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2009年7月24日(金)「しんぶん赤旗」

主張

米国のTAC加入

平和共同体づくりを加速する


 米政府は22日、武力不行使を原則にする東南アジア諸国連合(ASEAN)の友好協力条約(TAC)に署名しました。ASEAN域外では16番目の加入です。

 すでに中国やロシア、日本なども加入しており、今年5月に加入を表明した欧州連合も含めるとTAC加入は52カ国、世界人口の約68%を占めることになります。ブッシュ前政権下で加入をしぶってきた米国が加入したことで、TACに盛り込まれた原則は文字通り世界を覆う一大潮流となり、世界の平和共同体づくりに大きな影響をもたらすことは明らかです。

戦争否定の原則を容認

 ASEAN諸国は、ベトナム戦争という苦い体験から、戦いあった国々を含め東南アジアを平和の地域にするため、1976年にTACをつくりました。ASEANは軍事同盟と違い、外部に「共通の敵」をもちません。友好と協力を促進することで、地域の平和と安全を確保することをめざしています。その手段がTACです。

 ASEAN域外の多くの国がTACに加入することは、地域の平和につながるだけでなく、世界の平和をめざす流れにはずみをつける重要な出来事です。

 TACは、独立・主権・平等・領土保全の相互尊重、外部からの干渉・転覆・強制を受けない権利、相互内政不干渉、紛争の平和的手段による解決、武力による威嚇・武力行使の放棄などを原則にしています。これによって、条約加入国同士が脅威を払しょくし、軍事的対立をなくして信頼を寄せ合うことができます。

 必要なのはASEANがめざす平和のとりくみを周辺諸国が保障することです。中国、ロシア、日本などに続き米国がTACに加盟したことは、ASEANの願いに応える重要な動きです。ASEAN外相会議の共同声明は、「東南アジアでの平和と安全保障促進における米国の新たな関心」とのべて米国の加入を歓迎しています。

 同時に、米国のTAC加入は、イラク戦争の失敗と世界経済危機によってアメリカの一国覇権主義が破綻(はたん)し、ASEAN重視を余儀なくされているという実態もみておく必要があります。

 5月の米議会調査局報告は、「ASEANは米国の最大の貿易パートナーの一つ」「マラッカ海峡など世界のもっとも重要な海上輸送路がある」などといっています。TACに加入し、ASEANと友好・協力を本格化することで難局を乗り越え、アジア関与を強めようとしているのは明白です。

 TACに加入したとはいえ、米国の軍事同盟政策が直ちに変わるわけではありません。TACの対象がTAC加入国とASEAN加盟国との関係にすぎないとして米国がTACの意義を薄めようとするなら、ASEAN諸国民の期待を裏切ることになるでしょう。

共同体づくりの中心に

 世界は逆行や複雑さをはらみながらも、平和と進歩の方向に進んでいます。4月には南北アメリカ大陸の首脳が集まり、「従属ではなく協力」「新たな地域秩序」をうたいあげました。

 米国など主要国がTACに加盟し、地域の平和と安全を保障させるようなやり方を世界に広げることが必要です。平和の流れを加速させる外交が、いまほど重要な時はありません。


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