2009年7月19日(日)「しんぶん赤旗」
主張
09年版防衛白書
派兵恒久化めざす危険な主張
防衛省は、1970年いらい35回目となる2009年版「防衛白書」を公表しました。
今回の白書は、8月末の総選挙で自公政権が退場する可能性があるもとで、防衛省が駆け込み的に公表したものです。
その特徴は、海外派兵を恒久化する「一般法」を整備することが「有意義」と述べているように、海外派兵強化の狙いをむきだしにしていることです。
日本をアメリカとともに海外で戦争する国に変える、危険な動きを認めるわけにはいきません。
異様な「軍事脅威」論
白書は北朝鮮などの動きのあれこれをとらえて「軍事脅威」論をあおっています。
北朝鮮の核実験は、国連安保理決議(06年)や朝鮮半島の非核化をめざす6カ国協議共同声明(05年)に反する暴挙であって、絶対に許すことのできない軍事的な挑発です。
しかし、だからといって国際社会は軍事対応を強めているわけではありません。
安保理決議1874は国際社会の一致した意思にもとづいて、国連憲章41条の非軍事的措置によって北朝鮮に核開発計画の断念をせまっています。
政府が北朝鮮問題や中国の「軍事脅威」をあおって、軍事力を強化するのは、国際社会の意思に反し、日本を逆に孤立させることにもなりかねません。
白書が北朝鮮問題や国際テロ問題を口実にして、海外派兵を常態化し強化しようとしていることは重大です。
海外に自衛隊ヘリを運ぶ輸送艦やヘリ搭載護衛艦の整備、海外で運用する哨戒機に対する指揮統制システムの海外搬出など派兵態勢を強める一方で、白書は海外派兵恒久法の制定を「防衛省として…検討していく必要がある」と初めて表明しました。
憲法違反の派兵恒久法制定には国民の多くが反対しています。「検討」するなどというのは、国民への許しがたい挑戦です。
しかも「海洋政策に関する取組」という項目を設け、「海賊対処」を名目にした海外派兵まで正当化しています。「海賊対処」派兵特措法は期限のつかない事実上の恒久法であり、海外での武力行使に道を開きます。
「海賊対処」を名目にすればいつでもどこにでも自衛隊を派兵できる態勢づくりを容認できません。
今回の白書は、「宇宙開発利用に関する取組」という項目を設け、宇宙の軍事利用方針も初めて表明しています。海外作戦のさいの軍事通信や戦場の軍事動向を把握するために宇宙を利用しようというのです。弾道ミサイル対処用という早期警戒衛星の保有がアメリカ本土の防衛につながることも否定できません。
軍事同盟絶対やめよ
「日本に脅威が及ばないようにする」ためというのが政府の海外派兵正当化論です。戦前の政府・軍部の「生命線」論と変わらないこの理屈は、近隣諸国の不安をかきたてるだけです。
海外派兵を強化・拡大する狙いは、日米軍事同盟を強化することにあるのは明らかです。派兵恒久化は憲法違反を重ねるものです。
異常な「軍事同盟絶対」の政治から脱却し、自主・自立の平和外交に転換することが重要です。
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