2009年7月27日(月)「しんぶん赤旗」
列島だより
地域でいきいき 憩いの場
地域住民の交流の機会が少なくなり、「住み慣れた地で、気軽に集える場所をという要望にこたえたい。自分自身が地域の人と交流したい」と活動している人たちがいます。高知市と愛知県岩倉市のとりくみを紹介します。
みんな手作り アテラーノ
高知
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「ここに来れば誰かに会える」「ここには話し相手がいる」。そんな人と人との集いの場になっているのが「アテラーノ旭」です。高知市のJR旭駅前、古い町並みが残る路地に建つ、間口2間半(4・5メートル)の「まちのお茶の間」です。
■食材に気配り
「アテラーノ」と書くと洋風に見えますが、土佐弁で「わたしたち」という意味。中央に11人が座れるテーブル。手芸品や野菜の販売コーナーのほか、作品を展示するミニギャラリーもあります。食事をしたり、コーヒーやお茶を飲んだりしながらおしゃべりを楽しみます。毎日50人ほどが訪れます。元家具店の空き店舗を借りて、売り上げで経費をまかなっています。
食事は、月曜から土曜日まで交代で作ります。この日は女性(33)が担当。さんまのやわらか煮、ゴーヤとツナのサラダ、冷やしそうめんなど5品目。無農薬品を使うなど食材にも気を配っています。「出すときはいつもドキドキ。でも、おいしいと言ってもらえるとうれしくなります」
木曜日に必ず来るという女性(74)は、「そうめんがおいしい」とニッコリ。「ここで、ご飯を食べて、コーヒーを飲みながらケーキを食べて、おしゃべりをするのが何よりの楽しみ」と話します。
定食450円、コーヒー200円と材料費程度に抑えているため、調理の人はほとんどボランティアです。
週2回担当している女性(65)は「私は軽いうつ病でした」と話します。「誘われて顔を出すうちに、得意な料理でみんなに喜んでもらえることが分かってうれしかった。ここは、誰でもニコニコして受け入れてくれる場所です」
会結成のきっかけは、地区にただ一つあった公衆浴場の存続運動。この経験を通して高齢化がすすむ地域で「みんなで支え合うネットワーク」がほしいと2007年5月に女性(64)=会長=らを中心に結成しました。
■“面”へ広がり
活動を始めて2年。メンバーが中心になって無農薬の農園づくりや地域を流れる旭川の清掃、認知症の学習会などを開き、大学生も参加しています。「アテラーノ旭」から旭地区を元気にしようという“面”への広がりを見せています。
山中会長はいま、確かな手ごたえを感じています。
「市役所や病院を退職した人が『私はこういうことができる』とボランティアに参加してくれています。それぞれの特技を生かし、生活や生きがい、地域の環境問題などを考える場にしたい」(高知県・窪田和教)
食事に健診 ひだまりで
愛知・岩倉
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2005年5月に民家を借り入れ、改装してオープンした愛知県岩倉市の「いきいきサロン・ひだまり」(運営・NPO法人ねこの手ネット)は週3回(月、火、金)、つどいの場として地域の人たちに開放し、囲碁やパッチワーク、お抹茶を楽しむ会などが行われています。
先日は、自転車や車で18人がかけつけ、「きょうはよかった。抹茶までいただけるとは思わなかった」との声があがり、尾張健康友の会の人たちの健康チェックでは、「全員異常なし」でした。
■囲碁を楽しみ
「食事ができ、一日中充実して楽しめる」というのは、年金者組合で囲碁を楽しむ「碁楽会」の男性(77)。「一人・二人暮らしの人が多くなるなかで、地域で交流することを求める人も多い。最初は2〜3人で始めたが、気軽につどい、食事しながら交流できると参加者も広がっている」と話します。
抹茶をたてたのは女性(66)。「みんなが喜んでくれてうれしい。少しはうまくたてられるようになったかな。勉強させてもらっています」
評判となっているこの日の食事は、イワシのしそ巻き、高野豆腐、ナスの煮物、トマトをくりぬいて具をもりこんだサラダなどで、500円。「ひだまり」の利用料は1グループ500円(個人は200円)です。
「料理が好き」という女性(67)は「家は人数が多く、いつもつくっているので、ここでもやりがいがある。メニューは4品でバランスよく、トマトの赤、ピーマンの緑と彩りに気をつかい、買い物も値段を考える」と明るく笑います。
■活動通じ連帯
食事をつくった仲間たちは、「みんなそれぞれ楽しく料理をつくることで、いい仲間ができる」と口をそろえます。こうした活動を通じて連帯感が生まれ、一緒に旅行することもあるといいます。猛暑となったこの日、「近いうちに暑気払いをやろう」となりました。
「ひだまり」は、8畳の和室と洋間、広いダイニング、キッチン、庭や駐車場もあります。
運営の中心になり、「元気で生きがいを見つけたいという声にこたえたい」という尾張健康友の会副会長の女性(73)。日本共産党の町議・市議を9期務めました。野宿の若者や路上生活者を宿泊させて助け、生活保護を受けて自立の道を歩む人もあります。
目を輝かせて木村さんはいいます。「みんなに愛される場所にすることを誇りに思い、やりがいを感じます」(中野義人)