空機の寄港、通過、乗り入れにかんするものです。この核密約の存在は、日本共産党の不破哲三委員長(当時)が2000年4月に初めて国会で明らかにした米政府解禁文書でも証明されていますが、今回、日本の元外務次官ら直接、厳重秘匿管理してきた関係者の証言によっていよいよ否定しがたいものになっています。日米間で核密約を結んでいながら、国会と国民の前では「非核三原則」を強調し、核兵器を積んだ軍艦や飛行機は、一時的な寄港、通過、乗り入れもありえないと言いはってきた歴代日本政府の欺瞞(ぎまん)性、反国民的な犯罪行為があらためて浮き彫りになっています。

 麻生内閣はいまも「密約は存在しない」と否定し続けていますが、日本政府が約50年にわたって、国民をだまして、核兵器持ち込みの仕組みを維持してきたことは絶対に許せません。

 この核密約以外に、「有事」、つまり「将来の緊急事態」のさいに核兵器を配備する密約が日米間で結ばれていることも米政府解禁文書で明らかになっています。政府は、国民と国会にたいして、核密約にかかわるあらゆる記録を公開し、核の闇の真相を全面的に明らかにすべきです。

 これは、けっして過去の歴史問題ではありません。アメリカは、水上艦艇から核兵器を撤去しましたが、攻撃型原潜に必要があれば随時、核巡航ミサイル「トマホーク」を積載する態勢を継続しています。さらに、「有事」には、核兵器の再配備をすることを宣言しており、「有事」にそなえるために、特定の地点での核兵器の存在を「否定も肯定もしない」という政策を堅持しています。「有事」における核配備の密約の下で、国民も日本政府も知らないうちに核兵器が持ち込まれ、配備されるという仕組みと体制は引き続き日本列島をおおっているのです。

 核密約をめぐる政府のウソが否定しがたいものになるなか、これを改めるのではなく、逆に、「非核三原則」を見直し、核持ち込みを公然と認めよという動きが強まっているのは重大です。民主党の鳩山代表なども、「持ち込ませず」の原則をはずして、核持ち込みを容認する考えを明らかにしています。

 日本共産党は、広範な人びとと共同して、政府に核密約を公開、廃棄させて、核持ち込み体制を一掃するたたかいを強めるとともに、「非核三原則」を骨抜きにする策動を許さず、名実ともに「非核の日本」を実現するために全力をあげます。

 あらゆる密約を公開し、廃棄する……日米間の密約は、核密約だけではありません。沖縄返還をめぐる日本側負担や米軍の軍事作戦、米兵犯罪をめぐる日本の裁判権放棄などにかんしても、日米間に密約や秘密合意が存在することが米政府解禁文書で明らかになっています。密約は国民を欺く「国家犯罪」ともいうべきものであり、密約が存在したままでは、ほんとうに「対等な日米関係」を実現することもできません。

 日本共産党は、政府にあらゆる密約、秘密合意を公開、廃棄することを要求します。

(3)北朝鮮の核開発を放棄させるために、6カ国協議の再開を求め、日朝両国間の諸問題の解決のために力をつくします

 北朝鮮が5月におこなった2回目の核実験は、北朝鮮に「核実験を実施しないこと」を求めた国連安保理決議、自らも合意した6カ国協議の共同声明に明白に違反する暴挙です。また、世界のなかで起こりつつある核兵器廃絶への新たな機運への乱暴な挑戦です。日本共産党は北朝鮮の行動に対し厳しく抗議しました。

 北朝鮮はその後も、国際世論に挑戦するような言動を続けていますが、この問題の解決のために、北朝鮮に核兵器および核兵器開発計画を放棄すること、6カ国協議に無条件に復帰することを求めて、国際社会が一致結束した行動をとることが大切です。

 6カ国協議の無用論、無力論が出ていますが、この協議は、北東アジアの平和と安定に直接かかわる関係者が一堂に会する場として、引き続き最も効果的な交渉の枠組みです。この枠組みの当面の目標は、「朝鮮半島の非核化」ですが、この目標が達成されるならば北東アジア地域の平和の共同体として発展しうる可能性をもったものです。日本共産党は、困難はあっても、国際社会が6カ国協議の枠組みに北朝鮮を引き戻し、協議を再開させるために力をつくします。

 北朝鮮の核実験などにたいして、「敵基地攻撃」論などの無法な先制攻撃論、さらには日本の核武装論など、軍事対応論が自民党や民主党の一部にうまれています。しかし、これらは、軍事対軍事の危険きわまりない悪循環を引き起こすものであるとともに、北朝鮮に「核兵器を捨てよ」と要求する立場を失わせるものでもあります。名実ともに「非核の日本」をつくりあげてこそ、北朝鮮にきっぱりとした強い立場にたって、核開発を放棄させることができます。

 日本共産党はこうした軍事対応論を厳しく退け、「非核の日本」を実現するために全力をあげます。

 「日朝平壌宣言」にもとづき、朝鮮半島の核問題の解決とともに、拉致問題、ミサイル問題、過去の歴史の清算の問題など、日朝間の諸問題の包括的解決に努力をつくし、日本と北朝鮮の国交正常化への道筋をひらくことが大切です。こうした道をつうじて、北朝鮮問題が道理ある解決をみれば、東アジアの平和・繁栄・友好に大きな展望が開けます。日本国民にとっても、平和と安心が確保されます。

 日本共産党は、国の内外で、日朝間の諸問題の理性的解決のために全力をあげます。

(4)憲法9条に反する自衛隊の海外派兵を中止します

 アメリカの一国覇権主義が、軍事でも経済でも大きな破たんに直面するとともに、それに代わる新しい世界秩序への流れが大きく広がりつつあります。

 アジアでは、ASEAN(東南アジア諸国連合)が5月、EU(欧州連合)の東南アジア友好協力条約(TAC)への加入を正式に承認し、ブッシュ前政権が拒否していた米国も条約に署名しました。EUと米国の加入によって、TAC加入国は52カ国に、人口の合計は世界人口の7割近くに増えて、ユーラシア大陸の多くの国々、オセアニア諸国、米国を含め、世界を覆う一大潮流となります。南北アメリカ大陸でも、長らく「米国の裏庭」といわれてきた中南米の従属の歴史に幕が下り、対等・平等の新たな友好関係が日程にのぼりつつあるなど、国連憲章にもとづく平和秩序をめざす流れが世界の広大な地域に広がっています。

 こういう世界にあって、日本は、恒久平和主義という理想を先駆的に体現した「世界の宝」ともいうべき憲法9条をもっているにもかかわらず、自公政権が、軍事偏重でやみくもに海外派兵をおしすすめ、憲法を改悪して、「海外で戦争をする国」にしようとする動きをすすめています。「戦争をしない」という憲法9条の理想が世界政治の現実の流れとなりつつあるなか、アメリカの世界戦略を補完するかたちでの海外派兵など、軍事偏重の政治をいつまでつづけていいのか。このことが正面から問われています。

 新テロ特措法の延長を許さず、インド洋から自衛隊をただちに撤退させる……アフガニスタンでは、海上自衛隊によるインド洋・アラビア海での米艦船などへの給油という形で米国の「対テロ戦争」に加担し、罪のない民間人の殺りくに手を貸してきました。アフガニスタンでは、米軍などによる無差別の武力掃討作戦によって多くの民間人が殺害され、それが、外国軍の駐留への怒りを強め、自爆テロや武力衝突を急増させるという情勢悪化の悪循環がおこっています。「最悪の治安状況」といわれるなかで、日本人の人道支援活動家が犠牲となる事態もうまれました。戦争でテロはなくせない。このことが明らかになったのが、この8年間の重大な教訓です。戦闘を一刻も早くやめさせ、和平の努力をつくすことが求められています。

 日本共産党は、アメリカの報復戦争に加担する新テロ特措法の延長を許さず、インド洋・アラビア海から自衛隊をただちに撤退させるために全力をあげます。

 「海賊」派兵新法をなくし、あらゆる海外派兵のくわだてに反対する……自公政権は、「海賊対策」を名目にアフリカ東部のソマリア沖・アデン湾へのなし崩し的な自衛隊派兵の既成事実を先行させつつ、新たに「海賊」派兵新法を強行しました。これは、海賊対処の名で世界のどこにでも自衛隊を派遣できる恒久法であり、海賊対処のための船体射撃や危害射撃を可能とするなど武器使用を「任務遂行」のためにも拡大しました。海賊問題を解決する道は軍隊を派遣することではありません。ソマリア周辺国の警察活動に対する財政的・技術的支援を強化するとともに、ソマリアの政府崩壊をたてなおし、人々が生活できる環境をつくるための民生支援こそ必要です。憲法9条をもつ日本は、そのような外交努力、民生支援にこそ力をつくすべきです。

 日本共産党は、「海賊」派兵新法をなくし、自衛隊をソマリア沖・アデン湾、ジブチからすみやかに撤兵させるために力をつくします。また、アメリカの要求にこたえた、自民、公明、さらに民主党も加わった自衛隊の海外派兵恒久法策定の動きなど、憲法を踏みにじる海外派兵のあらゆる企てに反対して、広範な国民とともにたたかいます。

(5)米軍基地強化・永久化に反対し、基地のない平和な日本を実現します

 日米両政府は、日米安保条約を従来の枠組みさえこえた「地球規模の日米同盟」へと侵略的に大変質させ、「米軍再編」の名で米軍基地の強化、米軍と自衛隊の一体化を推進しようとしています。「米軍再編」のねらいは、アメリカの地球規模の戦略に日本を組み込むところにあります。

 「日本防衛」とは無縁の海外遠征――“殴り込み”部隊の司令部機能や機動性が、陸・海・空・海兵隊の4軍そろって強化され、出撃・補給拠点として恒久化されようとしています。沖縄・名護市への新基地建設、横須賀基地への原子力空母の配備、山口・岩国基地への空母艦載機の移駐、神奈川・座間基地への米陸軍第1軍団司令部機能の移転などです。

 日米両政府が2月、グアムの米軍基地強化に日本国民の税金を投入する義務を負わせた米海兵隊「グアム移転」協定に調印したように、オバマ政権になっても「米軍再編」による米軍基地強化路線には変化がみられません。「グアム」協定は、海兵隊「移転」が、沖縄への新基地建設と日本の財政的貢献にかかっているとしています。アメリカの領土内の米軍基地建設費を日本国民が負担するのは、国際的にも歴史的にも例がなく、まったく道理がありません。しかも、自公政権は、ウソで固めた「環境アセス」にみられるように、沖縄県民をはじめ日本国民を欺いて、新基地建設を強行しようとしています。絶対に許しがたいことです。

 自公政権は、「再編交付金」という「札束の力」で、基地をかかえる自治体と住民を分断、懐柔、屈服させて、基地強化を押しつけようとしています。しかし、曲折はあっても、こうした圧力に屈せず、全国各地で、基地強化反対の粘り強いたたかいがすすんでいます。

 日本共産党は、「米軍再編」の名による基地強化・永久化に反対し、基地のない平和な日本をめざして国民とともにたたかいます。

 日米地位協定を抜本改定し、米軍優遇の特権をなくすために力をつくす……多発する米軍犯罪、事件・事故のたびに、米軍に治外法権的な特権を与えている日米地位協定が問題になります。米軍による主権侵害と横暴をおさえ、犯罪を繰り返させないために、地位協定の抜本改定は、まったなしの課題です。にもかかわらず、自公政権は、国民の強い改定要求に背を向けて、「運用改善」にとどめています。

 日本共産党は、日米地位協定を抜本改定し、主権国にあるまじき米軍優遇の特権をなくすために力をつくします。

(6)憲法改悪を許さず、憲法の全条項をまもり、平和・人権・民主主義の条項の完全実施をはかります

 2010年5月には、自公両党によって強行(07年)された「改憲手続き法」=国民投票法が施行を迎えます。この間、国会には憲法審査会が設置されることになりましたが、国民世論の批判の前に、審査会の規程は衆参両院ともに決められず、審査会は始動できませんでした。このことは、憲法改定はもちろん、そのための手続き自体も、国民の要求や願望から出発したものではないことを浮き彫りにしました。

 ところが、6月11日には衆院で憲法審査会規程が強行されるなど、見過ごすことのできない変化が生まれています。自民党の憲法審議会長を務める中山太郎・元外相は、「国民投票法が施行されると、衆参両院の3分の2の賛成があればいつでも憲法改正手続きができるようになる」(「読売」5月3日付)と指摘しています。国民の意思がどうあれ、憲法審査会が現実に動き出すことになれば、国会として改憲のための具体的な第一歩が踏み出される危険性があります。

 この点で注意を要するのは、民主党の新代表に就任した鳩山由紀夫氏が年来の改憲論者だということです。鳩山代表は、みずからの著書『新憲法試案』のなかで「野党第一党が『憲法改正』に前向きな主張をしていることが引き金となって、衆参両院に憲法調査会が設置されることとなった」と自賛しています。憲法審査会の規程を決めることについても、民主党は採決では反対しましたが、「規程は必要」という立場でした。

 しかし、自民、民主両党などの改憲への執念がどんなに強く深くても、憲法改定が国民から出発した要求ではない以上、そうした改憲路線はかならずゆきづまりに直面せざるをえません。現に、「首相在任中の改憲」をかかげた安倍政権は、さまざまな反国民的な施策とあいまって、「一路改憲」という路線そのものへの国民の批判にあって退陣に追い込まれ、以後の政権は、改憲を前面に出せないできました。

 こうした状況をつくりだすうえで、大きな力になってきたのが、各地の「九条の会」や憲法改悪反対共同センターのとりくみです。とくに、結成5周年を迎えた「九条の会」は、いまや全国津々浦々に7500に近づく勢いで会が誕生しています。

 日本共産党は、憲法の前文をふくむすべての条項をまもり、とりわけ、平和・人権・民主主義を豊かに保障した条項を完全に実施することをめざします。その立場から、憲法改定に強く反対し、改憲につながる一切の策動を許さず、思想信条、党派の違いを超えた共同をさらに発展させるために全力をあげます。

(7)憲法9条にもとづく自主・自立の外交をすすめます

 アメリカのブッシュ前政権の一国覇権主義が無残な破たんをとげているもとで、国際社会は、国連憲章にもとづいて、国際紛争の平和的・外交的解決を求めるという方向に動いています。21世紀は、軍事ではなく外交こそが重要な意味をもつ時代となっています。

 世界が大きく変化しつつあるもとで、日本外交のあり方が問われています。世界の前向きの変化に積極的に働きかけて促進する外交か、前向きの変化が目に入らず、変化しないことを求める外交かが鋭く問われています。

 麻生・自公政権には、世界の前向きの変化は目に入りません。オバマ政権のプラハでの演説を受けて、この政権がおこなっているのは、オバマ大統領がのべた「核兵器のない世界」への動きを後押しすることではありません。執拗(しつよう)に求めているのは、「日米安全保障体制の下における核抑止力を含む拡大抑止」の確認です。唯一の被爆国の政府が、核兵器廃絶への歴史的チャンスが目の前に生まれているときに、そのための行動は何もせず、米国の核戦力に依存することを繰り返し求めていることは、許されません。

 一方、自公政権は、アメリカが変化していない部分では、変化を求めず、自らすすんで従属政治を続けています。日米軍事同盟を絶対不可侵のものと仰ぎ、米軍基地を強化し、自衛隊の海外派兵をおしすすめ、グアムに建設する米軍基地にまで日本国民の血税を注ぎ込み、さらに憲法を改定して海外での武力行使に公然と道をひらく路線にしがみついています。こうした政治に未来がないことは明らかです。

 日本共産党は、核兵器廃絶問題での行動が示すように、世界の前向きの変化に働きかけ、それを促進する、憲法9条にもとづく「自主・自立の平和外交」をすすめます。

 ――日本が過去におこなった侵略戦争と植民地支配の反省を踏まえ、アジア諸国との友好・協力をすすめます。

 ――国連憲章に規定された平和の国際秩序を擁護し、この秩序を侵犯・破壊するいかなる覇権主義にも反対をつらぬきます。

 ――一般市民を犠牲にする無差別テロにも報復戦争にも反対し、テロ根絶のための国際的な世論と共同行動を発展させます。

 ――日本の歴史的領土である千島列島と歯舞・色丹島の返還をめざします。

 ――多国籍企業の無責任な活動を規制し、地球環境を保護するとともに、一部の大国の経済覇権主義をおさえ、すべての国の経済主権の尊重と、平等・公平・互恵を基礎とする民主的な国際経済秩序の確立をめざします。

 ――紛争の平和的解決、災害、難民、飢餓などの人道問題にたいして、非軍事的な手段による国際的な支援活動を積極的におこないます。

 ――社会制度の異なる諸国の平和共存、異なる価値観をもった文明間の対話と共存の関係の確立のために力をつくします。

 ――経済面でも、アメリカによる不当な対日要求に屈せず、金融・為替・貿易を含むあらゆる面で自主性を貫いた対等・平等の日米関係を確立します。

(8)日米安保条約をなくして、独立・平和の日本を築き、アメリカと対等・平等の新しい関係をつくります

 自公政権が、憲法9条も平和を願う国民世論も踏みにじって、従属政治を続けてきた大もとに、日米安保条約=日米軍事同盟があります。日米安保条約は、いま、世界とアジアの軍事緊張を高める危険な震源地の一つになり、沖縄をはじめ日本中で、「基地あるがゆえ」の苦しみを国民に押しつけています。アメリカが繰り返し日本に軍拡を要求する圧力をかけているのも日米軍事同盟強化のためです。

 日本共産党は、日本でただひとつ、日米軍事同盟からぬけだして日本を外国の軍隊のいないほんとうの独立国家にすること、世界とアジアの平和に貢献することを主張している政党です。軍事同盟に縛られ、巨大な軍事基地をおかせ、米国の無法な戦争に動員される体制を「永久不変」だと考える勢力には、およそ国の独立と平和を語る資格はありません。

 日米安保条約をなくすのにむずかしい手続きはいりません。日本の国会で、軍事同盟に反対する勢力が多数を占め、日米安保条約廃棄の決定をすることによって解決できる問題です。国会の決定にしたがって、日本の政府がアメリカに条約廃棄の通告をすれば、1年後には条約はなくなります。この手続には、相手国の同意はいりません。

 条約を廃棄したあとは、アメリカと「友好条約」を結び、対等・平等の新しい日米新時代に道をひらきます。

【3】民主主義がつらぬかれ、人権が大切にされる社会をつくります

1、世界でも異常な女性への差別をなくし、「両性の平等」を社会に徹底します

 国連女性差別撤廃条約がつくられて30年。日本ではいまなお女性差別がつづいています。女性雇用労働者の半数以上が非正規雇用であり、賃金は正社員で男性の68%、非正規をふくめると53%です。妊娠・出産、育児休業取得を理由とする解雇など違法な差別も横行しています。働きたくても保育所に入れない深刻な事態も広がっています。女性の長時間労働も広がり、健康破壊・母性破壊がすすんでいます。1人目の子の妊娠・出産で7割が退職し、30歳代の労働力率は先進資本主義国24カ国中23位と、女性が最も働きにくい国となっています。女性の地位の低さは老後の低年金にも影響を与えています。

 ヨーロッパでは、母性の社会的役割を重視し、子育ては男女と社会全体の共同責任だという女性差別撤廃条約の原則に立ったルールの確立と社会的な合意がすすんでいます。パートと正規社員の均等待遇の改善、家族政策の充実、育児休業制度の改善、保育所整備などがすすめられています。その結果、家族支援の公的支出は日本の3〜4倍です。財界・大企業いいなりで、労働法制の改悪、社会保障の切り捨てをすすめる日本の「ルールなき資本主義」が、世界でも異常な女性差別の原因になっています。戦前の日本の社会を「理想」とし、民法改正などに反対する勢力が政界で大手を振っていることも異常です。

 女性への差別は人間の平等と尊重の原則に反し、人類の発展に貢献すべき女性の能力の発揮を困難にし、その国の発展をもそこなうものです。日本共産党は、女性への差別をなくし、国際的な基準にたったヨーロッパ並みの「ルールある経済社会」をつくるために力をつくします。女性差別撤廃条約の選択議定書の批准をすすめます。

(1)企業の女性差別や不利益扱いを許さず、差別是正のための法改正をすすめます

 パート労働法や派遣労働法などに均等待遇原則を明記し、パートや派遣、臨時など非正規雇用労働者の労働条件を改善します。男女賃金格差是正をはかります。間接差別の禁止規定を実効性あるものに改善します。

 妊娠・出産を社会的に保護し支えてこそ、女性が平等に働くことのできる条件がつくられます。「産休切り」「育休切り」などの違法行為の根絶はもとより、産前産後休業中は「業績ゼロ」として評価を下げても企業が不利益な扱いをしたことにはならないなどの不当な差別を禁止します。

 男女雇用機会均等法を改正し、差別是正のための強力な救済機関の設置、違反した企業に対する指導の徹底、罰則の強化などをすすめます。

(2)女性も男性も仕事と家庭の責任を果たせるよう社会的援助を強めます

 労働時間の短縮をはかり、男女がともに仕事と子育てを両立できる条件整備をすすめます。育児介護休業法を改正し、所得保障の6割への改善、パートや派遣労働者がとりやすいように適用条件の見直しをすすめます。

 保育に対する国や自治体の責任を後退させる保育制度の改悪を許さず、誰もが安心して子どもを預け、働く権利が保障されるように、認可保育所の新増設、保育条件の改善など、国と自治体の責任で保育の拡充をはかります。

 母子家庭の命綱である生活保護母子加算を復活します。児童扶養手当の削減を許さず、父子家庭にも支給できるようにします。

(3)男女平等・人権尊重・民主主義をすべての分野につらぬきます

 民法を改正し、選択的夫婦別姓制度の実現、再婚禁止期間・婚姻最低年齢の見直し、婚外子差別の禁止をすすめます。家庭、社会のすみずみまで男女平等、個人の尊厳の徹底をはかり、家庭内暴力、セクシュアルハラスメントなどを生まない社会をつくります。

2、すべての子どもの成長発達を支える教育に転換します

 歴代の自民党政権は、子どもたちを競争でふるいにかけ、ゆきすぎた管理で人間性を傷つけるなど、教育をゆがめてきました。そのうえ小泉内閣以来の「構造改革」は教育条件の悪化や「子どもの貧困」をもたらし、日本の教育は深刻な矛盾に直面しています。とりわけ、改悪された教育基本法にそった教育への国家介入の強化、競争教育のいっそうの押しつけが急ピッチで具体化されようとしていることは重大です。

 こうしたゆがみをとりのぞき、憲法の平和・人権・民主主義の原理に立脚し、子どもの権利条約を生かし、すべての子どもの成長発達を支える教育を築きます。

(1)競争とふるいわけの教育を根本から是正します

 国連子どもの権利委員会からも改善の勧告を受けている「極度に競争的な教育制度」を是正します。教育に「競争原理」をもちこんで子どもたちを競争に追い立て、ふるいわけする「教育改革」を抜本的に見直します。年数十億円の無駄遣いだと指摘されている「全国いっせい学力テスト」は中止し、抽出調査にあらためます。

(2)子どもの豊かな成長を保障します

 自然や社会の仕組みがわかる知育を重視し、体育・情操教育などバランスのとれた教育をめざします。学習が遅れがちな子どもへの支援を手厚くします。学習指導要領の強制をやめ、内容の再検討を国民参加ですすめます。上からの徳目の押しつけをやめ、基本的人権を大事にする市民道徳の教育をすすめます。

 「不登校ゼロ作戦」など子どもや親を追いつめる施策をやめ、子どもの「最善の利益」の立場から、多様な選択への公的支援、親の会やフリースクールへの支援をすすめます。「いじめ」の温床である過度の「競争とふるいわけ」をあらためます。子どもの生命最優先へ「安全配慮義務」を徹底します。

(3)豊かな教育条件を実現します

 OECD加盟国で最下位の教育予算を、早期に平均にまで引き上げます。教員を増員・正規化し、「教員の多忙化」を解消し、「30人以下学級」をすすめます。学校耐震化の促進など教育施設を整備します。不足している特別支援教育・障害児教育を充実させます。予算削減のための学校統廃合の強制を中止します。「私学の自由」を尊重し、私学助成を増額し、公私間格差を是正します。大学を疲弊させている「基盤的経費の連続削減」を中止し、予算を増額します。図書館、公民館などの拡充、専門職員の配置をすすめます。

(4)「子どもの貧困」を克服し、国民の教育費負担を軽減します

 深刻化する「子どもの貧困」を解決するため、就学援助の拡充、ひとり親家庭への支援強化、児童福祉施設の生活と進学保障の充実、児童手当の拡充、児童相談所の体制強化を緊急にすすめます。「世界一の高学費」をただし、経済的な理由で進学をあきらめる若者をなくします。乳幼児から高等教育までの教育費負担を軽減し、無償化をめざします。

(5)憲法が保障する教育の自由と自主性をまもりぬきます

 国や教育委員会による学校・教員の支配をやめ、教職員・子ども・保護者等の参加と共同による学校の自主的運営に切り替えます。教員免許更新制や恣意(しい)的な教員評価制度、教員間に命令服従をもちこむ主幹教諭制度など、教員の教育者としてのあり方を傷つける諸制度を見直し、中止します。あらゆる場で子どもの意見表明権を保障します。思想・良心の自由を侵す“愛国心”の押しつけ、「君が代・日の丸」の強制、侵略戦争・植民地支配を美化・肯定する教育に反対します。

3、「国民が主人公」の立場で国の政治・行政の仕組みを改革します

(1)政治腐敗の温床=企業・団体献金を即時・無条件に禁止します

 途切れることなくつぎつぎに明るみにでてくる「政治とカネ」の黒い疑惑に、国民は怒り、あきれています。「政治とカネ」にまつわる疑惑が表ざたになるたびに「政治改革」などとして政治資金規正法「改正」が繰り返されてきました。しかし、おこなわれたのは、企業・団体献金そのものにはなんら手をつけずに、受け取り手を多少制限したり、政治資金集めのパーティー券購入に「上限」を設けるなど、きわめて部分的なことばかりでした。このため、法「改正」後も法の“抜け穴”を悪用した不正事件が後を絶ちません。企業・団体献金はあれこれの条件をつけずにきっぱり禁止します。

 国会議員のいわゆる「世襲」が問題になっています。自民党議員の約4割、民主党議員の約2割が「世襲」議員だとされています。政治資金や後援団体などをあたかも親から子への“財産相続”のように扱うやり方は、民主主義と到底両立するものではありません。国会議員の世襲はなくすべきです。

(2)国民の税金を政党が分け取りする政党助成金制度を廃止します

 政党助成金制度が導入されて15年がたち、この間に各党が受け取った金額は、自民党2278億円、民主党1190億円、公明党352億円、社民党315億円にもなります。この制度は、“企業・団体献金をなくす代わりに”などという口実で設けられたものですが、この約束は反故(ほご)にされつづけ、いまや“企業・団体献金も、政党助成金も”のありさまです。

 民主党の収入の8割、自民党の収入の6割が政党助成金でまかなわれています。自民党も民主党も「官から民へ」などといいますが、自分たちこそ税金を食いものにする“国営政党”“官営政党”です。日本共産党は、国民の税金から政党が活動資金を分け取りすることは、その党を支持していない国民にも有無をいわせず“献金”を強制するものであり、「思想・信条の自由」や「政党支持の自由」に反する憲法違反の制度であると厳しく指摘し、受け取りを拒否してきました。政党助成金制度はきっぱり廃止します。

(3)民意を切り捨てる比例代表定数削減に反対し、選挙制度の民主的改革をおこないます

 自民・民主両党が、「国会議員定数削減」を競い合っています。民主党は「衆議院の比例定数を80削減する」、自民党は「少なくとも1割、50人以上削減」という具合です。

 比例代表制は、各党の得票率に応じて議席数を配分することで、有権者の選択を議席に正確に反映する仕組みです。比例代表制の定数削減の最大の狙いは、少数政党を国会と国政の舞台から締め出すこと、これらの政党が代表している国民の声を国会と国政の場から切り捨てることです。

 日本共産党は比例定数削減に強く反対し、衆議院選挙制度を全国11ブロックの比例代表制に改革します。高すぎる供託金制度の抜本的見直しをはかります。憲法がうたう「国権の最高機関」「国民の代表機関」にふさわしい国会を実現するために全力をあげます。

4、政官財のゆ着を断ち切り、国民に奉仕する公正で清潔な行政を実現します

 憲法は、公務員や官庁・役所は「全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない」(第15条)と定めています。ところが、長年の自民党政治のもとで、行政は、主権者国民全体への奉仕をそっちのけにして、「財界・大企業いいなり」「日米軍事同盟最優先」という自民党政治の“目的”に奉仕するものにねじ曲げられています。

 財界・大企業に偏重した審議会の構成を、行政に国民の意見を公正に反映できるものにあらためる……中央官庁自体が、自民党政権のもとで財界・大企業中心主義の発信地となっています。その典型的事例の一つが、各省庁に無数に設置されている審議会や調査会・研究会などの行政機関です。これらの審議会の設置は、国家行政組織法などが根拠とされ、それぞれの官庁の重要な方針や計画を策定したり、政策にたいする答申などをおこなったりする機関と位置づけられています。こうした審議会にどういうメンバーが参加するかは、各省庁の政策決定にきわめて大きな影響を持っています。特徴的なのは、ほとんど必ずといっていいほど、財界・大企業の役職者が名前を連ねていることです。

 大型公共事業と国土開発計画の中心を担ってきた国土交通省には、国土審議会や社会資本整備審議会、交通政策審議会など13の審議会や委員会が設置されています。これらの審議会には、財界・大企業の役職者が何人も加わっています。たとえば、国土審議会の会長は、東芝の相談役が就任し、中部経済連合会や関西経済連合会の各副会長が名前を連ねています。各省庁の審議会を中立・公正なものにするために、国民の声を正しく反映させるシステムにつくりなおさなければなりません。会長や副会長には財界・企業など特定団体の代表を就任させないことや、メンバーの選出に当たっては各党が推薦する人を就任させるなどの改革をすすめます。

 天下り禁止・企業献金禁止など、政官財のゆ着を断ち切る法的措置を講じます……中央省庁の高級官僚が、政治家、財界とゆ着して、相互に特権的な利益を享受しあう関係になっています。この「政官財」ゆ着は、財界・業界が、一部の特権官僚に“特別席”“指定席”を保障する(天下り)、その見返りに官僚が財界・業界の利益につながる政策をたてる、それを自民党などの政治家が国会で成立させ、その見返りとして財界・業界が多額の政治献金をするという、いわゆる「トライアングル」と呼ばれる根深い構造に支えられています。一昨年明るみにでた、国が発注元になったダム工事をめぐる「官製談合」問題は、事業それ自体が巨大な税金の無駄遣いであったうえに、国土交通省が音頭を取って談合を組織して巨大ゼネコンに受注させ、それらのゼネコンが高級官僚には「天下り先」を、政治家には企業献金を提供するという「構造的」なものでした。

 この「政官財」のゆ着を断ち切り、行政を、憲法が明記する通り主権者国民全体に奉仕するものに改革するために、企業・団体献金を即時・無条件に禁止するとともに、高級官僚の営利企業・業界団体、政府関係法人への天下りを禁止する法律を制定します。

 行政情報を主権者国民に明らかにするシステムを確立する……国家的な問題について、官僚だけによる恣意的な考えによる運営や遂行を許さないことも大切な課題です。

 たとえば、従来、道路建設や大型開発の優先順位(いわゆる「個所づけ」)について、政治家による「天の声」も問題とされてきましたが、エリート官僚の独断による決定も指摘されてきました。これらの問題については、徹底的な情報公開を義務づけるべきです。

 こうした問題とともに、最近大きな議論を呼んでいるのは、いわゆる「非核三原則」にかかわる密約問題です。すでにこうした核密約が存在していることは、この10年来の日本共産党の国会での追及でも明らかになってきました。この間、歴代事務次官が、この密約の存在を裏づける証言をしています。問題は、その際、密約の存在について、事務次官には実物も含めて代々継承しておきながら、歴代の外務大臣のなかには伝えられなかった人もいるということです。「官僚主導」というなら、これほど最悪の「官僚主導」はありません。日米間の密約は核問題だけでなく、さまざまな分野、範囲に及んでいると指摘されています。日本共産党は、現在あるあらゆる「密約」について、原則として国民の前に明らかにすることを要求します。

 公務員制度を民主的なものにあらためる……公務員が真に「全体の奉仕者」として業務に従事できる体制を確立することが重要になっています。08年の国会で成立した「国家公務員制度改革基本法」は、公務員の採用時からエリート官僚(キャリア)と一般公務員を差別する「総合職」制度を温存し、特権的な天下りには手をつけないばかりか、大企業との「人事交流」を大々的にすすめられるようにするなど、憲法のさししめす民主的な「公務員像」とはおよそ無縁なものです。このような「公務員制度改革」は、抜本的に見直します。

 公務員の削減数を「競い合う」ような議論もありますが、無駄や浪費にメスを入れるのは当然のこととして、福祉、医療、教育などに携わる人を減らしたり、不安定で劣悪な労働条件の非正規職員に置き換えたら、国民の「首を絞める」ことになってしまいます。

 憲法が保障しているにもかかわらず公務員から不当に剥奪(はくだつ)されているスト権などの労働基本権の全面回復をはかるとともに、「官製ワーキング・プア」といわれるような非常勤職員の劣悪な労働条件の改善も急務となっています。

5、「地方分権」というなら切り捨てをやめ、財源を保障して地方自治の発展を

 「地方分権」といいながら、この間やられてきたことは、「三位一体改革」による地方交付税など地方財源の大幅削減と、市町村合併の押しつけでした。「だまされた」という声が、地方からわきあがっているのは当然です。

 いま、「分権」というなら、こうした地方切り捨てによって壊された地域経済と地方自治を回復させるとりくみを、財源を保障して全力で応援することです。また、国から地方への国保証とりあげの強制など、悪政押しつけの仕組みをやめること、そして、子どもの医療費助成を自治体がおこなうと交付金にペナルティーを科す、介護保険料減免に一般財源を使うなという「指導」など、自治体の独自施策を抑制する仕組みをやめることです。

(1)福祉、教育などへの国の責任放棄を許さず、地方財源を保障します

 自公政権でのこんどの「分権」の検討は、福祉や教育などの水準を不十分ながら保障するため設けてきた国の基準を「分権」の名で取り払い、国の責任を放棄して、負担を削減することがそのねらいです。これでは自治体が、独自の施策を発展させるどころか、住民施策の最低水準を確保することも難しくなってしまいます。

 民主党も「補助金全廃・一括交付金化」といって、「一括交付金」に切り替えるさいに、国から地方への支出を削減するとしています。

 地方の財源確保を保障することこそ地方自治発展の土台です。日本共産党は、福祉や教育などの国庫負担金・補助金の廃止・縮減に反対し、その改善・充実を求めます。地方財政の重要な柱である地方交付税の復元・増額で本来の財源保障・調整機能を回復・強化し、住民のくらしをまもるために必要な地方の財源総額の確保をはかります。

 国直轄事業負担金を、“必要な事業は、国の責任と負担でおこなう”という方向で抜本的に見直します。国直轄事業に多く含まれている高速道路、港湾、ダムなど、不要不急の大型公共事業は削減・中止します。国が維持管理費や国職員手当などの負担を、地方に押しつけることは直ちにやめます。

 地方の財源確保のために「地方消費税の充実」を求めることは、消費税の大幅増税に直結するものであり、反対します。

(2)道州制導入とさらなる市町村再編に反対します

 自民党は、いま約1800となった市町村をさらに当面700から1000程度にし、いまの都道府県をなくして、全国を10程度の道州に再編するとしています。民主党も、「道州の導入も検討する」としています。

 道州制は、単に地方制度の大改編にとどまらず、国の仕事を外交や貿易、軍事、司法などに限定する一方、憲法が明記するくらしや雇用、福祉、教育など、国民の基本的な権利をまもる国の責任を投げ捨て、地方に押しつけるものです。もともと財界が提唱して、自民、公明、民主が受け入れてきたもので、国民や地方にとっての必要性からでてきたものではありません。自治体行政は住民から遠くなり、財界は、広域行政をになう道州にインフラ整備の大型開発へ財源を集中させることなどを求めています。

 日本共産党は、道州制の導入と小規模自治体切り捨てなどさらなる上からの市町村再編の押しつけに反対します。住民と自治体による地域の振興のとりくみを応援し、地方自治をまもり発展させます。



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