2009年7月24日(金)「しんぶん赤旗」
「日本の将来像」について積極的な議論を
BSフジ番組 志位委員長が発言
日本共産党の志位和夫委員長が生出演した21日夜放送の「BSフジ LIVE PRIME NEWS」。国民が待ちに待った衆院解散直後の熱気の中、司会のフジテレビ報道局政治部の反町理氏と元同テレビアナウンサーの八木亜希子氏、解説役の若松誠・フジテレビ解説委員長、政治アナリストの伊藤惇夫氏と語り合いました。テーマは、日本共産党が訴える「新しい日本の将来像」、「建設的野党」の役割、さらには党名に込められた思いまで、あっという間の1時間となりました。
「目指すべき進路の積極的提言を」
番組では冒頭、日本共産党についてこんなナレーションが流れました。
――「民主党が政権をとった場合、一致する政策に関しては協力する『建設的野党』を宣言。これまでの路線からの“転換”を表明した。さらに、アメリカに対する姿勢も変わろうとしている。これまでアメリカに対して批判的だった共産党が、オバマ大統領の『核兵器のない世界』を追求するとの演説に対して、4月末に志位委員長が核兵器廃絶に向けたイニシアチブを求め、オバマ大統領に書簡を送付。その後、アメリカ政府から返書が届いた。また、支持層にも変化が起こっている。景気が悪化した昨年、貧しい労働者たちの姿を描いた小林多喜二の『蟹工船』が大ヒット。こうしたブームもあり、先日、おこなわれた東京都議選では得票数を(前回都議選から)2万7千票あまり増やした。しかし、結果は5議席減の8議席。変化し始めた共産党は衆院選をどのようにたたかうのか…」
そして若松氏は――。
「私はこの間、何度か志位さんのお話を聞く機会があったのですが、さかんに、今後の日本の進路をどうするのかということを提起されている」「政権交代は一つの手段であって、その先に何があるのかということになりますし、今後、各党が自分たちが選挙後にどういう日本の進路を目指すのか、国家像というのを積極的に提言していただいて、そのほうが有権者も選択しやすいわけで、ぜひ志位委員長に積極的にこの問題を提起していただきたいと思うんですね」
新しい歴史の扉を開く選挙が始まった
解散の衆院本会議後、新宿、横浜と2カ所の街頭演説に臨んで駆けつけた志位氏は、解散の思いについて「新しい歴史の扉を開く選挙がはじまったなという感じです」とのべ、こう表明しました。
志位 今度の総選挙で私たちがまず何よりも訴えたいのは、“自公政権はもう退場”というはっきりとした“審判”をくだす選挙だということです。そして、同時にもう一つは、自公政権が退場した後の政治をどうするのか、ここにこそ、いま議論すべき大問題があると思います。自公政権を倒した後の日本をどうするのか、21世紀の日本の進路をどうするのか、このことを骨太に議論するような総選挙にしたいと思っています。
志位氏は、自公政権の“罪”について、「暮らしの安心と希望を奪ってしまった。国民の多くの方々が、雇用の不安、社会保障の不安、あらゆる面で不安を募らせ、さらに明日の希望が見えない」と指摘。文部科学省の全国調査でも、これから暮らしが「豊かになる」と答えた人が過去最低の11%、一方で「貧しくなる」が57%で過去最悪となっていることについて、「国民の過半数が明日が悪くなると答えているのは、これは恐るべき数字です。そこまで希望を奪ってしまっている」とのべ、こう指摘しました。
志位 今日、麻生さんの(解散会見での)発言を聞いていたら、「安心社会実現選挙」と(いっていた)。でも「安心社会実現」のためには、自公が身を引くことがまず一番にやるべきことではないですか。この自公政権の退場の決定的な“審判”をくだすというのが一つ(の総選挙の意義)です。ただ、もう一つ、“選択”があります。退場させた後に、日本の進路をどうするかということが大事で、国民の関心はもう、だんだんとそちらに向かいつつあると思います。
国民の関心は「日本の将来像」に向かいつつある
「私たちは、自公政権を退場させた後の日本の進路として、『ルールある経済社会をつくる』『憲法9条を生かした自主・自立の平和外交』ということを大きな旗印に掲げています」
フリップも掲げながら、日本共産党の「二つの旗印」を力説する志位氏。日本は、同じ資本主義国でも、雇用でも、社会保障でも、税制でも、ヨーロッパに比べてあまりに暮らしを守るルールが弱い、そこをただして「ルールある経済社会」をつくる。アメリカ大統領が「核兵器のない世界」を目指すというように世界が変化しているにもかかわらず、いまだに何でも軍事で身構える日本から、憲法9条を生かした「自主・自立の平和外交」にきりかえ、世界に貢献する日本にする――。
志位氏が強調したのは、日本共産党が「旗印」を掲げるだけではなく、その「旗印」にそくして実際に行動してきたことです。
志位 たとえば一つ目の問題でいえば、「派遣切り」がひどくやられたときに、初めて日本経団連と会談をやったり、トヨタと直談判をやって、雇用の維持を求めました。二つ目の問題では、アメリカと――これまでは話し合いのルートがなかったのですけれども、(核兵器廃絶を目指す書簡送付という)働きかけをやって、初めて先方からも返事が来るという形になりました。「旗印」を掲げるだけでなく行動する党だと。こういう方向にぜひ、日本の政治は向かうべきじゃないかということを大いに議論していきたいと思います。
ここで伊藤氏は、日本共産党が全小選挙区の半分程度に候補者擁立を絞っていることも指摘し、「自民党対民主党という正面対決のなかに、他の政党が埋没しつつあるのかなという状況の中で、共産党は今度の選挙をどう勝ち抜いていかれるつもりなのか」と問いかけました。
志位氏は、候補者を立てない小選挙区でも、演説会を旺盛に開くなど、比例代表での前進のために全力をあげていることも語りながら、こうつづけました。
志位 「自民か民主か」というなかで埋没しないかというお話ですが、私はいまはもう、国民のみなさんは「自民か民主か」であまり迷ってはいないと思うんですよ。もう圧倒的多数は自公政権退場という判断が、流れになっていると私は思います。むしろいま痛感するのは、自公政権に「ノー」の審判をくだしたうえで、その後をどうするかというところに関心が向かいつつあると。ですから、民主党にしても政権交代したらいったい何をやるんですかと。これは当然、問われてきますよね。そこで私たちはさっきいった「二つの旗印」を太く訴えかけていきたい。こういう骨太の旗印を示していく。個々の政策論も大事ですが、同時にどういう方向に日本が進むのかという太い筋をきちんと示していくことが、いま各党に求められているのではないでしょうか。
「建設的野党」に込められた決意
番組の後半、議論はさらに白熱して――。
「こういう言葉が最近、志位委員長からよく出ます。『建設的野党』という言葉なんですが、これは何でも反対ということではなくて、民主党が政権をとった場合にこういう立場をとられるというお話をされますが、これはどういうことですか」。「建設的野党」と書かれたフリップを手に質問する反町氏にたいし、志位氏はこう答えました。
志位 なぜこういうことを言い始めたかといいますと、今度の総選挙の第一の目標は、自公政権の退場の“審判”をくだすことだとさきほどいいましたけれども、その実現のために党として全力をあげてがんばると言った以上、それでは、自公政権に代わってどんな政権を考えるのかということが当然、出てくるわけです。自公政権に代わる新しい政治の中身として「二つの旗印」をいいました。これを実行する日本共産党が参画する政権ができれば一番いいのですが、(この総選挙の後に)すぐにできる条件がないのも事実です。総選挙の結果、民主党中心の政権になる可能性が大きいわけですよね。そうすると、その政権に対してどういう態度を取るかということを、責任を持って明らかにする必要があります。
それでは、民主党のとっているスタンスを見るとどうなるか。私たちと大きく違うのは、たとえば財界・大企業に対する姿勢ですね。私たちは財界・大企業中心の政治を変えるといっていますが、ここは立場が違ってくる。それから日米軍事同盟に対する姿勢です。私たちは軍事同盟からの脱却といっていますが、ここも大きく違ってきますね。
八木 さきほど「旗印」で二つ大きく掲げられたことですね。
志位 ええ。これは一致しないんですね。ただ、個別の政策を見ますと、たとえば後期高齢者医療制度撤廃、障害者自立支援法の応益負担の廃止のように一致点はいろいろあるわけですね。もちろん一致できない、いろいろな問題点もある。憲法9条改定、消費税の問題、衆院の比例削減などですね。そういうなかで私たちとしては、「建設的野党」として、簡単にいえば、「良いことには賛成、悪いことには反対」と、「是々非々」の立場を貫いていこうと。ただ、「是々非々」という言葉は、相手が出してくるものに対して受け身に反応するという感じもありますが、私たちの場合はそうではなくて、私たちの方から攻勢的、能動的にいろいろなアプローチをしていこうと思っていますから、「行動する是々非々」という言葉も使いました。(「建設的野党」と)同じ意味なのですけれども、こういう立場でやっていこうということです。
民主党中心の政権ができれば、そのときに野党がどうなるかと考えたら、共産党とおそらくは自民党、公明党になってくるわけですね。それでは自公が「建設的野党」の役割を果たすかというと、私たちは「是は是、非は非」でやっていくんだけれども、自民党はその対応とは逆に、「是は非、非は是」というふうにやるかもしれないわけですね。
日本共産党という党名に込められたもの
このやりとりを受け、伊藤氏は、「要するに提案型野党ですよね。今度は自公が完全野党で、共産党さんはそこにはくみしないというのであれば、第三極ということになりますね」とのべるとともに、「そういう構図のなかで存在感をどう提示していくのか。提案型野党から場合によっては政権により接近していく過程で、僕はやっぱり党名問題って、絶対に譲れないってことはよくわかるんですけれども、僕からすると何かちょっと不思議な感じがする。そこまでこだわらなくてもいいんじゃないですか」と発言。視聴者の意見でも「共産党が第三極になったほうがずっと日本の政治がよくなるという気がするんですが、そのためにはこの際、共産党の名前を変えたらどうでしょう」などの声が紹介されました。
志位氏は「私は日本共産党という党名に対するアレルギーというか、拒否はだいぶ変わってきたと思っています」とのべつつ、次のように日本共産党の党名に込められた思いを語りました。
志位 おそらく、「もっと伸びてほしい」という立場でそうおっしゃっておられる方も多いと思うんですね。ただやはり、いまの世界の全体の大状況を見ますと、昨年の秋に世界経済危機が起こった。世界資本主義の総本山のアメリカで起こった。まぎれもない過剰生産恐慌が金融危機と結びついた事態が起こっているわけです。そうなってくると、「資本主義の限界」という問題が提起されてきます。そしてこの問題をとことん究明したマルクスに関心が向かう。そういう状況が全世界的に起こっているわけですよね。ですから、広い目で見ると、また長いスパンでいえば、資本主義を乗り越えた、つぎの社会にいかないと、いろんな人類がかかえている問題が解決しないという機運も起こり始めているんじゃないですか。それを乗り越えた社会が、私たちのいう社会主義、共産主義なんですよ。
共産主義といいますと、英語では「コミュニズム」でしょう。コミュニズムの語源はというと、ラテン語の「コムニス」なんですよ。コムニスとはどういう意味かというと「共同」という意味なんです。人間と人間が角を突き合わせて、足を引っ張り合うのではなくて、支えあって幸福な社会をつくろうというのが語源なのです。共同社会ですよね。たとえば「コミュニティーセンター」というのがあるでしょう。あれと同じ語源なんです。だからコミュニティーセンターを直訳しますと、「共産センター」になる。
共産主義の一番の根本にある考え方は、自由で平等な共同社会ということです。だから、私たちが目指している先の未来社会では、資本主義のもとでつくった民主主義や自由、いろいろな諸権利を、すべて発展的に継承するという立場を明らかにしています。崩壊したソ連型の社会は社会主義でも共産主義でもないと、きっぱり拒否すると。私はこの名前にとても愛着を持っています。
共産党を伸ばし、安心と希望の新しい日本を
番組は最後に、「国民への提言」を求め、志位氏はフリップに「安心と希望の日本を」としたためました。その心は――。
志位 やはり、自公政権によってあまりにも国民の安心と希望が奪われてしまっている。さきほど、文部科学省のデータも示しましたけれども、本当の意味でみんなが安心して暮らせる、希望を持って暮らせる社会にしたいと。そのための方策としては、大企業の身勝手を抑えて、国民の暮らしや権利を守るルールをつくっていく必要があります。たとえば雇用の問題でしたら、労働者派遣法を抜本改正して、正社員が当たり前の社会にする。それから均等待遇のルールをきちんとつくって、同じ労働には賃金も休暇も同じという、ヨーロッパで当たり前になっているルールをきちんとつくる。残業時間を法律で規制して、長時間労働を抜本的に短縮して、過労死を日本からなくしたい。
それから社会保障の問題で言いたいのは、いま医療がたいへんな危機にあります。公立病院をしっかり守っていくことが大事ですが、あわせて、お金のない人がお医者さんにかかれないという問題がある。窓口負担が3割でしょう。こんな国はないんですよ。ヨーロッパでは多くが無料です。ですから、窓口負担の軽減に踏み出していく。まずは75歳以上のお年寄りと、小学校就学前の子どもさんの医療費は、国の制度として無料にすることから始めたい。雇用と社会保障という二つの柱で、安心できる、希望を持ってみんなが暮らせる、そういう社会にしたいと訴えていきたい。
「そういう目標を実現するためにも、前提は政権交代でしょうし、その政権に対して影響力を行使していくことが大事になってくるわけですよね。そのためにまず、選挙で存在感を示さないといけない」と応じた伊藤氏。志位氏は、「私たちが前進、躍進して、そして選挙後につくられる政権が民主党中心の政権の場合にも、『建設的野党』として実際の政治に影響力をもつようにするためには、議席を伸ばさなければいけないということでがんばりたいと思います」と決意を述べ、議論を締めくくりました。