2009年7月23日(木)「しんぶん赤旗」
米、TACに加入
国務長官署名 「東南アジアと協力」
【プーケット(タイ南部)=井上歩】米国は22日、東南アジア諸国連合(ASEAN)との平和協力の基礎となるASEANの基本条約、東南アジア友好協力条約(TAC)に加入しました。ASEAN地域フォーラム(ARF)出席のため当地を訪問中のクリントン米国務長官が同日、条約に署名しました。
米国の加入は、昨年の北朝鮮に続く26カ国目。すでに中国、ロシア、日本なども加入しており、加入国の合計人口は約40億人(世界人口の約60%)に達します。TACには欧州連合(EU)も加入を決めており、今回のARFに際して地域機構の参加を可能にする条約の第3修正議定書が採択される予定です。
TACは軍事同盟とは異なり、外部に「共通の敵」を想定しません。内政干渉を拒否し、覇権主義的な政策を否定しているのも特徴です。
ASEANはブッシュ前米政権に加入を要請しましたが、米国は内政干渉を否定するTACが米国の外交政策の手を縛るとして加入を拒否。しかし、イラク戦争の失敗と米国発の世界経済危機が引き金となり、米国の一国覇権主義が破綻(はたん)に直面するなかで誕生したオバマ政権は、TACへの加入を決めました。
TAC加入は東アジア首脳会議(EAS)に参加する条件で、ASEANが域外国との本格的な協力を進める前提となっています。
クリントン長官は22日の記者会見でTAC加入について、安全保障や経済危機、気候変動などの「直面する試練への対応で、ASEANのパートナーと全面的に協力する」と表明。「オバマ大統領と私は、この地域が世界の平和と繁栄にきわめて重要だと信じている」と述べました。
ASEANは米国のTAC加入を「地域の平和と安全保障に関与するという強いシグナル」「東南アジアでの平和と安全保障促進における米国の新たな関心」(外相会議共同声明)だと歓迎しました。
東南アジア友好協力条約(TAC) 米国によるベトナム侵略戦争終結の翌年(1976年)、東南アジア諸国連合(ASEAN)原加盟国のタイ、インドネシア、フィリピン、マレーシア、シンガポールが基本条約として締結しました。独立と主権の尊重、紛争の平和的解決、武力行使の放棄などを明記しています。