2009年7月20日(月)「しんぶん赤旗」
主張
陸自の与那国配備
軍事緊張作り出すことになる
政府は、日本最西端の沖縄県与那国島に陸上自衛隊の部隊を配備する方針を固め、防衛省が本格的に検討を始めました。
計画は、那覇市に駐屯する陸自第1混成団(1900人)を2010年に第15旅団(3千〜4千人)に格上げするさい、その一部を与那国島に配備しようというものです。空自は宮古島や久米島にレーダー施設を置いていますが、陸自の部隊は沖縄本島以外の島には配備されていません。与那国が初めてとなります。陸自配備が中国やその一部である台湾など近隣との間に波風を立てることになるのは、避けられません。
防衛大綱の具体化
防衛省は、自衛隊配備を下地島(宮古市)などの島にも広げようとしてきましたが、どこでも住民の反発を買っています。沖縄の人々が自衛隊配備に反対するのは、自衛隊の前身の日本軍が太平洋戦争末期の沖縄戦で県民に行った残虐な仕打ちを忘れておらず、二度と悲惨な体験を繰り返したくないという平和への一念からです。
今回の陸自配備についても与那国町民の意見はふたつに分かれています。反対している町民の意見もきかずに外間守吉町長が自衛隊誘致を政府に求めたことや、浜田靖一防衛相が直接与那国町に出向いて配備への動きを加速していることに怒りが噴出しているのです。配備強行は与那国に混乱をもちこむだけです。
与那国島への陸自配備は、2004年12月に政府が策定した現行「防衛計画の大綱」にもとづくものです。「大綱」は朝鮮半島や台湾海峡の状況や中国の動向をあげながら、軍事的対応の立場を鮮明にしました。この軍事的対応の一つが「島嶼(とうしょ)部に対する侵略」への「実効的な対処能力を備えた体制の保持」であり、今回の与那国島への自衛隊配備はそれを具体化するものです。浜田防衛相は日本共産党の赤嶺政賢衆院議員の追及に、「大綱は島嶼防衛を書いており、その中で先島諸島もあわせて課題としてあった」と明確に答えています(10日)。
中国外務省の秦剛副報道局長は、日本の措置が台湾地区の「平和と安定に役立つものであることを希望する」とのべて、自衛隊配備の動きをけん制しています。与那国島への自衛隊配備が、中国などとの間に軍事的な緊張を招くことにつながるのは必至です。
自衛隊の配備は、与那国町の振興事業そのものをだいなしにすることにもなります。与那国町は「国境の島」として、台湾との観光共同圏、中国語圏を呼び込む観光振興、国際交流を基調とした郷土の町づくりにとりくんでいます。国境からわずか120キロメートル程度しか離れていないところに、自衛隊を配備すれば、国際交流に水を差すのは明らかです。
平和の流れに水差すな
いまアジア地域は、北朝鮮問題をかかえながらも、全体として紛争を政治的・外交的に解決する流れを強めています。紛争の平和的解決を原則とする東南アジア友好協力条約(TAC)は、現在の25カ国にEU(欧州連合)やアメリカも加盟の動きを示しています。中国本土と台湾の対話も進んでいます。日本の軍事対応は論外です。
アジアの平和を考えるなら、政府は陸自の与那国配備を断念すべきです。