2009年7月22日(水)「しんぶん赤旗」
働いても生活保護
暮らせる最賃へ引き上げこそ
大阪
中央最低賃金審議会で最低賃金改定が議論されています。引き上げゼロを経営側は叫んでいますが、最賃ギリギリで働き、生活保護を受けざるを得ない実態を大阪に見てみると―。(田代正則)
大阪市営地下鉄の駅清掃を委託された会社で働く男性(53)が6月、生活保護を申請し、賃金との差額分の支給が認められました。
保護費が支給され「1年ぶりにお肉を食べた」と言います。家賃や税金などを引いた生活費は月に4、5万円程度でした。休日は、朝と昼をパン1枚という日もありました。同僚からは「よく、せき込んでいるけど、体は大丈夫?」と心配されていました。
男性は昨年4月、時給800円で現在の仕事を始めました。ところが、落札価格の下落で、清掃会社が11月の入札に失敗し、別会社に替わりました。大阪府の最賃時給748円スレスレの760円になりました。
男性は、週6日、1日7時間働いてきました。5月分は14万4880円です。社会保険料や税金の必要経費などを差し引いた生活保護の収入認定額は、9万1389円でした。この男性の場合の生活保護基準(住宅扶助含む)11万5610円より、2万4221円下回っています。
生活保護申請に同行した建交労府本部建設一般合同支部の吉谷通書記長は、「大阪市の公的な仕事をする労働者に、市が生活保護費を支給するというのは、異常な事態です」と強調。「生活保護の収入認定では、賃金から税金などの控除があります。それを知らず、自分が生活保護以下だと気づいていない労働者も多い」と指摘します。
大阪では、厚労省の調べでも、最賃が生活保護水準を下回る逆転現象が生まれています。最賃の引き上げは急務です。
男性は「生活を考えた賃金にしてほしい。せめて時給1000円ないと、食べていけない」と訴えます。
駅清掃の勤務を明けた労働者から話を聞くと、62歳の女性は、「私は府営住宅に息子と住んでいるから、なんとかなっているけど、時給は低すぎる」と話します。
別の女性(62)は、「事務所に行っても備品がそろってないから、私たちは少ない収入のなかから、自分で洗剤やスポンジを買っているんです」と憤っていました。
「入札のたびに労働条件が下がっていく。多忙になり、洗浄機械を使った清掃をする余裕もなくなり、駅は明らかに汚くなりました」と言うのは、駅清掃の仕事について8年になる男性(60)。「以前は一時金も出ていたが、いまはない」と語ります。
男性は、民間のビル清掃とのダブルワークでギリギリの収入を得ていましたが、不況でビル清掃の仕事もなくなってしまいました。
大阪労連と建交労府本部らによる実態調査では、2008年には、当時の府の最賃ぴったりの時給731円で働かせていた地下鉄の駅もありました。
建交労大阪地下鉄清掃支部では、時給の引き上げを会社に求めていますが、会社は入札価格の低さを理由になかなか引き上げに応じません。事業委託している大阪市は、「最低賃金に違反していなければいい」という態度です。
吉谷書記長は、「最低賃金を引き上げるのと同時に、生活できる賃金と労働条件を保障できる入札制度に改善させることが必要です」と語っています。
|
全国で1000円以上時給を
大阪労連は、生計費の実態調査に基づいて、全国一律最賃1000円以上、大阪府では1400円以上を大阪労働局に申し入れています。青年部は最賃生活体験や駅前宣伝などを多彩に取り組んでいます。
また大阪労連や建交労、公契約法懇談会が、大阪市役所前で入札制度の改善を求め宣伝しています。
■関連キーワード